18.5話 Find me(new)
2人が自室から去った後、ふわふわとした感覚が抜けずナツメはベットの上で呆けていた。
全てを知ったうえで手を貸してくれる協力者を得ることが、ナツメ個人の最大の目標だった。そしてそれは今日叶ったと言ってもいいだろう。
自身の秘密を受け入れてくれること、生き残るうえでの能力を発揮してくれること、この2つを両立するという視点で選んだのがエリ・ホシノであった。
イノベイターの情報網を使って全ての新入生の情報を洗い出したときに、目に留まったのがミラージュだった。クルセイダーという特異なドレスの装者であるナツメにはミラージュの異常性を察知することができた。まだ磨いていない原石のようなドレス、スナイパーには見えない若すぎるアクトレス、その不釣合いさから考察を重ねていくうちにミラージュには秘密が隠されていることを予測した。
そして、クサナギ重工という日本でもトップのドレスメーカーから試作機を任されている少女に興味を抱いた。
最初に出会った時は
実戦でもたまに感じるナツメ特有の強迫観念じみた勘は、今のところ問題なく働いているように思う。
シェリーを選んだのはエリとのバランスだった。
もちろん単独でも候補に上がるほどの実力者であることには間違いないが、エリとの相互作用で高めあえる存在が望ましく、この点は結果から見てクリアされていると判断できるだろう。
シェリーはエリを後輩のように導き、背中を預けあえる存在になっている。
思うに、シェリーはエリとの交流によって性格が軟化されていなければ、自分に協力はしてくれなかったように思う。
また、自分が男であるということを受け入れてもらう上で重要なのがこちらから迂闊に打ち明けることができないという点にあった。
もちろん、自白した方が協力を取り付けることができる可能性は高いが、失敗を考えるとイノベイターはその賭けを許さない。
故に、イノベイターから責められない範囲でヒントを散りばめて謎解きをしてもらう必要があった。
全力で隠しているこちら側からは、謎解きの難易度がどれほどのものかは想像もつかないが、シェリーやリリアが気づかなかったことからもエリの推理力が異常なことは疑う余地もない。
こちらの正体を暴いたうえで、それを受け入れてくれる人物というのは本当に稀有な存在だ。
そして、その幸運をたぐり寄せ目的を果たすことができた以上に嬉しいのは、ありのままの自分を受け入れてくれる仲間ができたということだ。
生まれてからは里心がつかぬようにと定期的に里親が替わったナツメからすると、初めて人間らしい関係を築くことができた相手ということになる。
表面的に仲良くしていた相手や言外に通じ合えた相手もいたが、特定の場所に長く留まらない人生を歩んできたナツメにとっては、パシフィック校で数か月チームを組んだ2人は特別な存在だった。
頬が濡れる感触から自分が涙を流していることに気がつく。
ナツメは自分が嬉しい時に涙を流す人間だったことを初めて知り少し驚く。
そして、泣いて喜ぶくらいに自分にとって2人の存在が大切であることを改めて実感した。
しかし、泣いてばかりはいられない。なにせこれから自分は2人を危険に巻き込んでいくのだ。
絶対に守り通す。
今までの人生で1番の決意を込めて拳を握りこんだ。
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