煩悩たる呪いを力に変えて――剣才が光る覚醒と宿命にゆれる傑作
- ★★★ Excellent!!!
第5章までのレビューです。
思春期の男子の特権ともいえる女子の胸へ吸い寄せられてしまう視線。主人公・桐人(きりひと)の目線も例にもれず、目の前の煩悩に人一倍強く作用してしまう。それは呪い『印』が原因とわかり、桐人はこれを克服すべく動体視力や視界制御の猛烈な鍛錬に励み、煩悩に抗い続けます。しかし、女子生徒からは相変わらず冷ややかな目で見られ、従妹でクラスメイトのユリからは変態扱いにされる始末。ミゼラブルな彼に同情したくなりますね。
高校二年生になり、視野鍛錬から俊敏性を獲得していく桐人の身のこなしを剣道名家の令嬢・大宮さくらに見出されます。そして彼はさくらの道場で剣の道を歩むことに。
しかし、そのさくらはナイスバディの美少女。目のやり場に困る桐人の視線はお約束の釘付け。ユリからは怒りの拳が飛んでくる、そんなドタバタな学園生活はコメディパートとしては成功しています。
しかし、この物語はここでは終わりません。その先が重要なのです。
桐人の剣才が開花――その異常ともいえる身体能力の向上に齎される覚醒の光。しかし、それには払うための「代償」が……
「視線の呪い」というコメディ要素が、実は壮大な物語の序章に過ぎない、まさに末広がりのスケール感。桐人の両親の死の真相、宿命の血筋、そして迫り来る新たな脅威の存在。
ユリやさくらも巻き込まれていくシリアスな展開も見逃せません。
桐人たちの成長を交えた青春物語から戻ることのできない戦の裾野へと――拡張していくダークファンタジーへのグラデーションが美しい。
コメディとシリアスの同居が絶妙なバランスで加速していく、そんな心躍る世界観をぜひご堪能ください。