18 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ

住(すみ)の江(え)の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通(かよ)ひ路(ぢ) 人目よくらむ

藤原敏行 (平安時代の廷臣、歌人。三十六歌仙)


若者訳

住の江の波って、昼も夜も岸に寄ってくるじゃん?

なのにさ、あなたは夜の夢道ですら、来てくれないのかよ。

人目気にして夢の中まで避けるとか、どんだけシャイなんだよ!

……あ。ごめんなさい。夢の中だけ強気なんです。


現代語訳

住の江の岸に寄せて打ち寄せる波のように、夜でさえも、私の夢の中へ来る道を、あの人は人目を避けて通ってくれないのだろうか。


「住の江」とは現在の大阪市住吉あたりを指し、その海は波が岸に寄せる名所として知られていた。

「寄る波」と「夜」を掛け、昼間は人目があって会えないとしても、せめて夜だけは夢の中で逢ってほしいという切ない思いを表している。

実際には、その夢の通い路さえも人目をはばかって訪れてくれないのではないか、と嘆いている。

作者の藤原敏行は平安時代初期の歌人で、和歌の技巧に長けていた。

恋人への思慕の情を「夢」という題材で表現するのは古今集以降の和歌に多く見られる手法で、この歌もその一例。

美しい恋の和歌。



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