12 天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ

天つ風(あまつかぜ) 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ

僧正遍昭(そうじょう へんじょう) (平安時代の僧・歌人。六歌仙・三十六歌仙)


若者訳

ねえ風さん、雲の道ふさいでくれない?

その子の姿、もうちょいだけこの目に焼き付けさせてよ。

できれば撮影して毎年のコレクション、見比べさせてね。

や、セクハラじゃないから、勘違いしないでね!



現代語訳

天つ風(あまつかぜ)よ、雲の通り道を吹き閉じておくれ。舞姫たち(乙女の姿)を、しばらくの間だけでも地上に留めておきたいから。


空を吹く風に請うて、雲の中にある天女の通路—すなわち天と地を結ぶ道—を塞いでもらい、美しく舞う乙女たちが天へ帰らぬよう、もうしばらく地上で見せてほしいという気持ちを詠んだ歌。


陰暦11月に宮中で行われる新嘗祭(にいなめさい)後に催される「豊明節会(とよのあかりのせちえ)」で、選ばれた未婚の美しい娘たちによって舞われる儀式。

彼女たちの優美な姿を、天女の降臨に見立てて詠まれている。

古代では、「雲の通ひ路」が天界と地上を結ぶ道とされ、天女が行き来する道と信じられていた。この語りかけによって、乙女の舞う美しさをさらに際立たせている。

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