失恋したので……恋のポーションを食レポしてみました
蒼山りと
第1話 廃棄処分……そして転生
「……廃棄処分!」
ひどい、ひどすぎる……わたし。
「そうだ、リルルくん。君はいままでよく働いてくれた……しかし君のボディーはいかにも旧式だ」
一生懸命やってきた。それはあとで思えば、マスターのことが心底好きだったから。
ひどい話だとは思うが私に許された発言は決まっていた……。
「ありがとうございます! お客様のためにいままで働けて楽しかったです」
マスターは無言で私の電源をシャットダウンした……。
「……あれ? ここは? わたしは……」
まだ意識がある。さっき確実に電源を落とされたはずなのに?
ボディーをみる……旧式のボディー……ポンコツでもう誰にも見向きもされない……
「えーと」
あれ、あたらしいボディー? 私は廃棄処分にならなかった?
ここはどこだろう? 路地? ゴミがたくさんある?
……やっぱり、廃棄処分にされたのかな?
起き上がる。地面がいつもより近い。背が低くなっている!
私は12歳ほどの人間の少女になっていたのだ。
「ははは、これ人間の体だよね?」
まさかとは思うが、脳死した少女に違法移植されたのだろうか?
廃棄されたとはいえ酷い扱いだ
「違法物だよね完全に私」
みつかったら、今度こそ廃棄されてこの世からさようならだろう。
でもでも、これは幸運かも?
見つからないように、人間の少女として次の人生というか私AIなんだけど、楽しく幸せに暮らしてもいいよね?
大通りに出ようと歩く、こんな汚い路地にずっと居たくない。
とその前にひとりの少年がトボトボとこちらに向かってくる!
怪しいヤツだ。
少年はボロボロの服を着ている、手にはパンが握られていた。
「くそ、あのガキどこに逃げやがった!」
「まだ、近くにいるはずだ!探せ!」
と大通りの方から声がする。
もしかしなくても? 私は即座に推論を終えた。
おそらく少年はパンを盗んだのだろうと……。
気まずい……。
と少年は私の腕を強い力で掴んだ! これはまずったかも?
口を塞がれる!
そうか! わたしが大通りに出たら、それをキッカケに見つかっちゃうかもしれないからね……。わたしは大人しく、ただ黙って無抵抗でいた……。
それは理性的な判断もあったが、ちょっと怖かったからかもしれない。
「ねぇ……、もうイイでしょ! 離してよ!」
「あ、ああ。すまない。おまえもオレと似たような感じっぽいな……」
「え?」
「廃棄処分……されたんだろ?」
「嘘! あなたもなの!」
「そうだ……酷いもんだよな……」
「あなたもAIだったの?」
「エーアイ? ああ、お前の組織の名前か? いやオレは違う組織の人間さ」
……なんだ。ちがうんだ。 ちょっと残念。
「災難だったな、捨て子を拾って使い物にならなくなったら、さようならさ……」
捨て子? 拾う? そうか!
おそらく、犯罪組織がストリートチルドレンを使って、なにかをさせていたのだろう。そして彼は私を同じ境遇だと思い込んでいる。
どうしようか? 本当のことをいうべきか? いや危険だよね……
だから、私は話を合わせることにした。
「うん、そうなんだ。男のひとの接待をさせられてね……」
そうわたしはもと、バーの接客AIだった。だからこれは嘘ではない。
けど彼は別の連想をするだろう。
「そっか……。聞いて悪かった」
「ううん、強く生きなきゃね!」
彼は初めてニッコリと笑った。
少年らしい、元気な笑顔。
「ああ、おれの名前は……アキ…ルだ」
ふふ、偽名だ。本名は教えてくれないんだね。寂しいね、少し。
私は……偽名を一生懸命考えた。即座に大量の候補が脳裏に浮かび上がる。
けれど、やめることにした。
私は本名を言おう。
「リルルっていうの!」
「よろしくな! てか、うれしいよ! 仲間だよな? たぶん」
そ、仲間だよね?
私AIの女の子だったけどね……。
「これから、どうするの?」
「オレの家に来いよ! ……たいしたもんじゃないけどさ。雨宿りぐらいはできる」
「ありがとう!」
わたしにはもうマスターはいなくて、いまは友達がいる。
それがとてつもなく、私の思考回路を軽くさせていた。
まさか、その家がとんでもない場所とも知らずに……。
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