第17話 澪の、お昼休み1
お昼休み、澪は自分の席で1人お弁当の蓋を開ける。
復学してから数週間経つが、いまだに仲良く話す友達はおらず、クラスに馴染めていなかった。
一年の頃に仲良くしていた友達に話しかけたりしてみたが、苦笑いの後に軽く挨拶したのみで、その後は避けられてしまっている。
唯一、ノートを貸してくれた五十嵐玲音だけは気にかけて話しかけてくれるが、彼にも自分の友達がいる。
お昼はその友達と外に食べに行って教室にいないので、澪は必然的にお昼ご飯の時はポツンと1人で食べてることになるのだ。
このままではいけない。と澪は思う。
せっかく学校へ通えるようになったのだ。晩ごはんを食べながら、碧に学校での事を話したいと思っている。
(声をかけてくれるのを待ってるだけじゃダメだよね。自分から動かないと何も変わらない)
自分の行動で日常が変わるのだと、澪は碧と出会ってから知った。
澪は気合いを入れて手をギュッと握ると勢いよく席から立ち上がる。
「あの!」
澪が決意を固めて向かった先は復学初日に席を教えてくれたギャルの所であった。
友達ギャル達と楽しく昼食をとっていた金髪のギャルは、いきなり話しかけた澪に目を丸くした。
「な、なに?」
「あの……えっと……お化粧のやり方を教えてくれませんか?」
澪は言葉を詰まらせながら声を絞り出した。
テンパっていたので「お昼を一緒に食べよう」ではなく、普段彼女を見て気になっていたメイクの話になってしまった。
いきなり変な事を言った自覚があるだけに、胸の鼓動が更に早くなるのが分かる。
「へえ、来栖さん興味あるんだ。いいよ、教えてあげる!」
澪の言葉を聞いたギャルはくすりと笑ってそう返事をした。
「ルナが教えたんじゃケバくなっちゃうんじゃない?」「来栖さんって元が可愛いから更に可愛くなると思う!」
周りのギャル達も、澪のお願いに対して色々と話している。
「来栖さんって真面目だと思ってたけどそういうのに興味あるんだね?」
「う、うん……」
照れるように返事をした澪に、ルナと呼ばれたギャルは何かを感じたように「ふーん」と1人で納得する。
「来栖さん、お昼食べ終わった? 一緒に食べない?」
「う、うん!」
ルナからのお誘いに嬉しそうに笑って返事をした澪を見て、周りのギャル達が「眩しいわぁ」などと呟いている。
ルナ達はパックのジュースとコンビニの袋を持って席を立つと、澪の席の方へ向かう。
「ほら、行くよ?」
「うん」
ルナに誘われて、澪は自分の席に戻った。
「来栖さんはお弁当なんだ、美味しそう。お母さん料理上手いね!」
席へ座ると、ルナが澪のお弁当をみてそう言った。
「これは、自分で作ってます。一応……」
「え! これ来栖さんが作ったの? 凄いじゃん!」「すごーい! 私達なんてこれだよ?」
澪の言葉に、ルナ達が騒いでいる。
ルナはコンビニのサンドイッチで、後2人はおにぎりとお弁当だ。
「卵焼き美味しそう。私のウインナーと交換しよ?」
お弁当の子がウインナーを澪のご飯の上に乗せながら交換を申し出た。
「う、うん」
澪がウインナーの代わりに卵焼きを一つその子のお弁当箱へ移動する。
「あ、ずるい!」
「あたしも食べたい〜」
交換した1人を、ルナ達が羨ましそうに見るのを見て、澪は自然と笑顔になる。
「あの、あと一つしかないから半分こになるけど」
「え、いいの?」「来栖さんの分は?」
澪の提案に、ルナ達がそう質問した。
「私はいつでも作れるから」
澪の言葉に、ルナ達が顔を見合わせて笑った。
「ならさ、明日が私、明後日がジュリね!」
「えー、先にルナとかずるいんですけどー?」
ルナ達の提案に、澪は「え?」と言葉を漏らした。
「なに? 明日は一緒に食べないの?」
ルナの疑問に、澪は勢いよく首を振る。
「明日も卵焼き作ってくるね!」
澪は、嬉しそうに返事をした。
——「ところでさ、来栖さんが可愛く見られたい人ってどんな人なの?」
食事をし始めた矢先、突然のルナの質問に澪は盛大にむせたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます