エピローグ 帰還

時と場所 夕暮れ時/神社の境内、本殿前の階段


(夕暮れの神社境内、カラスが鳴いている)

//SE カラスの鳴き声、数回

(カノ、本殿前の階段に座っている)

(眠っていた主人公、目が覚める)

(主人公が起きたことに気づいたカノ、声をかける)

「おっ、おはよう。少年」

「時間的にはこんばんはだけど~」

(主人公、カノに尋ねる。「ど、どこですか、ここ?」)

「ここどこって、神社の境内だよ」

(右の耳元に囁く)「で、君の頭は私の膝の上」

(主人公、飛び起きる)

//SE 勢いよく起き上がる音

「おおっと、大丈夫?」

(主人公、焦る。「ずっとカノさんの膝の上で寝てたんですか……」)

「うん、境内の石段の上に寝るんじゃ痛かろうと思ってさ」

「お姉さんの粋な計らいだよ~」

(主人公、尋ねる。「今は何時……?」)

「夕方ぐらい、かな」

「時間は、君とここで会った時とほぼ変わってないと思うよ」

「私の世界の方が時間の流れはゆっくりだからさ」


(主人公、呟く。「ああ、戻ってきちゃったんですね……」)

「うん、君のことは現実世界に帰しちゃった」

「私も完全な人さらいの神様になりたくないし」

「嫌だった? 元いた世界に戻ってくるのは?」

(主人公、頷く)

「そっか~。それはごめんね」

「でもやっぱり、君はここにいた方が良いと思うんだ」

「私の世界は想像以上に退屈だからさ」

「君の世界は大変なことも多いだろうけど」

「その分、私の世界よりも楽しいことは多いはず」

「だから無理しない範囲で頑張りなよ、少年」

(からかうように)「ほら、よしよししてあげるから」

(カノ、主人公の髪を撫でる)

//SE 髪を撫でる音

(主人公、照れる。「ちょ、子供扱いやめてくださいよ……」)

「はいはい、もう撫でないってば」

「照れ屋さんなんだからもう~」


(主人公、立ち上がる。「……そろそろ、帰ります」)

「もう帰る? わかった」

(主人公、礼を言う。「なんか、色々とありがとうございました」)

「礼を言うのはこっちだよ~。君と話すの楽しかったし」

(優しく)「ここでの生活に疲れたらまたここに来なよ」

「またのんびりさせてあげるよ」

「カノさん、気まぐれだから多分だけど。ふふっ」

「……それじゃまたね、少年」

(主人公、歩き去っていく)

//SE 遠ざかっていく足音と共にフェードアウト


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お稲荷のカノさんは君を神隠したい 暇崎ルア @kashiwagi612

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