『ユウちゃん』

宮本 賢治

第1話【ユウちゃん】

 ユウちゃん。

 松永 裕太。

 幼なじみ。

 親友。

 恋人。

 かけがえのない人。


「ね、ユウちゃん」


 わたしは、いつもそう呼んでる。物心ついたときからそうだった。だから、ずっとそう呼んでた。

 幼稚園の年長になった春。

 やな奴、コウヘイがわたしの真似をした。

「ね、ユウちゃん!!」

 わたしの声色を真似て、コウヘイがユウちゃんに言った。

 ユウちゃんは、コウヘイをコテンパンにやっつけた。

「二度とその呼び方すんなよ!」

 ユウちゃんは怒っていた。

 わたしが気まずくなって、シュンとしてると、ユウちゃんはわたしをまっすぐ見て、わたしの名前を呼んでくれた。


「ハルカ」


わたしは遠慮ぎみに言った。


「ユウちゃん」


 彼は、うんって、うなづいて、笑ってくれた。

 ユウちゃん。

 それは、わたしだけの言葉。

 わたしだけがそう呼べる。


第2話へ続く♪

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