笑うか叫ぶか
彼女のふざけた提案を断る。
しかし美桜は以外と真面目な顔をしている。
「なら、どうするの現実は映画じゃない、脱走で捕まれば最後。
君の扱いは実験に使うマウスと同じになるぞ」
「ハイそうですかと、戻ったとこで、
相手はナチだ俺の扱いがマシになるとでも?」
確かにと納得しそうになるも。
美桜の目的が推測の粋を脱しないし、
信用できるような根拠も無く、彼女の提案を蹴る。
「単刀直入に聞かせてほしいんだけど、アンタらの目的は何?、
それとも前言っていた援軍様が来てくれたの?。」
「悪いが援軍は来ない、大阪の空港から発したと聞いた
うちの部隊は来ること無いナチス連中を今も、
空港で待ちぼうけているわ」
「ああ、やっぱここ日本なのね。」
「そうよ、ここはデパートの跡地を改修した地下階層よ」
「ついでに聞きたいんだけど、美桜あんたは
アメリカの工作員だと思っていいの?」
「…悪いけど答えられない」
美桜の話が本当なら。
良いニュースであると同時に悪いニュースにでもある。
店に突入してきた美桜が装備をしていた物は
少なくともナチスどもが使っている骨董品でも無ければ
かといって東側(共産圏)の武器には見えなかった。
とにかく言えるのは、アメリカの工作員である可能性が高く
ナチスが制圧されるのも時間問題だろうと言える。
それと同時に装置が確保されれば、俺の人権はゼロと言える。
良いことは、まだ装置を破壊できること。
悪いことは、来るのがアメリカだってことだ。
「単刀直入に聞く。アンタらの目的は何だ?
さっきの援軍は来ないって言ったし、ここは日本だって分かった。
で、結局、装置を壊すつもりなのか、
鹵獲して使うつもりなのか——どっちだ?」
美桜はマシンの端に腰掛け、タオルで首筋を拭いながらこちらを見た。
顔には普段通りの軽さがあるけど、目が笑ってない。
「破壊に見せかけて確保って答えたら?」
彼女はニヤリと笑う。
「それ、つまり…あんたは装置をアメリカのものに
するために動いてるでOK?」
俺は速攻で核心を突く。
馬鹿正直に言うと、世界の縮図はいつも利得で動く。
美桜、軽く肩をすくめる。
「答えられないって言ったでしょ。けど、
君がそう結びつけるのも理解できるわ。
けどね、ひとつだけはっきり言える。」
「はっきりって?」
「私の手柄にしたいわけじゃない。少なくとも、
ナチス単独で動かれるよりはマシだって考えよ。
彼らに渡ったら、多分君の存在どころじゃなくなる。
で、私のいう“確保”ってのは『先に奪って封印する』
というオプションも含む。でもその封印を誰が持つか、
って話になるとやっぱり国家が動くのよ。」
「封印ね、壊すんじゃだめなの?」
「逆に聞くけど、装置を壊せば、
持った君たちがこの世界に来ない保証があるのかな?」
彼女の言葉は淡々としている。
俺の頭の中でいくつかの疑念がぶつかり合い、
粉々になっていく感じがした。正直、論理は成立している。
カンニングペーパー、なるほどと腑に落ちる。
向こうは利用価値を見出してるかどうかは知らんが
俺と言う、未来人が来たことで。
事実上ある種の未来予知めいたことができる。
ましてやアメリカともすれば、よくも悪くも
目立つの常に後出しじゃんけんを強いられては、
たまったものではない
だったら自身の手の中に収めて、予知合戦ていった所か。
「要するに、『どっちのクソを選ぶか』って話か。
平和主義者のパンフレットには載ってない選択肢だな」
「そう。理想はみんなで壊すこと。できれば花を添えて。
現実は夜中にこっそり鍵を変える作業よ」
美桜はタオルを小さく振って、俺の目をまっすぐ見る。
「君を守りたい、なんて嘘はつかない。守るために動くけど、
最終的には自分の組織の判断で動く。
それは仕事。だけど、私にも良心はある。
ナチスの手に渡すのは絶対に嫌よ」
「『良心』と『組織の判断』って両立するのかよ」
俺は苦笑した。
「ていうか、その『守る』って具体的に何するんだよ。
捕まれって言ったくせに?」
美桜、表情を少し考えこむ仕草をする。
「君が一度捕まり。犯人が捕まったと安堵してる間に、
その期間で、私は監視網を張る。誰が動くか、
どの出入り口が開くか。装置の位置も確定する。で、
タイミングを見て外部と取引する。
聞こえは悪いけど、これが現実の対処法よ。
破壊は理想論。封印と確保は戦術。」
「つまり……アンタの“封印”の定義は
『うちが好きに使える状態にする』ってことだろ?」
「うまくいけば、君の体はもとどうりよ」
「嘘だな、ただの巻き込まれた一般人のために
おたくらが、助けるはないだろ」
俺は声を低くした。怒りが微かに混じる。
「それは君が協力するか、次第ね」
美桜は肩をすくめて、馬鹿正直に言った。
「誰かが一枚上手なら、成立する。
私だって無償で動くわけじゃない。任務もあるし、
後ろ盾も必要。悪臭を消すには香水もいる、って話ね。」
一瞬、俺は言葉を失った。張りつめた真剣な議論の中で、
彼女の例えが余計に生々しかったからだ。
だが、それが逆に腹に落ちる理屈でもあった。
「分かったよ。あんたが言う“確保”の意味は理解した。
要するに最悪二つの未来があって——ナチスが独り占めして、
アンタらは何もできない未来。もう一つは、確保して使う未来。
どっちもクソだけど、
後者の方がダメージコントロールはできる、ってことだな」
「要はその通り」美桜はにっこりと笑った。
「どう? 君も戦略家っぽいこと言えるじゃん」
俺は苦笑いを返した。笑いは出るが、それは安堵の笑いでも、
屈辱の笑いでもない。諦観の笑いだ。
美桜の顔が一瞬だけ柔らいだ。彼女はタオルの端で唇をぬぐい、真面目な顔で言った。
「君に全部は言わない。でも、最低限の尊厳は守る。
私の守り方でそれが保証できるかは──交渉してみる」
「交渉か。いい響きだな。交渉で俺が勝てる気はしないけど」
「勝たなくていい。生き残ればいいの」
どこか皮肉げに、こちらをあざ笑う。
「あ,そうだ、笑いたいなら今のうちよ、
次は叫ぶ番だから」
「どゆこと?」
「まあ、君も腹に隠し事を詰めてる感じだし、
交渉決裂かなって」
「は?」
楽しげに声援を送る美桜の声に違和感を感じ、顔を上げると
そこには看守の服を着て。
奪ったMP40 を片手に持ち銃口上に向け、
こちらを嘲る顔を向ける美桜がいた。
「じゃあ頑張ってね、サムライガール」
タタと一定のリズムを刻む炸裂音が静かな
施設に響く、火薬の臭いが鼻を突く。
小型のピストル弾とはいえど、その発射音はうるさく
まさに轟音そのものであり
一般人の俺は、思わず耳を塞ぎ目をつぶってしまう。
銃声は止み、変わりに消火ベルのジリリとした音が鳴る
女子高生ボディで配信とバイト→ナチの装置に狙われた俺 黒歴史書く蔵 @ramuna26
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