【月間18,000PV突破御礼】古医術で診療所やってたら医術ギルドに潰されそうになり、闇バイト先が魔王軍で魔族たちに溺愛されてます(R15)~スピンオフASMRシリーズ~
第2話 夢魔のヴェレム:夜診録『夢の中に入り込んで、あなたの全部──奪ってしまいましょうか?』
第2話 夢魔のヴェレム:夜診録『夢の中に入り込んで、あなたの全部──奪ってしまいましょうか?』
【現在:寝顔を見ながら】
(SE:静かな夜の空気、遠くで虫の声、揺れる蝋燭の音。セレンの微かな寝息)
……ふふ。診察台で眠ってしまうなんて、
先生。
あなたって、本当に、どこまでも無防備なんですから。
(SE:ヴェレムが診察台に座り、軋む音)
こんなふうに、無防備……。 あなたって、本当に……そういうところが、罪ですね。
(SE:髪を指先で撫でるような微細な音)
ねぇ、覚えていらっしゃいますか?
あの夜のこと。 あなたが、初めて魔王軍の面接に現れたあの夜──いえ、名目はただの“夜間業務”でしたね。でも、どういう業務かわかっていらしたでしょう?
(SE:過去へ切り替わるフェード音)
【回想:面接の夜】
(SE:湿った路地裏の足音、地下への扉が軋む)
「私はヴェレム=ノクターナ。魔王軍の面接官です。あなたの腕を見せていただけますか?」
(SE:ヒールの近づく音)
「まずはテストです。──古医術師セレン=アルウェイス。古の医術に通じていらっしゃるとか。あなたは無事にクリアできます?」
(SE:書類を差し出す音、ページをめくる音)
「獣人族の近衛兵。
腕の腫れと発熱、筋肉痛が続き、魔法薬でも改善しない。
この薬が、実際に使われた魔法薬です」
(薬瓶を置く音)
『この症例は、万能薬の副作用による筋繊維の再生暴走だ』
一目で、言い当てましたね。
軍医長でさえ首を傾げた症例を、あなたは、迷いなく、静かに──けれど確信をもって診断した。そして、実際に兵士を治療し、その痛みを取り去ってみせた。
でも。
その中で、私の目にもっとも深く焼きついたのは、
薬草を調合するあなたの手でも、兵士に寄り添う声でもありませんでした。
──“怯えていた”あなた。
周囲の空気に、私の目に、軍の圧に。
それでも逃げず、震えながら、踏み出した一歩。
……刺さりましたよ、先生。 私の中に、ずっと抜けない棘のように。
(SE:沈黙、空気が張り詰める音)
……そして、あの時のあなたの顔。
「……今さら、逃げられると思います?」
──そう私が言った時、あなたは目を見開いて、一瞬、凍りついた。
でもその怯えと、ほんのわずかな反発の混じった表情が……ぞくぞくしてしまったのです。
まるで捕まえた蝶が最後にもがくみたいに、美しかった。
……その顔、今もはっきり覚えていますわ。
【契約の夜】
(SE:羽ペンの音、契約書が広げられる)
「では、報酬はこちら──金貨百枚。そして、こちらが契約書」
(SE:椅子が引かれ、距離が詰まる音)
「先生の医術は、魔王軍……いえ、私にとっても貴重なものです」
「……あなたの命は私が“握っている”」
(SE:囁く声が近づく、呼吸がマイクにかかる)
私があなたの首に指を添わせると、その鼓動が、ぴくりと跳ねましたわね。
(SE:喉元をなぞるような指の音、微細な衣擦れ)
細くて、繊細で、でも芯がある……。
まるで、そこに“生”そのものが詰まっているみたい。
この命を握っているのが私だと思うと……
(SE:低く、甘く、耳に息を吹きかけるような囁き)
ふふ……ぞくぞくしてしまいますわ。
あの時、あなたの瞳が揺れた。
恐怖と、ほんのわずかな期待が入り混じった……
ねえ、先生。
あなたは気づいていませんでしたでしょうけど──
あの夜、私のほうこそ、あなたに捕らわれてしまったのです。
冗談のつもりでした。でも、その半分は、本気で。
あなたは、私の中で“興味”ではなく、“渇き”になってしまったんです。
【契約破棄の夜】
……そういえば──あなたが契約の破棄を申し出たこともありましたね。
「魔族が人間の子供を傷つけた。俺はもう、関われない」……と、そう言いましたね。
(SE:鼓動に似た低い残響)
……先生。
あの時、私、とても傷ついたんですのよ?
もちろん、あなたの信念は理解しています。
でも、まるで私自身が、あなたの理想を踏みにじったみたいで。
(SE:吐息、苦笑のような微かな笑い)
私にとって、あなたは……
──そのままのあなたでいてくれるだけで、充分に価値がある存在なのに。
……それでも、あなたは自分を律するのでしょうね。
それが、“あなた”だから。
【現在:セレンの寝顔を見ながら】
(SE:記憶が呼び起こされるような低い鈴の音)
……それから、あの日のことも。
あなたが魔王城で裁かれかけた、あの緊迫した瞬間も──
(SE:鎖が軋む音、重く閉じた扉の音)
鎖に繋がれ、たったひとりで立っていたあなた。
それでも、震えていましたね。
……でも、逃げなかった。
その足元の震えまでも、あなたという人の“強さ”なんですの。
そして、震える声で、それでも魔王の前で真実を告げた。
利権と虚構の裏で何が起きていたのか── 誰もが口を閉ざす中で、あなたは告発した。
……素敵でした。 本当に、眩しくて。
(SE:吐息、ほんの少し声がかすれる)
だから、私はあなたを助けたかったのです。
“私のセレン”──そういったら、あなたは安心した顔をしましたね。
……あなたが壊されるなら、私が先に手を伸ばす。
そう、強く、強く、思ったんですのよ。
(SE:過去の記憶を思い出すような淡いフェード音)
(SE:蝋燭が揺れる音、静かな寝息)
……ふふ。聞いていませんよね。
それでいいんです。今は、眠っていて。
(SE:微かな衣擦れ、ヴェレムがそっと近づく)
明日も、誰かを救うために動き続けるあなたへ。
私はせめて──あなたの夢を、守ってあげたい。
(SE:指で髪をすくう音)
おやすみなさい、先生。
……私の、セレン。
……ほんとうに、可愛いひと。
こんなに無防備に眠っているのですもの。
夢の中に入り込んで、あなたの全部──奪ってしまいましょうか?
(SE:ほんの少し甘く、低く囁く)
……冗談ですわよ。ええ、きっと。
(SE:再び静寂。夜の余韻に溶けていくようにフェードアウト)
【月間18,000PV突破御礼】古医術で診療所やってたら医術ギルドに潰されそうになり、闇バイト先が魔王軍で魔族たちに溺愛されてます(R15)~スピンオフASMRシリーズ~ 悠・A・ロッサ @GN契約作家 @hikaru_meds
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