第2話 人類の敵
「うわぁぁぁ!」
東方ダンジョンは巨大な穴である。
全長は大きすぎてわからないが、とてつもなく大きくて深い穴だ。
構造的には真ん中に巨大な吹き抜けがあり、あとは迷宮となっている。
今はその吹き抜けを飛んでいる。
『フハハ、楽しいな強きものよ』
「いや全然楽しくねぇよ」
『ほれもう着くぞ」
そうして俺の視線の先に20年前落ちた小さな穴が見えた。
「ぶ、ぶつかるぞ!」
『関係ない、突き抜ける』
そして勢いそのままにドラゴンはその小さな穴をぶち破った。
穴を破り地上へと出ると、そこには昔よくきた密林が広がっていた。
「か、帰ってきたぞ!」
『フハハ、よかったな、見ろさっきの穴を』
「嘘だろ」
見ると先ほど破った穴が修復していき、元の小さい穴になっていた。
『ふっ、憎き人の知恵のなせる技よ、まったく忌々しい』
「なんだよ憎き人の知恵って、ダンジョンは人が作ったもんじゃないぞ、自然現象だ」
『……まぁよい、見ろこれが大地だ』
ドラゴンはそう言うと一気に、雲の同じ高さまで飛んでいった。
「すげぇ、つか空気が冷てぇ」
ダンジョン内の気候は統一されており、雨は降らない。
川や湖はあるが、どこから水が出てるかは不明だった。
『今日は曇りだな、そのうち雨が降りそうだ』
「雨か、久しぶりだな」
『さて一先ず、地上に降りるか』
ドラゴンはそう言うとそのまま一気に降下していき、地上に降りた。
20年ぶりの地上か、なんだろすげぇ嬉しい。
でもドラゴンの発言が気になって、素直に喜べない。
なんだよ人類絶滅って。
「おいドラゴン、さっきの人類絶滅ってなんだよ」
『フハハ、なんだ急にあんまし気にしてないように思えたが、やはり気になるか』
「そりゃそうだろ、早く説明しろよ」
俺がそう言うと、ドラゴンはゆっくりと身体を地面に下ろして寝そべった。
『まぁそうだな、お主がこれから手伝うことと関係あるし、話すとしよう』
「おう頼む」
『今から15年ほど前、人類はある魔法を作った、それは大陸中の魔法使いがいて初めて使える魔法、いわゆる超級魔法の一つだ』
「おう」
『それが全ての引き金だった、その魔法は使えば国一つを滅ぼし、大量の人類や生物を滅ぼす凄まじいものだった、名を神の槍とか言うそうだ』
「お、おう」
なんだその魔法、聞いたことないぞ。
確かに15年前だと、俺はダンジョンの中だったしわからないけど、大量の人類を滅ぼすってまさかそれで自滅したのか。
『でだ、あろうことかその魔法作った人類はそれを対人ではなく対魔族や他の異種族へ向けて使った、そうして10年前人類とそれ以外の他種族間の戦争が起き、人類は負け絶滅した』
「は?」
『もっと言えばな、人類を滅ぼしたのはこの我だ』
「は?」
『仕方なかろう殺さねば殺されていたんだ、そして残された人類は古代の遺物であるダンジョンへと逃げた』
「なんだよそれ」
人類が人類以外を滅ぼそうとしてこいつに滅ぼされたって事か。
いやいやなんだよそれ、確かにこのドラゴンは強い。
でもさすがに1匹でどうにかなるほど、人類は弱くないはずだ。
『我と言ったが、もちろん我1人でやったわけではない、我以外のドラゴンもいたし人類を許さない人類も我の味方にいた』
「なんで人類が人類を滅ぼそうとするんだよ」
『フハハそんなの我は知らん、それでだお主よ何か気が付かんか、これから我がダンジョンへなぜ行きたいのか』
「お前まさか」
『そうだ、我はこれから他の全てのダンジョンへ行き、そこにいる生き残った人類を滅ぼす、そしてお前はそれに協力するんだ』
いやいやなんだよそれ、そんなの協力するわけ……ってまてよ、確か龍の契約をしていたよな。
「だから龍の契約をしたのか」
『いかにも、ただ地上に連れていってもお主は強すぎるからな、そんな奴が人類の味方は厄介だ、だから逆にしてやったのだ、お前は今から人類の敵だ、エドモンドよ」
「なぜ俺の名を」
『ふっ、何故だろうな』
そう言ってドラゴンは何も言わず、黙ってどこか遠くを見つめた。
いやいやなんだよ人類の敵って、俺はそんな事したくない。
それよか本当に地上の人類は絶滅したのか。
駄目だ、知らない事が多すぎて考えられん。
『エドモンドよ、我は少し休む、その間好き過ごすと良い、ただ契約の効力で貴様は我を殺さないし、我に逆らえない、それを常々忘れるなよ』
「……ああわかった、一先ず言う通りにするよ」
『やけに素直だな』
「仕方ないさ、俺は今知らない事が多すぎる、こういう時は一旦落ち着いて状況を整理するのが大切だって、20年間のダンジョン生活で学んでてな、ここは一先ずお前について行くよ」
『フハハ面白い、好きにしろ、ただなエドモンドよ、我らだって人間を好きで滅ぼしたわけではないんだ、それだけはわかってくれ』
そう言ってドラゴンは眠りについた。
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