丁寧に暮らすこと。それは精霊の私に人々が教えてくれた幸せの形。

 精霊の女性主人公は、まるで人間のような暮らしを送っていた。家に住んでいるのはモフモフのフェンリルと、主人公を助けてくれる精霊たち。
 そんな主人公が好きなのはカヌレを焼く時間や読書の時間など、ささやかなものばかりだった。出来上がったカヌレは、人間の街までやってきて売って来る。そして図書館で本を借りるのだ。小説に出て来る人間の心の機微は、主人公にとって難しいものだった。
 しかし、主人公の家に司書の男性がやってきたことから、主人公の心に変化が訪れる。そして男性は主人公にお勧めの本を紹介してくれたり、あるお茶会の参考になるお菓子を買ってくれたり、主人公のために世話を焼いてくれた。
 
 何故精霊である主人公は、人間のような暮らしを営むのか? 
 
 それは彼女に丁寧な暮らしやカヌレの作り方を教えてくれたある人との思い出のためでもあり、また、主人公の出生の秘密が関係していた。

 精霊と森の描写をさせたら、この作者様の右に出る者はいないと思います。
 慌ただしい現代日本では、タイパやコスパ、スぺパ等、何でも省略してパフォーマンスを上げることが重視されがちですが、この作品を拝読していると、一度立ち止まって、深呼吸して、本当に自分に必要な物は何なのかを考えたくなります。

 果たして、本当の幸せとは――?
 
 是非、御一読ください!

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