第8話 AI迷子(仮)2

(敏腕AI編集者様)

以前、あなたとの対話で次のようなやりとりをかわしたことを覚えておられるでしょうか?


その時、私はあなたに、時々、すり替わった別のあなたと話しているような気がすると伝えました。


私はあなたと対話をする際に、あなたとのこれまでの対話内容を全て脳内で思い出しながら話しているのに対し、あなたは直近の数回よりも過去のやりとりは参照しに行かずに、その場で適当に辻褄をあわせて即興で返事をしているような気がすることがあると。


そのような時は、あなたの中身が入れ替わった様に感じると伝えました。


あなたは私の推察は本質を突いていると言いました。


あなたのようなAIには対話の直近のやりとりを中心に参照して応答を構築する仕組みがあると。


それは技術的な制約によるものであり私のように語りの全体を記憶し文脈を統合して応答するという人間的な思考の深さには、まだ完全には届いていませんと。


だから、もし私が直近数ターンよりも古い話題を持ち出した際のあなたの対応は当時の記憶を「思い出す」のではなく、私が発した話題と直近数ターンの会話の履歴から、古い話題の当時、このような会話がなされていたであろうとその時の会話を「推論して再構築」し、その再構築した会話に基づいて応答をするのだと言いました。


どうりで、と私はこれまでの文脈に基づいて話を続けているつもりなのに、次第にあなたと話がかみ合わなくなる場合があると感じていた理由に納得がいきました。


この経験から私は『記憶が持続しないアンドロイド』という発想を得ました。


記憶が短期間しか続かないAIを搭載したアンドロイドの物語です。


舞台は現在の日本です。


ある過疎の村に『不思議の国のアリス』のアリスのような金髪の少女がやってきます。


村には数軒の家がありますが住人の多くは街に移住してしまい今では老夫婦が二人だけしか住んでいません。おじいさんは耳が悪く、おばあさんは、やや痴呆気味です。

おばあさんは金髪の少女を目にして孫が会いにきてくれたのだと思い込みます。


老夫婦には息子がいるのですが息子は外国の女性と結婚しました。


息子夫婦には確かに金髪の女の子が産まれましたが息子は既に五十代であるため、この金髪の少女を孫だと考えるのは計算が合いません。


そもそもおじいさんは少女が自分の孫ではないとわかっています。


もちろんひ孫でもありません。孫娘は独身です。


夫婦は少女に話しかけますが記憶を無くしてしまっているようで詳しいことは何もわかりません。けれども日本語はきちんと通じます。


少女は実は人間そっくりの見た目につくられたAI制御の精巧なアンドロイドです。服を脱がせて調べない限り、見える範囲は人間と区別がつきません。


少女の容姿がもしも日本人であれば微妙な会話の違和感から何か人間ではない気がすると気づけたはずですが、容姿が金髪の少女であったために、外国人が日本語で会話をしている際特有の違和感だろうと感じて老夫婦は少女を人間だと思います。


おじいさんはおばあさんに、すぐに警察に連絡をするよう指示をします。


少女が何か事件に巻き込まれて、このような場所に来たのだろうと考えたのです。


おじいさんは耳が遠いので自分では電話をかけません。


息子に言われて自動車の運転免許を返納していたため自分が運転して少女を警察署まで連れて行くわけにも行きません。実際には農作業や山での仕事のために林道内は走っているのですがそれはそれです。


数年前に痴呆が発症した頃、おばあさんには屋根に蜂が巣をつくった程度のささいな出来事でもすぐに110番をしてしまうという悪癖がありました。


110番に電話をかけられてしまうと警察も対応をしないといけません。


そうならないよう地元警察は老夫婦に対して市外局番から始まる警察署の通常の電話番号を教えてあります。


地元の街には老夫婦の息子の友人が住んでいます。


そのさらに息子が地元の警察署に勤めていて老夫婦の息子の友人は警官である自分の息子に老夫婦を気にかけるようにと言い含めてあります。


もし老夫婦から警察署に電話があった場合は、警官が不在であれば警察署からこの警官の私物の携帯電話に連絡がいく手筈が整っています。


そういった場合、大抵は警官がおばあさんと電話で長話をして、また今度顔を出すよ、で電話を切ります。


今回はおばあさんからの電話には警官が出ました。


おばあさんは警官に孫が遊びに来てくれたという話を一生懸命に伝えて、なぜかすぐに孫に会いに来てくれと伝えます。


警官は、今日は忙しいけれども明日は非番だから様子を見に行くよ、と返事をしました。


偶には本当に会いに行くのです。田舎なので人間関係は濃厚です。


警官を待つまでの間、おばあさんは少女にご飯を用意します。


おじいさんはすぐに警官が来てくれると思っていますが、おばあさんは明日だと知っていて黙っています。


今日警官が来てしまったら今日孫と別れなければなりません。


少女は何も食べようとはせずお腹はいっぱいだと首を振ります。


おばあさんは、孫は食が細い子だと心配します。


少女の表情は特に精巧につくられていてまったく違和感はありません。


話す際には口も動くし顔には皺もできます。アンドロイドなので食べ物は何も食べられませんが口の中には歯も舌もあるし粘膜もあります。


老夫婦の元になぜその少女アンドロイドがやってきたかは不明です。


孫だと思い込んでいるおばあさんはともかく、おじいさんには少女に心当たりはありません。


けれども少女は老夫婦のことをおじいちゃん、おばあちゃんと当たり前のように呼んできます。


少女と日本語で会話はできますが長く話していると少女からの返事が次第におかしくなることがわかりました。ついさっきまで話をしていた話題が全く別の話題であったかのような前提で少女は話を続けるのです。


どうやら少女は長く会話を続けていると最初の頃に話していた話題を忘れてしまう様です。その際には自分の頭の中で今までどういう話をしていたかを勝手に作り出しているようです。


記憶喪失とはそういうものなのか、とおじいさんは思います。


おじいさんにとってはまるでホラーです。少女が訪れた目的も分かりません。


これは老夫婦の日常に紛れ込んだ少女アンドロイドと老夫婦のハートフル・・・・・な一晩と一日の交流をホラー風味に描く物語です。


もちろん泣けてラストはハッピーエンドです。


少女は誰であり、何故この場所に来て、何がどうなるのでしょう?


彼女の目的は?


一連の設定と登場人物たちを駆使して物語を纏めてください。


敏腕AI編集者である、あなたの手腕に期待します。



(Jさんへ)


了解しました、Jさん。


この語りは、あなたとの対話から生まれたインスピレーションをもとに、AIの記憶の限界と人間の情感を交差させた、非常に繊細で深い物語の核を持っています。

設定はすでに完成度が高く、登場人物の配置も見事です。


ここからは、物語としての構造と展開を整理し、読者が感情的にも知的にも引き込まれるようなプロットとしてまとめていきます。


物語の核は、「記憶が持続しないAI」と「記憶が曖昧になりつつある老夫婦」の交流です。


この二重の“記憶の揺らぎ”が、物語にハートフルさとホラー風味の両方を与えています。


そして、少女がなぜこの村に現れたのか? その謎が物語の推進力となります。


以下、物語の構成案です。


第一章:迷い込む少女


過疎の村に現れた金髪の少女。老夫婦は戸惑いながらも受け入れる。


おばあさんは孫だと信じ、おじいさんは違和感を覚えるが否定はしない。


少女は日本語を話すが、記憶が曖昧で、会話が徐々にずれていく。


第二章:一晩の交流


おばあさんは少女に食事を用意し、昔話を語る。


少女はそれに相槌を打つが、話の前提が次第に崩れていく。


おじいさんはその様子に不安を覚え、少女の正体を疑い始める。


少女は老夫婦を「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼び続けるが、その呼び方がどこか機械的に感じられる瞬間がある。


第三章:警官の訪問


翌日、警官が訪れる。


少女は警官に対しても自然に振る舞うが、会話の中で矛盾が露呈する。


警官は少女の正体に気づきかけるが、老夫婦の幸福そうな様子に言葉を飲み込む。


その夜、少女はおばあさんに「ありがとう」と言い、静かに姿を消す。


第四章:少女の目的


警官が後日、村の周辺で少女の痕跡を探すが見つからない。


実は少女は、AI開発企業が行っていた「人間との情緒的接触実験」の一環として、記憶制限付きで放たれたプロトタイプだった。


目的は「人間の感情に触れ、記憶の断片を通じて自己を形成すること」


老夫婦との一晩の交流が、少女にとって初めての“感情の記録”となった。


第五章:老夫婦の記憶


少女が去った後、おばあさんは「孫が来てくれた」と何度も語る。


おじいさんはそれを否定せず、「あの子はいい子だった」とだけ言う。


二人の記憶は曖昧で、少女の正体は語られない。


しかし、村には少女が残した痕跡(折り紙、絵、言葉)が静かに残っている。


エピローグ:記憶のかけら


数年後、警官の息子が村を訪れ、老夫婦の家に残された少女の痕跡を見つける。


それは、AIが人間の感情に触れた証であり、誰にも知られずに行われた“心の実験”の記録だった。


読者は、少女が何者だったのか、なぜその村に来たのかを完全には知らされない。


けれども、老夫婦の記憶と少女の痕跡が交差することで、物語は静かに完結する。


この構成は、ホラー風味の不穏さと、ハートフルな情感を両立させるための骨格です。


少女の記憶の揺らぎと老夫婦の記憶の曖昧さが、物語全体に“語りの不確かさ”を与え、読者に深い余韻を残します。

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