第4話 ダンジョン配信悪役令嬢(仮)3
(Jさんへ)
承知しました。
さて、没プロット。これ、かなり面白いです。「ダンジョン内配信が宰相の焦りを誘う」構造にはサスペンスがあり、誤解によって真相が歪む構成も見応えがあります。では、ここから大団円へどう導いていくか、登場人物ごとの役割に沿って展開をご提案します。
・シモーヌ
地下深くで兄との合流を果たす直前、魔物の異常行動を察知。兄と協力し、スタンピード阻止のためダンジョン内に罠を張る。罠には王都の古代防衛魔術装置の再起動が必要で、これを使えば大量の魔物を封じ込められるが、装置の起動には迷宮伯の血を引く者しかアクセスできない。兄が負傷しているため、シモーヌが代わりに起動を試みる。
・クリスチーナ嬢と王子
宰相の異常行動を疑い始めたクリスチーナが王子を焚きつけ、ふたりは独自に情報を集める。王城を抜け出し、シモーヌの痕跡を追ってダンジョンへ向かう。その途中、誤って地下配信用の魔導水晶に接触し、王都全域に「ふたりの実況」が配信される。これが民衆に希望と混乱を与え、宰相の計画にほころびを生む。
・宰相
配信に映るクリスチーナ嬢と王子の姿に驚き、ふたりがクーデター阻止側に回ったことを察知。もはや後戻りはできないと判断し、自ら先頭に立って兵士を率いダンジョン突入を命じる。だがダンジョン内は魔物に満ちており、兵士の多くが足止めを喰らう。宰相自身も魔物に襲われるが、間一髪でシモーヌ兄妹に救われ、正気を取り戻す。
・国王夫妻と迷宮伯夫妻
国境付近で宰相の偽命令によって拘束寸前のところを、古代魔術装置の起動による光の柱(王都で異変が起きた印)を目にして急ぎ帰国を決断。空路(飛竜?)で帰還し、王都で宰相の計画を正式に否認。誤解が解けた宰相は王子と娘を平手打ちし、国政の刷新を誓う。
・最終シーン案
王都は守られ、魔物はダンジョン深部に封印。国王夫妻がクリスチーナ嬢に「娘にしては有望すぎる」と評し、シモーヌは人知れず王都を離れる。王子とクリスチーナ嬢は謹慎処分を受けつつも、民衆の支持を得て新たな政治改革を志す。
シモーヌは故郷に帰還し、静かに魔物研究を始める。舞踏会のドレスの一部はまだ汚れたままだが、それが彼女の変化の象徴になる。という静かな余韻。
もしよければ、それぞれの場面ごとにもう少し演出のご提案もできます。
今後はクリスチーナ嬢と王子視点での展開から描いてみましょうか?
お望みとあらば、彼らの配信シーンだけでもカメラに写る台詞付きで即興できます。お任せください。
(敏腕AI編集者様)
まずシモーヌパートから行きたいと思います。
『シモーヌ
地下深くで兄との合流を果たす直前、魔物の異常行動を察知。兄と協力し、スタンピード阻止のためダンジョン内に罠を張る。罠には王都の古代防衛魔術装置の再起動が必要で、これを使えば大量の魔物を封じ込められるが、装置の起動には迷宮伯の血を引く者しかアクセスできない。兄が負傷しているため、シモーヌが代わりに起動を試みる』という提案を受けました。
『王都の古代防衛魔術装置』という解決方法がとても安易です。そのような装置が存在するのであれば、そもそもこれまでにもその装置を使って王都の地下ダンジョンの魔物を一掃しようとするなどの試みを国王や迷宮伯はしていたはずです。今回に限ってうまくいってしまうのは都合がよすぎです。
また、迷宮伯の血を引く者しかアクセスできないという設定も安易です。
血で何かが動くというファンタジーな展開を否定はしませんが今回は採用したくありません。
この作品の中で私が考えている迷宮伯の位置づけは、とにかく強い元探索者です。よくあるS級探索者とかそういった人外の強さを持つ探索者の引退後を想定しています。
もともと王都の地下にはダンジョンがありました。ダンジョンは王国に恩恵を与えますが同時に危険ももたらします。王国はダンジョンから漏れてくる魔物に王都が襲われないように兵士や探索者による魔物駆除をしてきました。
若い頃の迷宮伯と妻(シモーヌの両親です)は、このダンジョンで探索をしていた探索者です。どこかの国からふらりとやってきた探索者で人外の強さに成長しました。
偶々、この国に来て知り合った二人は探索者として王国に数々の貢献をして何度も勲章をもらっています。
二人は引退して結婚しようと考えます。どこか子育てに良い国や場所に移り住もうと考えますが二人に去られたくない王国は二人に迷宮伯という新たにつくった貴族の爵位を与えて王都に残るよう求めます。
迷宮伯の領土は迷宮、要するにダンジョンです。普通の貴族が領地の民衆から税金を取るように迷宮伯にはダンジョンから得られる莫大な収入の何パーセントかが入ります。個人としてはどの貴族よりも高収入です。そのため他の貴族からは嫌われています。
迷宮伯はダンジョンの魔物が王都に被害をもたらさないように常に最前線に立ち一番危険な魔物と戦わなければなりません。王国の兵士たちを鍛える役目もあります。軍の将軍のような立場です。
本来、二人は貴族の肩書や収入よりも気ままな暮らしこそが望みなのですが友人である現国王のたっての頼みで当面の間迷宮伯になることを引き受けます。
国王は自分の息子と迷宮伯の娘を婚約させるなど何とかして二人が王国を離れてしまわないようにと気を配っています。
迷宮伯である二人の子供、シモーヌと彼女の兄は、そんな人外探索者二人の間に生まれた子供であるため両親以上の才能の持ち主です。現在は父親である迷宮伯不在時にはシモーヌの兄がダンジョン最前線で指揮を執っています。
シモーヌは兄に連れられてダンジョン内を遊び場所にして育ったため両親と兄以上の素質の持ち主です。
といった設定があります。
したがって、そのようなたまたま王国に住んでいるだけの迷宮伯一家では、もし地下に古代の何とか装置があったとしても、その装置と深い血の縁があることはありえません。だから古代の装置案は却下です。もし装置と血のつながりがある誰かが必要であるなら相応しいのは王家の人間です。
今回の婚約破棄事件を知ったことで迷宮伯夫妻は、しがらみを捨てて王国から出て行こうと決意します。
国王は馬鹿息子やりやがったなと頭を抱えています。
スタンピードへの対処はもっと地道な正攻法か逆にシモーヌの人外な力押しが行われるべきです。
いや違いますね。クリスチーナ嬢が何か作戦を考えてシモーヌが実施する形がいいと思います。王子はおそらく咄嗟の機転かなけなしの勇気を振り絞ってシモーヌを手助けすることになる役割です。
次いでクリスチーナと王子パートです。
『クリスチーナ嬢と王子
宰相の異常行動を疑い始めたクリスチーナが王子を焚きつけ、ふたりは独自に情報を集める。王城を抜け出し、シモーヌの痕跡を追ってダンジョンへ向かう。その途中、誤って地下配信用の魔導水晶に接触し、王都全域に「ふたりの実況」が配信される。これが民衆に希望と混乱を与え、宰相の計画にほころびを生む』という提案をあなたから受けました。
『王都全域に「ふたりの実況」が配信される。これが民衆に希望と混乱を与え』という本人が知らないところでいつのまにか英雄にされているという展開は好みです。
けれども『誤って地下配信用の魔導水晶に接触し』はいけません。シモーヌ同様ダンジョン内に設置されているカメラで自動的に撮影されていて王都で見ている人たちが希望を感じて盛り上がる形が良いでしょう。
『宰相の異常行動を疑い始めたクリスチーナ』とありますが、おそらく王子と一緒に宰相の屋敷に帰宅したクリスチーナは喧嘩を売ってしまった相手の恐ろしさに物凄く精神を消耗しています。ずっと寝ているか赤ちゃん返りをしてしまっているでしょう。宰相はクリスチーナのやらかしに衝撃を受けますが、だからといってクリスチーナを見捨てはしません。宰相の妻もそうでしょう。宰相は娘が起こしてしまった迷宮伯家との戦争に勝つしか、もはや娘に平穏は訪れないと考えます。そのためにはクーデターを起こしてでもシモーヌと兄をダンジョン内で始末するしかないのです。
ということは、宰相は国王夫婦の殺害までは考えず国境で捕らえた後、迷宮伯夫妻夫婦は始末しますが国王夫婦は救うつもりです。
恐らく国王に対しては迷宮伯一家によるクーデター計画を王子と娘がつきとめたので一時的に王都の権力を自分が掌握して王子の協力も仰いでクーデターを阻止したというような筋書きを説明するのでしょう。
クリスチーナ嬢は心身衰弱状態にありますが母親と王子の献身的な介護により正気を取り戻します。その時にはすでに宰相は王都の実権を掌握してダンジョンには大量の兵士が流れ込んでいる状況です。自分のやらかしがさらに大事件に発展してしまっている事実にクリスチーナ嬢は恐怖します。けれども父親は紛れもなく自分を助けようとしての行動をしているので彼女に父親は責められません。何とかして父親を助けたいと彼女は考えます。配信されているダンジョン内の映像からシモーヌが地下深くにいることをクリスチーナは知ります。父親を救うためにはシモーヌに謝って何とか許してもらうしかないと考えたクリスチーヌはダンジョン行きを決意します。王子も彼女に寄り添います。
地下を目指すクリスチーナと王子の姿は二人の知らぬ間に配信され戒厳令で家から出られない王都の市民はその様子をみんなが見ています。
クリスチーナが地下深くでついにシモーヌと出会った時、スタンピードは決壊寸前です。シモーヌは何とか鎮圧しようと奮戦していますが多勢に無勢で多くの魔物に脇を抜けられてしまっています。多分シモーヌが兄の元に辿り着いた時にはスタンピードは始まっていて兄は少ない人数で悲壮な覚悟をしながら戦っていたのでしょう。ついに重傷を負ったタイミングでシモーヌが駆けつけて場所を変わったため味方は一時勢いを盛り返したのですがまた飲み込まれそうになっています。
クリスチーナは地下のここまで降りて来る過程で見聞きした何かをヒントにスタンピードに対処する妙案を思いつきシモーヌに伝えます。
その作戦を何とか三人、シモーヌ、クリスチーナ、王子がやりとげてスタンピードは収束します。その過程で王子は男気を見せるでしょう。命がけでクリスチーナを庇うとかそういった行為だと思います。しょぼい男がなけなしの勇気を振り絞って体を張る場面です。
シモーヌたちが脇を抜かれて上に向かってしまった魔物たちはシモーヌを追跡していた兵士たちに遭遇して鎮圧されます。宰相が速やかに王都の権力を掌握して強制的に兵士をダンジョンに送り込んでいたことが功を奏します。
婚約破棄をされたはずのシモーヌが王子とクリスチーナと協力してスタンピードを鎮圧した様子は配信で誰もが見ています。ということは婚約破棄事件の時から三人は今のスタンピードを予見して動いていたに違いありません。婚約破棄からの逃亡などという不名誉を受けてまで王都の人たちを救ったシモーヌに賞賛が集まります。
迷宮伯と国王夫妻の動向はそれほど描写しなくていいでしょう。国境線で自分たちを止めようとする兵士たちに対して「俺を止められると思うなよ」と迷宮伯が一蹴するのでもいいし国王夫妻を人質に取って「この二人がどうなっても構わないのか」でもいいでしょう。国境兵士に国王をよく知る誰かがいて通してもらえるのでも構いません。いずれにしても彼らが王都に帰りつく頃には事態は収束しています。
後日談です。国王が王都に戻った後、宰相は職を辞したいという話を国王に切り出します。貴族の位は返上し自分はどんな処分でも受けるが娘と妻の命だけは助けてほしいと懇願します。迷宮伯が何を言っているんだと話に割り込みます。俺なんかよりあなたのほうがよほど迷宮伯に相応しいじゃないか。王都をスタンピードから守り抜いたのは間違いなくあなただ。職を辞すのは俺だ。
宰相のクーデターが速やかにうまくいったのはそれだけ迷宮伯を嫌う貴族が王都には多くいたために他なりません。国王は迷宮伯の爵位返上を認めます。
シモーヌと王子の婚約破棄も認められクリスチーナと王子が結ばれます。二人が深い信頼関係で結ばれている姿は王都の誰もが配信で見ていたため誰からも異論はありません。シモーヌも祝福します。
その後の迷宮伯一家がどうなるかについては触れません。多分夫妻はどこか環境の良い土地に移り住むのでしょう。きっと温泉がある土地です。
シモーヌと兄は探索者として両親よりも名を成していくのだと思います。
恐らくこの物語のポイントはクリスチーナが思い付くスタンピードに対処する妙案です。
ということはここまでシモーヌが主役だと思ってきましたが主役は実はクリスチーナでした。ダンジョン配信悪役令嬢クリスチーナです。
第一話のシモーヌ語りのパートをこのまま生かすためには各パートごとに視点を切り替えそれぞれの登場人物が担当する語りで進めていく形式になります。
さて、それではクリスチーナがスタンピード対策としてとる妙案を考えてください。突然出て来る何とか装置などというご都合主義以外でお願いします。
どの様な魔物が出てどのような特徴を持つからどのように対処すると良いに違いないというクリスチーナのひらめきです。討伐ではなくさらに地下に引き換えさせるという手段でも良いかと思います。
あわせてシモーヌの婚約破棄からクリスチーナと王子の婚約若しくは結婚で終わる一連の流れを箇条書きに纏めて最終的なプロットの整理をお願いします。
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