まだ、鳥肌が止まりません。
この宇宙を記述するための統一理論の完成。
その人類の見果てぬ夢に魅せられた一人——天野こそ、おそらく筆者自身の深い思索の代弁者なのかもしれません。
本作の魅力は、圧倒的リアリズムに裏打ちされた科学者同士の議論と科学描写のリアリティ。
誤魔化しを感じさせず、ストーリーにも一切の無駄がありません。
扱う理論は高度です。
読者が宇宙論へ向けてきた興味と知識が、総合演習のように試されます。
ですが、その中で沸き起こる確かな知的興奮と陶酔。
それこそが、『ハードSF』というジャンルの醍醐味を思い出させてくれます。
そしてたどり着く結末……。
エピローグの余韻の中で、再びプロローグをひも解くとき、その見事な円環構造にため息が漏れること間違いなし。
作品紹介文のキーワードにわずかにでも反応した方、この壮大な実験の結末をぜひ見届けてください。