第20話:劉備との邂逅、そして共闘の始まり
徐州の地で、呂布は劉備と共に、民衆のための政治と防衛に力を注いでいた。劉備の清廉な人柄と、困っている者を見捨てない「義」の心は、呂布が本当に求めていた「正義」の姿だった。彼女の「希望の星」の瓶は、徐州の民の笑顔が増えるたびに、確実に輝きを増していくように見えた。
徐州は乱世の中にあって、奇跡のような安寧を保っていた。しかし、その平和は、曹操や袁紹といった天下を狙う大勢力にとっては、目障りな存在だった。特に曹操は、董卓を討った呂布の武勇を警戒しつつも、彼女がなぜ劉備のような小勢力と結びついているのか、その真意を探っていた。
ある日、予期せぬ報せが徐州にもたらされた。
「曹操軍が、徐州に迫っております!」
その報に、徐州の城内は騒然となった。曹操の大軍を迎え撃つには、徐州の兵力だけでは心許ない。劉備の顔にも、深い憂いが浮かんだ。
呂布は、劉備の隣に立ち、静かに尋ねた。
「劉備様…どうしますか?」
劉備は、民衆の不安な顔を思い浮かべながら、深く息を吐いた。
「わしは、民を見捨てることはできぬ。たとえ、この命に代えても、徐州を守り抜く所存だ」
劉備の言葉には、迷いなど一片もなかった。彼の瞳の奥に宿る「義」の光は、呂布の心を強く打った。
呂布は、方天画戟を固く握りしめた。
「私も、戦います。劉備様と、この徐州の民のために!」
彼女の言葉に、劉備は驚いたように呂布を見つめた。史実では、この後、呂布が劉備を裏切ることになるが、この「みんなで平和をルート」では、その運命が変わる。呂布の純粋な正義感は、劉備の義に深く共鳴していた。
「呂布殿…」
劉備は、呂布のまっすぐな瞳に、偽りのない決意を見出した。彼は、呂布が董卓のもとで見てきた悲惨な光景や、裏切りの連鎖の中で培われた「誰も悲しませない」という強い願いを理解していた。だからこそ、彼は呂布の言葉を信じた。
「ありがとう、呂布殿! 頼むぞ!」
劉備は、呂布の手を強く握った。その温かさが、呂布の心に確かな絆を感じさせた。
曹操軍が徐州城を包囲し、激しい攻撃が始まった。城壁の上には、呂布と劉備、そして関羽、張飛の姿があった。呂布は、曹操の旗印を見るたびに、虎牢関での曹操の言葉を思い出していた。
「お主のしていることは、正義ではない」
あの時、自分は董卓に騙されていた。だが、今は違う。劉備と共に、民の笑顔のために戦っている。これこそが、真の「正義」だ。
呂布は、方天画戟を振るい、次々と城壁をよじ登ってくる曹操軍の兵士たちを薙ぎ払った。彼女の武勇は、以前にも増して輝きを放っていた。関羽と張飛もまた、劉備を守り、民のために、獅子奮迅の活躍を見せる。
曹操は、城壁の上で共闘する呂布と劉備の姿を遠巻きに見て、眉をひそめていた。
「まさか、あの呂布が、劉備ごときに心酔しているとはな…。見込み違いであったか」
彼は、呂布の力を「道具」としてしか見ていなかったが、呂布はすでにその段階を超え、自らの意志で戦う「英雄」へと成長していたのだ。
徐州の戦いは熾烈を極めた。曹操軍の猛攻に、徐州軍は次第に疲弊していく。しかし、呂布と劉備は、互いの背中を預け、固い絆で結ばれていた。彼らは、決して諦めなかった。この徐州を、そしてここに暮らす民の笑顔を、守り抜くために。
この戦いは、呂布と劉備、そして彼らの仲間たちが、乱世の終結と平和を築くための、真の共闘の始まりとなるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます