第7話:虎牢関の戦い
反董卓連合軍が結成され、その勢いは日増しに強くなっていた。彼らは洛陽を目指し、その途上にある戦略的要衝、虎牢関(ころうかん)へと迫っていた。董卓は、この虎牢関で連合軍を迎え撃つことを決断。そして、その最前線に、呂布を配置した。
虎牢関は、険しい山々に囲まれた天然の要塞だった。その門は堅固に閉ざされ、董卓軍の兵士たちが厳重に守りを固めている。呂布は、城壁の上から眼下に広がる連合軍の布陣を眺めていた。旗が林立し、兵士たちが蟻のように蠢いている。その数に、呂布は思わず息をのんだ。
「呂布殿、ご武運を!」
華雄が、呂布の隣で力強く声をかけた。彼の顔には、戦への高揚と、呂布への絶対的な信頼が浮かんでいる。李儒は冷静に戦況を見守り、李粛はどこか不安げな表情で空を見上げていた。彼らの視線が、呂布の小さな背中に集まる。
「私が…みんなを守る!」
呂布は方天画戟を固く握りしめ、心の中でそう誓った。董卓の言葉を信じ、この戦いが平和への道だと、自分に言い聞かせた。
やがて、連合軍の攻撃が始まった。先鋒を務めるのは、各地の猛将たちだ。彼らは虎牢関の堅固な守りに挑み、次々と門に迫ってくる。董布は、城門が開かれると同時に、雷鳴のような咆哮と共に連合軍の中へと飛び込んでいった。
「邪魔だっ!」
呂布の放つ一撃は、まさしく嵐のようだった。方天画戟が唸りを上げ、敵兵をまとめて薙ぎ払う。その動きは、もはや人間の域を超えていた。一騎当千の猛将たちが、次々と呂布の前に倒れていく。
「な、なんだあれは!?」「鬼神だ!」「撤退しろ!」
連合軍の兵士たちは、呂布の圧倒的な武力に恐れおののいた。彼らは、呂布の幼い姿からは想像もつかない、まさしく「鬼神」の如き戦いぶりに、戦意を喪失していく。呂布は、ただひたすらに槍を振るった。目の前の敵を倒すことだけを考えた。
しかし、戦いが進むにつれて、呂布の心に再び、あの違和感が芽生え始める。倒した兵士たちの顔には、恐怖と苦痛が刻まれている。彼らは、董卓が言うような「天下を乱す愚か者」なのだろうか? 彼らにも、守りたい家族や故郷があるのではないか?
呂布の脳裏に、洛陽で出会った献帝の悲しい瞳がよぎった。そして、故郷の村人たちの笑顔も。
「本当に、この戦いは正しいのかな…?」
呂布の心は、葛藤で満たされていく。彼女の槍の動きが、ほんのわずかに鈍った。その隙を見逃さず、連合軍の猛将が呂布に襲いかかる。
「呂布殿、危ない!」
華雄の声が響く。呂布は間一髪で攻撃をかわしたが、その心は揺れ動いていた。この戦いは、本当に「正義」なのだろうか? 誰かの笑顔のために戦っているはずなのに、なぜこれほどまでに、悲しみが生まれるのだろう。
虎牢関の戦いは、呂布の圧倒的な活躍により、董卓軍の勝利に終わった。連合軍は一時撤退を余儀なくされた。しかし、呂布の心には、勝利の喜びよりも、深い疑問と戸惑いが残っていた。彼女の「正義」は、今、大きな試練に直面していた。
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