幼女呂布無双 ―正義感とまっすぐな心の幼女の物語【現在:史実ルート】―
五平
第一部:幼き鬼神、動乱の入り口
第1話:辺境の村と小さな英雄
五原郡の小さな村、秋風がふわふわと吹く、やわらかな黄昏時。呂布は、村はずれの小川で、小さなあんよをちゃぷちゃぷさせて水遊びに夢中だった。まだ八つの幼い体は、川の流れに揺れる小枝のようにはかなげで、見ているだけで守ってあげたくなるほど。きらきら光る銀色の髪は、夕日に透けて、まるで小さな天使の輪っかみたい。大きなまんまるお目々は、きょとん、と不思議そうに水面をのぞいて、その好奇心いっぱいの輝きは、星のかけらのようだった。村の皆は呂布を「神童ちゃん」と呼んだ。彼女は生まれつき体がとーっても丈夫で、なんでもすぐに覚えちゃう天才さん。特に武術は、村で一番強い猟師のおじいちゃんも「まいった!」ってうなるほどだったの。
呂布のぷにぷにの首には、古い革紐に通された、お気に入りの小さな硝子瓶がちょこんとぶら下がっていた。瓶の中には、キラキラと輝く星の砂が、たった一つだけ、大切そうに入っている。それは、村の古老が、にこにこ顔で教えてくれた「星集めの願い」の、とっておきの証だ。
「この世のどこかに、ちっちゃな光の粒みたいな『希望の星』が、三百個も散らばっているんだよ。それをぜーんぶ集めることができたらね、どんなに大きな願いでも、きっと叶うんだって!でもね、集められるのは、おめめがキラキラしてる、とっても純粋な心の持ち主さんだけなんだ。その星はね、呂布ちゃんが誰かを助けてあげて、その人の心がほわっと明るくなった時に現れるんだよ。まるで『カクヨム』っていう、すっごく遠い場所で、お話に感動した人が、ぱちぱちって拍手しながら贈ってくれる星みたいに、どんどん増えていくんだってさ!」
そう古老は、優しく、でもちょっぴり神秘的に語ってくれた。呂布の願いは、たった一つだけ。
「みんながね、ずーっとにこにこ笑顔でいられますように!」
そのキラキラの願いを叶えるため、彼女はいつか三百個の星を、ぜーんぶ集めることを幼い心にぎゅっと誓っていた。その真っ白で純粋な願いが、愛らしい呂布の瞳の奥で、小さく、でも確かに、きらきらと輝きを放っていた。
「呂布ちゃん、もうそろそろお家に戻りなさい。お母さんが心配してるわよぉ」
村の優しいお姉さんが、ふんわりと声をかける。呂布はにこーっと満面の笑みで、小川からよちよちと上がった。濡れたあんよで土を踏みしめるたび、柔らかな土の感触がくすぐったくて、思わずくすくす笑っちゃう。彼女は知っていた。この村がね、呂布にとって、だーいじな、だーいじな場所だってこと。そして、この村を守ることが、?布の真っ白な「正義」なんだって。幼いながらも、その心は真っ直ぐに、ひたむきに、その一点だけを見つめていた。
その日の夜、村はなんだか変な、しーんと静かな空気でいっぱいだった。いつもなら聞こえるはずの虫さんたちの歌声が、一つもしない。呂布は、お布団の中で、そーっとお目々を開けた。胸の中に、なんだかそわそわするような、いやーなざわめきが広がっていく。
「…ん? どうしたの?」
幼い呂布の頭の奥に、ピンとした、不穏な空気が張り詰めた。お外からは、かすかに土煙が舞う、ごそごそした音が聞こえる。
それは、遠くから、どんどん近づいてくるお馬さんの足音だ。たくさん、たくさん、数えきれないくらいのお馬さんの足音。
「馬賊だぁっ!」「村が襲われるぞぉ!」
突如、村中に男の人たちの、こわーい叫び声が響き渡った。呂布は、びっくりして飛び起きた。胸のざわめきが、ぶわーっと、確かな「怒り」へと変わっていく。だーいじな村が、わけもわからず襲われてる! そのひどい出来事が、呂布のちっちゃな心に、大きな、大きな波紋を広げた。
呂布は、お父さんがだーいじにしてた槍を、よちよちと持ち上げた。それは、呂布の背よりもずーっと長い、大きな槍だった。でもね、不思議と重たくないの。まるで、呂布の体の一部みたいに、手にぴったんこ。
「呂布が…呂布が守る!」
迷いはどこにもなかった。この村を守るっていう、呂布のキラキラ「正義」が、そのちっちゃな体を、ぶわーって突き動かしていた。
馬賊たちは、村の入り口をガッシャーンって壊して、お家にお火事をつけ始めた。泥棒したり、意地悪したり、みんなを悲しませることを、いーっぱいしてる。村の人たちの悲鳴が、夜のお空にひびきわたった。
「やだぁ、こんなのってないよぉ…!」
村の男の人たちが、一生懸命がんばるけど、馬賊さんたちが多すぎて、全然かなわない。もうダメだぁって、村中が悲しい気持ちでいっぱいになったその時、呂布が馬賊さんたちの前に、ぴょこっと飛び出した。
「そこ、うごいちゃダメぇ!」
ちっちゃな声が、ぴーんと響き渡る。馬賊さんたちは、一瞬、ぴたっと動きを止めた。目の前に立ってるのは、たった一人の、ちっちゃな女の子。馬賊さんたちは、ニヤニヤって意地悪く笑った。
「なんだ、このガキは? 遊びでもしてるつもりか、あ?」
馬賊の一人が、ヘラヘラ笑いながら呂布に近づいてくる。でもね、呂布のお目々は、その馬賊さんをじーっと見つめてる。怒りの気持ちと、でもね、静かに決めた気持ちがいっぱい詰まった、キラキラのお目々だった。
呂布は、手に持ってる槍を、ゆっくりと構えた。次の瞬間、呂布の体が、まるで別の人みたいに、シュバッと変わった。その動きは、見ている人みんなを、びっくりさせちゃうほどだった。
「ぐあぁっ!」
呂布の槍が、ひゅんって一回光った。ぴったんこ正確な突きが、馬賊さんの体をブスッて貫いた。続けてもう一回、別の馬賊さんがビューンって飛んでった。呂布の動きは、ちっちゃな体からは想像もつかないくらい、強い力と速さで、あっという間だった。まるで、村にいる、ずーっと昔からのみんなを守ってくれる神様が、呂布の体に入ったみたいに。
馬賊さんたちは、どんどん顔が青ざめていく。笑い声はもう聞こえなくて、こわい気持ちがその場をいっぱいにした。「お、鬼神だ…!」「あの娘は、お化けだぁ!」こわくてたまらなくなった馬賊さんたちは、次々と逃げ出した。呂布は、馬賊さんたちが全然見えなくなるまで、その場にじーっと立っていた。
夜が明ける頃、村は静かになった。燃えちゃったお家も、壊れたものも、いっぱいあった。でもね、村の人たちの命は、守られたんだ。呂布は、その場にペタッと座り込んだ。体中の力が抜けちゃって、槍が手からぽろっと落ちちゃった。
「呂布ちゃん…大丈夫?」
村のお姉さんが、心配そうに呂布のそばにかけ寄ってきた。呂布は、ゆっくりと顔を上げた。そのお目々には、ちっちゃな、ちっちゃな涙がいっぱい浮かんでた。
「うん…だいじょうぶ、だよぉ」
村の人たちは、呂布の周りに集まって、口々に「ありがとう」って言ってくれた。そして、そのお目々が、呂布が首に下げている硝子瓶に、キラッと集まった。
瓶の中の星の砂が、さっきよりもぎゅーっと輝きを増して、まるで新しい星が、きゅるるんって一つ増えたみたいに見えた。それは、呂布の「正義」が、確かに希望の星に触れて、誰かの心に、ぽわんと光を灯した証だった。
ちっちゃな英雄さんは、その夜、本当に村を救ったんだ。そしてね、このちっちゃな村で起こった出来事は、やがてずーっと遠い洛陽まで、お話になって伝わっていくことになるんだよ。大変な世の中が、今、始まる鐘を鳴らしたんだ。
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