裸体の惑星【1分間小説】

楠本恵士

第1話・ねーちゃん……全裸だよ

 オレのねーちゃんが、全裸で風呂場から出てきた。

「ふうっ、いいお湯だった」

 真っ裸のねーちゃんは、冷えた飲み物をソファに寝っ転がって飲んでいる。

 高校生のオレが目のやり場に困っていると、ねーちゃんが言った。

「なにか用?」

「あのぅ……ねーちゃん、裸」

「それが、何か?」

 ねーちゃんは、裸でいるコトを恥ずかしいとは思っていないようだった。


 次の日も、その次の日もねーちゃんは風呂から出ると平然とスッポンポンで、家の中を歩き回った。

(ねーちゃん……やっぱり変だよ、どうしちゃったんだよ)

 やがて、ねーちゃんは学校から帰ってくるなり玄関で脱衣をして、素っ裸になるコトが多くなった。

「ただいまぁ……さてと脱ぐか」


 制服のリボンを緩めて上着を脱いで、スカートのファスナーを下げて。

 白いブラウスのボタンを外していく……ねーちゃんは、オレが見ている前で下着姿になった。

 そして、後ろ手にブラジャーのホックを外すとブラを脱ぎ捨てて、躊躇ちゅうちょするコトなく生乳を弟のオレの前で晒すと。

 腰を屈めて、パンツの端に指を掛けてスルッと膝下までパンツを下げてしまった。


 ねーちゃんは、玄関で弟のオレに向って、ストリップショーをしてしまった。

 全裸になったねーちゃんは、平然と階段を上がりながらオレに向って。

「脱いだモノはお風呂場に置いておいて……後で洗濯するから」

 そう言って、自分の部屋に入った。

 オレは何がなんだかわからないまま、露出狂になってしまった姉の、階段を上がる白いヒップを思い出した。


 ◆◆◆◆◆◆


 夕食の時に、ねーちゃんだけが裸で食事をしていても家族は誰も何も言わなかった。

 そして奇行はねーちゃんだけにとどまらなかった、両親も家の中では裸族で過ごすようになった。

 家に帰ってくると脱衣して、股間丸出しの格好でうろつくのが、オレを除いた家族の当たり前になっていた。


(どうしちまったんだよ……オレの家族)

 そして、事態はさらに悪化した。

「行ってきまーす」

 ねーちゃんが、通学カバンを持ったまま、ソックスとスニーカーだけの裸体で、玄関から外に出ていくのをオレは見た。


 さすがにオレは慌てて、ねーちゃんの後を追って玄関を出る。

「ねーちゃん、服、服!」

 アパートの玄関から、外に出たオレは自分の目を疑った。

 外を裸の人々が歩いていた……子供も老人も男も女も……全員が裸だった。

「……」

 オレはなんとなく、自分だけが着衣しているのが恥しくなって……その場で脱いで裸になった。

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