第29話 王都へ 7

 「ごめんなさい。」

 起きると、すぐに、カレンに、謝る翔太。

 背負い袋を前後ろ反対につけていることから、格好は少し変だが見えているわけではない為、翔太は、ブラックを抱いて、それなりにカレンの近くまで来ていた。

 「一応、肩を揺すってくれれば、て、なってたと思うけど、何でブラックに?」

 タイミングが抜けている為、確認口調になっているカレン。

 翔太は、少し赤くなりながら俯く。

 「えっと、そのーー。」

 翔太としても、多少は、そのくらいのこと、と、思っているの為、言いにくい。

 「ショウタ、とりあえず、言ってくれた方が助かるわ。」

 準備を終えたセレアが、近くに来ていた。

 翔太は、覚悟を決めた。

 「そのーー。直接、肩に触っていいかわからなくて、、、。」

 「は?」

 翔太が、俯きながら話し出したその内容に、カレンは、セレアを見た。

 「え?」

 セレアは、カレンを見た。

 セレアは、肩がある半袖の上着を着ていて、それに、革の鎧を着ている。

 カレンは、肩がない、上着と、一体型の革の鎧だ。

 「「あ。」」

 セレアとカレンは、額に手を当てた。

 「でも、、ブラックだけに頼んだら、また、騒ぎになりそうだったから、考えて、、。」

 二人の様子に、翔太は全く気が付かず、語る。

 「その、、、。肩にブラックをのせたらどうかなって。」

 「で、ブラックをあたしの肩にのせようとした時に?」

 翔太の語りに続けるカレン。

 「うん。」

 二人は、盛大にため息をついた。

 「まぁ、ショウタだから、、、。」

 「そ、そうか、別に、肩ぐらい直接でかまわないからさ、次はブラックに頼まないでくれると助かるな。」

 「うん。頑張る。」

 苦笑で二人が答え、カレンが、向きを変えた。

 「行くか。」

 「そうね。」

 セレアも向きを変え、二人が歩き始め、翔太も、

 「おっと。もう一つあった。」

 カレンが、後ろを向いて手招き。

 翔太が足を速めて追いつくと、カレンが場所をあけたため、翔太は、セレアとカレンの間に並んだ。


 突然。


 「で。」


 翔太の肩に、カレンが手を置き、


 「えっ?」


 驚く翔太が、カレンを見る。


 「なに驚いてるんだ、どうだ、このくらい平気だろ。」


 ぺしぺし、と、人の悪い笑みで、翔太の肩を叩くカレン。


 「えっ、えーーーっ、と。」 


 耐性ゼロの翔太が、赤くなって目線を離し、セレアは、我、関知せず、を決め、森の方へ目線を走らせる。


 その時。


 カレンが、翔太の耳元に顔を近づけた。


 見なくても、耳にかかる息で、近くにあるのがわかる。


 全身が軋む音がする程に、力の入る翔太。


 「どのくらい見た?」


 瞬間。


 夜のことが翔太にフラシュバック。


 翔太にしてみれば、思い出すだけでいっぱいいっぱいだ。 


 膝の力が抜け、くたくたに倒れそうになって、


 「あっ。あれは。あれは、その、あれは。」


 頭に湯気を上げながら、思考が半壊した。


 「安心しな。どのくらいかは、わかってるぞ。」


 ニヤニヤしているカレンが、先に答えを言ってくる。


 その声に、翔太の、思い出す以降、進まない思考のループが何とか停止し。


 「ごめんなさい。」


 「別に、謝る必要はないぞ、ただ、流石にただ見はまずいからな、ちょっと頼みたいんだ。」


 ちょっと身構える翔太。


 「その、できることなら、いいんだけど、、、。」


 まだ、夜の景色が頭に残っている翔太は、まともにカレンを見れない。


 そこを。


 カレンが覗き込んだ。


 いきなり、カレンの整った顔が視界に侵入し、翔太の思考が飛び上がりそうになる。


 が。


 「ブラックってさぁ、ブレスが吐けるんだろ、セレアが言ってた。一回、頼めないか?」


 「あっ!」


 翔太は、声を上げたセレアに向いた。


 「ん、と。」


 何故か、向こうを向いているセレア。


 翔太は、どうしていいかわからず、カレンの方へ目を送る。


 微笑むカレン。


 刺さりすぎて、焦って、また、セレアを見る翔太。


 気配でわかったのか、ため息をつきながら翔太に顔を向けるセレア。


 少しおどけた可愛い顔で、小さく舌を出した。


 「ごめん。流れで思わず言っちゃった。」


 二発目も刺さりすぎた翔太。


 ふらふらと足元が怪しくなるところに、セレアが、肩を叩いた。


 「まっ、彼女なら大丈夫だから。」


 「あっ。うん。」


 ー 自分で判断しろっ、てことだよね。 ー 


 翔太は、自分で決断すると、カレンを見た。

 「頼めるか?」

 「うん。ちょっと待って。」

 抱いているブラックを見ると、丁度、大きく欠伸をしている。

 「ブラック、ちょっといい?」

 ブラックの、まん丸な目が翔太をとらえた。

 「ブラックが、火を吐くところを、カレンが見たいらしいんだけど、いい?」

 自分を見上げているブラックの目が、なんとなく、了解してくれた気がして、翔太は、顔を上げた。

 「いいみたい。」

 「おっ、ほんとか、頼んだ。」

 「うん。」

 翔太は、ブラックを、前足の脇に手を入れ、胸の前に持ってくる。

 なんとなく、一呼吸して、

 「ブラック、火。」


 「ぼーーーー。」


 「おおぉぉ。」

 カレンが、感嘆の声を上げ、セレアが、残念そうにため息をついていた。

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