第6話 武器

「ところでトム、一旦お互いの荷物を改めようじゃないか、ここから先何があるかわからん、武器となりそうなものがあったら分け合おう」

「おう……」


俺たちはお互いにカバンの中身をすべて出した

俺の荷物は、会社の書類、ペン、パソコン、会社用携帯、ライター

社長さんは日傘、ヘアスプレー、催涙スプレー、スタンガン、携帯が複数台……。


「なぁ、社長さん」

「なんだ?」

「あんた、持ち物が物騒すぎるんだが?」

「あぁ、これもアメリカ生活の時の癖でな、私が住んでいたところは比較的治安が悪いところが近かったもんで、護身用にな」

「っと言ってもよ、これ日本じゃほとんど凶器だぞ……職質されたら終わりじゃねぇか」


でもまぁ、社長の見た目的に職質はされないだろうな……いや、見た目がアレだから違う意味で職質を……。


「おいトム、お前失礼なこと考えてないか?」

「へ!? いや!?」

「おい! 明らかに動揺してるじゃないか!」


やべ、バレた


「……まぁいい、ところでお前、ライター持ってるようだな」

「あぁ、俺自身タバコは吸わねぇけど、付き合いで喫煙所はいることが多くてよ」

「なるほどな、それにしちゃ、良いライター持ってるな、Zippuのライターじゃないか」

「あんま安物使うとすぐダメになるからよ、良いもの持っといたほうがいいかなって」


このライター自体1万円くらいはしたな、これでも安物ライターを何度も買い足すよりかは安上がりだと思って買ったのだが……今になって思えば、オイル交換とかでそれはそれで金を使うからどっこいどっこいだなとちょっと後悔している。


「そうだな……トム、お前このヘアスプレーと催涙スプレーを使え」

「はぁ? 催涙スプレーは分かるがヘアスプレーなんてどうすんだよ、ここで髪型キメても見る奴はあんたぐらい……」

「馬鹿か、こうするんだ」


そういうと社長さんは、ライターに火を点け、その火に向けてヘアスプレーを噴射した。

するとあら不思議、見た目を整えるためのスプレーが火炎放射器に早変わりになった。


「なるほど、こんな使い方が……」

「さ、そうと決まれば持っておけ」

「あぁ、だがあんたはどうするんだよ」

「私にはこれがある」


そう言うと社長さんは持っていた日傘で構えだした。

颯爽と振り回したかと思えば、傘の先端を斜め上に上げ、腰を落として静止した

この型は……。


「……こう見えて私はアメリカにいたころ、フェンシングで州大会優勝経験があるんだ、ついた異名は小さなスズメバチ……『スモール・ホーネット』ってな」

「へぇ、なんかダサ……ッ!?」


なんかダサい、そう言おうと思ったが、社長さんが強烈な殺気を放ったので慌てて口を塞いだ。

あぶねぇあぶねぇ、あとちょっとで串刺しになるところだった。

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