第5話 社長
「疲れた……なんとかなった……」
俺はその場に座り込んだ。
すると、少女が俺の目の前で仁王立ちしてきた。
「お前、地下鉄にいた奴か?」
少女はまるで己が女王であるかのように質問してきた。
なんだこいつ、随分偉そうなガキだな。
まぁ、ここは大人の対応を……。
「あぁ、そうだよ、お嬢ちゃん、ここは危ないからおじさんと……」
「馬鹿、私は今年で28だ、勘違いするな小僧」
……なんと、俺より年上だった、俺を小僧扱いするとは。
「……まぁいい、ここで会ったのもなんかの縁だ、一緒に出よう、お前、名前は?」
「え? あ、あぁ、俺? えっと……常盤為朝だけど……あんたは?」
「私か、ま、こういう者だ」
少女……じゃない、お姉さんは、徐に名刺を取り出した。
ちゃんと両手で差し出してくる……ビジネスマナーもばっちりなようだ、俺よりしっかりしてる。
俺は礼儀に従い、両手で受け取った。
「zAI社代表取締役社長……
「あぁ、そうだ、まぁ社長と言っても会社を作ったのはつい最近だがな」
「そうなんだ……じゃあ社長さんで」
「よろしくな、そうだなぁ……お前は為朝だから、トムって呼んでいいか?」
「トム?」
俺はそんなスタントマン無しでアクションこなす俳優ほど体力無いんだが?
「アメリカでの生活が長くてこっちの名前が呼びづらいんだ、いいだろ?」
「あぁ、まぁいいけど……」
「じゃ、よろしくな、トム」
こうして俺は、なし崩し的にトムとなってしまった。
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