三面記事にもならない事件簿01 生活保護の闇

第02話 田中コウイチ１

薄暗い午後の光が差し込む、古びたアパートの一室。年季の入った家具が並びながらも、きちんと片づけられたその場所で、田中コウイチは市役所の男性職員と向かい合っていました。彼の顔には疲労と不安が色濃く浮かび、その言葉は重く、そして弱々しく響きます。

コウイチ：

「もう、毎日が辛くて……このまま生きていても、何も変わらない気がするんです。いくら一生懸命働いても、生活は苦しいままで。腰の痛みもひどくなるばかりで、仕事もだんだん減ってきてしまって……。借金こそありませんが、将来に対する不安しかなくて。どうか、何とかしてください、お願いします……。」

コウイチの絞り出すような声は、途中で途切れてしまいそうでした。男性職員は、その言葉を静かに受け止めます。

男性職員：

「田中さん、それは誰にでも感じることがある気持ちですよ。まずは、少しずつでも、ご自身の生活を見直してみるのはいかがでしょうか？」

男性職員の言葉は穏やかでしたが、コウイチの心には届かないようでした。彼の表情は、さらに絶望の色を深めます。

コウイチ：

「どんなに見直しても、何も変わらない。変わらないんです……！周りの人はみんな楽しそうに見えるのに、俺だけが取り残されているような気がして……。何か、何かが俺を狙っているんじゃないかって、そんなふうに思えて仕方ないんです……。」

彼の視線は宙をさまよい、まるで何かに怯えているかのようでした。男性職員は、コウイチの焦燥感に寄り添うように、ゆっくりと言葉を選びます。

男性職員：

「田中さん、落ち着いてください。何か、具体的なことがあったのですか？」

コウイチは、ふと何かを思い出したように、顔を上げました。その瞳には、恐怖と混乱が入り混じっています。

コウイチ：

「最近、ニュースで見た奇妙な事件……それが、頭から離れなくて。まるで、俺の今の生活が、その事件の一部になってしまったような……。あれは、確か……誰かが行方不明になったっていう話でした。最後に目撃されたのも、ここからすぐ近くの公園だったんです。」

男性職員はメモを取りながら、コウイチの話に耳を傾けます。

男性職員：

「行方不明の事件ですか？それは大変ですね。ですが、そういったことは残念ながら日常的に起こりうることですし、特に田中さんが直接関与されているわけではないでしょう？」

男性職員の言葉にも、コウイチの不安は消えません。彼は顔を覆うように手をこすり合わせました。

コウイチ：

「でも、あの公園には散歩でちょくちょく行っていたんですよ。そこで何かが起きたんじゃないかって思うと、背筋が寒くなるんです。俺も、ああいう目に遭うんじゃないかって……そう考えると、夜も眠れなくて……。」

彼の声は震え、その目には涙が浮かんでいるようでした。男性職員は、慎重に言葉を選びます。

男性職員：

「それは、確かに不安になる要素ですね。ただ、過度に心配しすぎるのは心身によくありません。もし何か具体的な情報があれば、警察に相談することもできますが……。」

男性職員はそう言って、コウイチの様子をじっと見つめました。彼の表情からは、抱える深い孤独と恐怖が、ひしひしと伝わってくるかのようでした。