無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!

ギトギトアブラーン

第1章 冒険者認定試験編

第1話 私!フォルティナ・ロックス!

 大陸歴1684年

 大陸各地に【魔気】と呼ばれるエネルギーが湧き出し、人類はそれを利用して生活を営んでいた。



 【魔気】はさまざまな魔法を発生させることができた。開拓時代、【魔気】を操れるのは魔法使いだけだったが……時代が進むにつれ、魔端末(R.O.D)と呼ばれる現代の魔法の杖が一般に普及し、魔法はより身近な存在となった。



 同時に【魔気】の研究も進み、魔具と呼ばれる道具が生まれ、人々はより快適な生活を手に入れた。



 【魔気】の湧出量によって地域ごとに発展の差が生まれ、田舎ほど時代に遅れが見られる傾向にある。



 【魔気】の採掘量が多い北のエルドルド帝国、西のサンクタマリア王国、東のアルジャイナ連邦共和国という三つの大国によって、大陸は分断されていた。



 そして――

 アルジャイナ連邦共和国の西に位置する、時代に取り残されたマインツ村に住む田舎娘、フォルティナ・ロックスは、とある理由から冒険者に憧れ、冒険者協会のある街――ラングを目指していた!



「うーん……迷っちゃった……」



 共和国の西、小さな森の中で、冒険者らしい服を着た栗色の髪にゴールデンのポニーテールの少女が、パンパンに詰め込まれたリュックと斧を背負い、


 険しい表情で地図を上下にひっくり返したり角度を変えてみたりして、進むべき方向を模索していた。



「さっきの街とラングの間にある森を真っ直ぐ突っ切れば、食料とか節約できると思ったのがダメだったのかな〜?」


「きっとそうよ! さっきの街で地図を買ったときにお店の人から『小さな森だからって突っ切ろうなんて思うなよ!』って注意されたのに……。

 近道だし、お金ももったいないし……まぁ大丈夫でしょ! って思っちゃったのがいけなかったんだわ……はぁ……」



 寂しさを紛らわせるように、全身を使って自問自答したり、地図を売った店員の声真似をしたりしながら、一人寂しく反省会をしている。



「ダメダメ! フォルティナ・ロックス! あんたはやればできる子なんだから! くよくよしてちゃダメよ!」



 顔をブンブンと振り、ほっぺたをパンパンと叩きながら、独り言を続ける。



 自分でも独り言が多いと思う……。そんな寂しげな独り言を話しながら、フォルティナ・ロックスは背負っていたリュックからコンパスを取り出し、方角を確かめた。



 だが……そのコンパスの針はぐるぐると回り続け、北を正しく指し示すことはなかった。壊れているのである。



 しかし、フォルティナはそんなコンパスに対して――



「さぁ〜? コンパスさん! 今こそ進むべき方向を指し示すときよ!」



 まるでこの壊れたコンパスが正しい方向を教えてくれるかのような、自信に満ちた顔を浮かべる。



 コンパスはぐるぐると回り、東? の方角を指した。



「こっちね! ふふん! じゃんじゃん進むわよ〜!」



 調子を取り戻したフォルティナは、リュックを背負い直し、コンパスを信じて森を突き進む。



 目指すは、冒険者協会がある街――ラング!



 冒険者とは――


 未知の探究、前人未踏の大地の探索、魔獣討伐、そして様々な人からの依頼を生業とする職業である。



 冒険者協会は大陸各地の一定の街に点在しており、フォルティナが目指すラングもその一つだ。



 なぜ冒険者を目指すのか?


 フォルティナはかつて、とある冒険者に助けられたことがあった。その人から聞いた冒険の数々、人助けの話――それに強い憧れを抱いたのだ。



「絶対に冒険者になって、あのおじさんが言ってた世界を見たり、誰も行ったことのない場所を目指すんだから!」



 森を歩きながら、子供のころの思い出……とても大切で、宝物のような記憶を思い出しながら、少女はまっすぐ突き進む。

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