第11話「宅コス練習会、地獄の二重迷走」

ある休日、まどかさんが提案してきた。


「うちら、イベントはいい感じだったけど、宅コスは壊滅的じゃん?

 一緒に練習すれば迷走が半分になるんじゃない?」


「なるほど!」

(※実際は迷走が2倍になった)





会場はすみれのアパート。

狭い部屋にミシン、ウィッグスタンド、100均のメイク道具、Amazonの謎コスチュームが所狭しと並ぶ。

すでに空気がカオス。





第一の惨事:ウィッグ大戦争


まどかがアイロンで前髪を整えようとした瞬間、

ジジジジジ……煙が出た。


「ぎゃー!ウィッグ焦げた!」

「……その匂い、焼きそば?」


結果、部屋の中に“お祭り屋台”みたいな香りが充満。





第二の惨事:メイク暴走


すみれは「強い女」を目指してアイシャドウを塗りすぎ、

目の周りが戦国時代の甲冑みたいなデザインに。


まどかはチークを入れすぎて、

顔が昭和の演歌歌手ジャケット写真みたいになった。


お互いを見た瞬間、爆笑。





第三の惨事:撮影カオス


スマホを三脚に立ててセルフタイマー。

ポーズを決めたけど――

後ろに積んだ洗濯物や、

倒れたウィッグスタンド(無残に焦げたやつ)が映り込み、

どう見ても「怪しい呪術儀式」の現場写真になった。





でも。

爆笑して、撮り直して、また爆笑して。

その時間は、思いがけず楽しかった。


「宅コスって、失敗しても一緒にやると最高に面白いね」

まどかさんの言葉に、すみれも頷いた。


迷走も半分じゃなくて2倍になったけど、

笑いも2倍になった。





そして夜。

二人で撮ったカオス写真を見返しながら、

「これ……出す?」

「いや出さないでしょ」

「……でも出したら、またバズるかも」


二人は顔を見合わせて、ニヤリと笑った。







つづく





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る