『青春コンプレックスだったけど、今さら青春して何が悪い』
べすこ
第1話「青春、手当たり次第に着てみた」
中学の卒業アルバム、みんなが制服で写ってる中で
私だけセーラージャケット(PUTUMAYO)着て写ってる。
母に「一応制服でも撮っといたら?」って言われたけど、
「いや、これは私の正装なんで」って跳ね返した。
今思えば、跳ね返さなくてよかったと思ってる。
私は、桜井すみれ(39)。
サブカル風味の残りカスを舐めながら生きる派遣社員。
コスプレしたい。……いや、していいのか?
って考えながら、気づけば10年経った。おはようございます。
高校時代、系統のことはよくわかってなかった。
でも“人と違う私”になりたくて、とにかくいろいろ着た。
PUTUMAYOのセーラージャケット(ウールで夏は拷問)
あしながおじさんの厚底おでこ靴(つま先に5回は流血)
NAOTOのパンクチョーカー(片耳だけピアス空いてない)
フリルシャツ(ばーちゃんに代官山で買ってもらった奇跡)
黒ジャケット&黒ネイル&……なぜかジーパン(台無し)
ジャンルは?って聞かれると、
「いまの私は、何系ですかね……?」ってフリーズするやつ。
19歳のとき、オカダヤで買ったオレンジのウィッグを試着して
「すごーい!似合う~!!」って友達(当時)に言われて、
そのあと彼女がトイレで誰かに**「あれ、痛くね?」って言ってるの聞いて、
ウィッグそっと元に戻して、パンケーキだけ食べて帰った。
あれからもう20年近く経ったけど、
私の“変身願望”だけはまだ死んでなかったらしい。
ここ数年、またPinterestを夜中に巡回する日々。
「宅コス」「自作メイク」「アラフォー レイヤー 限界」
検索履歴が情緒ジェットコースター。
「どうせやる勇気なんてないんでしょ」って
自分の中の“冷笑モード”の私が毎晩煽ってくる。
でも、ある日ふと思った。
「いや、じゃあこのまま死ぬのか?」って。
セーラージャケットも、パンクチョーカーも、
あの時の痛かったウィッグも、
全部「好きだった」ってことだけは事実だった。
中途半端でも、わかってなくても、
それでも好きだったんだよ。私なりに。
だから、今日私は――
変身メイクサロンの予約ボタンを押した。
ええ、ポチりましたとも。
派遣の月給が減るのも覚悟の上で。
39歳、セーラー服は似合わなくなったけど、
“好きな私”になることは、まだできると思う。
だって、まだ生きてるから。
もう一回くらい、自分に夢見たってええやん?
続く
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