AIと一緒に転生したら、チートの選び方から間違えなかった件〜最適進化で最終的にラスボスも神も一掃〜

栗田雅樹

第一章 異世界最適化と絆の構築、開始します

第1話 あなたに最適なチート、診断します

気がつくと、白い空間にいた。


天井も壁もない。床らしきものの上に立ってるけど、どこまで行っても真っ白な霧だらけ。

……死んだのか、俺。


ショッピングモールの階段を踏み外した記憶はある。買ったばかりの新刊ラノベが空に舞い、俺は頭から落ちて——


白い霧が少しずつ晴れていくと、その向こうに女性の姿が見えた。光でできたような体で、人間っぽいが、どこか現実味がない。


「ようこそ、転生管理センターへ」


「あなたの魂は死亡を確認され、異世界転生の対象に選ばれました。おめでとうございます!」

「いや、まあ……死んだのはおめでたくないけど、転生はちょっと嬉しいかも……」


「当センターでは、特別ボーナスとして『転生チートスキル』を1つお選びいただけます」


来た!テンプレ展開!


正直、死んだのはショックだけど、ここまで来たらラノベ読者としてはテンションが上がる。

ステータス最強、チートスキル、ユニークアビリティ——夢が広がるじゃないか!


「ただし、今回は特例として、『補助人格AI』が導入されます」

「えっ、AI? 特例……って、なんで?」


「開発中の新型転生支援プログラムのテストケースとして、あなたが選ばれたためです。どうぞ、呼び出してください。名前はすでに設定されています」

「……わかった。えーっと、起動……『シリウス』?」


《起動完了。転生サポートAI【SIRIUSシリウス】、展開します》


脳内に声が響く。無機質なのに妙に落ち着く声だ。

続いて、視界の端にホログラムのインターフェースが展開される。


《まず確認です。過去に読んだ異世界転生もの、約429タイトル。ゲーム経験、プレイ時間合計約7,100時間。傾向から、あなたは『主人公が理不尽に強くなるタイプ』を好みますね》


「ちょっと待って恥ずかしい」


《大丈夫です。統計上、異世界転生希望者の73.4%が同様の傾向を示しています。安心してよい趣味嗜好の範囲です》


フォローになってない。


《現在、選択可能なチートは7,812種類。おすすめ順に並べ替えます》


ホログラムにズラリとスキル名が並ぶ。


・【神速剣技】

・【無限魔力】

・【転移無効化】

・【天使化】

・【物理法則上書き】

・【概念支配】

……


「おお……どれも強そう」


《ですが、ここで注意点です。例えば『無限魔力』は、『魔力量こそ無限でも、魔法の適性が極端に低く、初級レベルの魔法しか使えない』といった調整が施されていることがあります。つまり、派手な魔法は一生撃てないかもしれません》


「うわ……それはちょっと嫌だな」


《また、『概念支配』はレベル上昇に数百年単位が必要となるバランス調整型。序盤は弱者になります》


「それ、選んでたら詰んでたな……」


《あなたの好み・性格・志向を加味した最適スキルを提案します》


ホログラムに一つのスキル名が浮かんでくる。


【最適進化】


《このスキルは、敵味方のステータス・戦闘傾向・環境条件をリアルタイムで解析し、自動で最も有利な進化・魔法変化を行います》


「進化って……俺が?」


《はい。戦闘状況に応じて、魔法に特化した肉体、物理反射装甲、毒無効、筋肉モリモリ、飛行機構などへ自己最適進化します》


「強すぎないそれ……?」


《あなたの希望、『無双だけど理由が欲しい』『理屈で勝てる主人公が好き』という嗜好に対応しています。説明もしやすく、読者ウケも良好です》


「読者!?」


《これは一種の『物語型転生』です。あなたはこの世界の主役になる存在です》


「……そうか、俺が主役なのか」


転生管理センターの女性が微笑む。


「それでは、スキルと転生先を選択してください。剣と魔法の王道ファンタジー、魔法と機械のスチームパンク、あるいは……」


最適進化のスキルと世界を選ぶと、空間が光に包まれる。まるで自分の身体が粒子になって分解されていくような、不思議な感覚が全身を走る。


こうして俺は、AI付きで異世界へと転生することになった。


《転送プロセス80%完了。異世界への転送はもう少しで完了します——お楽しみください、マスター》


《つづく》

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