【支配者】いじめっ子は意識して、あるいは無意識のうちに何を考えているか
晋子(しんこ)@思想家・哲学者
いじめの支配構造、恐怖によって築かれる偽りの「偉さ」
いじめとは、単なる暴力や嫌がらせではない。それは一種の政治であり、支配であり、恐怖によって構築された一種の権力体系である。いじめっ子は、暴力によって自らの地位を確保しようとする。だがその支配構造は、本物の尊敬や信頼に基づいたものではなく、ひたすらに「恐れ」によって成り立っている。だからこそ、いじめっ子は常に恐怖を撒き散らし続けなければならない。それを止めた瞬間、自らの地位が崩壊することを、誰よりも自覚しているからである。
いじめっ子はこう言うことがある。「俺はお前をいじめることができる。でも、いじめないであげている。だから俺に感謝しろ。俺に従え」。これは、加害者の特権意識が生み出す倒錯した論理だ。本来、人をいじめないことなど当たり前であり、褒められることでも、感謝されることでもない。しかし彼らは、いじめの「可能性」そのものを「善行」に偽装し、感謝と服従を強要する。これは倫理的に最も醜い行為の一つである。
この構図は、暴君が民衆に「粛清しないでおいてやっている」「投獄しないでやっている」と恩を着せる構造と全く同じだ。つまり、いじめっ子とは、学校という小さな社会における独裁者なのである。そして、その独裁体制は「恐怖の演出」によって維持されている。
いじめっ子は、自分の暴力を周囲が恐れている様子を見て、こう考える。「俺は周囲に畏怖されている。つまり俺は偉いんだ」と。しかしそれは大きな勘違いである。人が恐れているのは、彼の人間性や知性ではなく、ただの暴力性と不安定な攻撃性である。尊敬と恐怖を混同し、「人が怯えている=自分は優れている」と錯覚するその精神は、まさに未熟で愚かだ。
このような勘違いは、独裁者やカルト指導者にも見られる。人々が沈黙しているのは賛同しているからではなく、反論すれば報復が来ることを恐れているからだ。いじめっ子もそれと同じで、周囲の沈黙や従順さを「好かれている」と錯覚する。しかしその実態は、誰もが本音では「関わりたくない」「怖いから仕方なく合わせている」と思っているだけなのだ。
そしていじめっ子は、自らの“偉さ”を維持するために、常に誰かを見下し、踏みつけ続けなければならない。なぜなら、自分には尊敬を集める器がなく、暴力でしか自分を保てないからである。いじめをやめた瞬間、自分がただの“何の魅力もない人間”であることが露呈する。それが怖いから、いじめを続ける。支配し続ける。
しかしそれは、実に哀れで情けない姿である。強いふりをしているが、実態は、周囲から恐れられなくなることに怯えている小さな存在だ。周囲に優しくすることもできず、対等な友情を築くこともできず、暴力という手段にすがりつくしかない。自分の無能さと向き合う勇気もなく、自己改善もできず、他者を傷つけることでしか存在を証明できない。いじめっ子とは、そういう哀れな生き物である。
だが、哀れだからといって、同情してはならない。彼らの行っていることは、間違いなく「悪」だからだ。どれだけ幼かろうと、どれだけ事情があろうと、他者を貶めて自分の立場を維持しようとする行為は、断じて許されるものではない。
さらに言えば、いじめっ子が恐怖による支配を強めるほど、その周囲の人間の心は壊れていく。傍観者は無力感と罪悪感に苛まれ、被害者はいのちさえ失いかねない。恐怖で構築された「偉さ」は、周囲の不幸と引き換えに成立している。そしてその不幸のうえに居座る者は、絶対に「偉く」などない。
本当に偉い人間は、人から尊敬されようなどとは思わない。ただ正しく生き、正しく接し、正しい言葉と行動で人を導く。その姿に人は心から敬意を抱く。いじめっ子のように、恐怖で支配し、沈黙を賞賛と誤解し、服従を得意げに受け取る者は、ただの臆病な支配者でしかない。
学校という小さな社会で、いじめっ子は一時的に「権力者」になったように感じるかもしれない。しかし、その地位には本物の価値がなく、恐怖が去った瞬間、誰も味方をしてくれない。だから彼らは、より強く、より残酷にいじめを繰り返す。自らの空虚さを隠すために。
私たちは、このようないじめの構造を明確に「悪」と断じるべきである。哀れでも、事情があっても、間違っているものは間違っている。いじめは暴力であり、支配であり、腐った権力の一種である。容赦や中立は、悪の温床になる。いじめっ子は、恐怖によって「偉いふり」をしているだけの加害者であり、断固として糾弾されるべき存在なのだ。
【支配者】いじめっ子は意識して、あるいは無意識のうちに何を考えているか 晋子(しんこ)@思想家・哲学者 @shinko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます