第3話 八月は気が重い季節
うたごえは意味がわからんと思っていたし、関西合唱団の指導の先生が
厳しい人だったので、なんでこんな古臭い歌歌うのか、合唱団ならもっと楽しいゴスペルみたいな歌を歌いたいといつも思っていた。
八月になると大阪中のあちこちで行われる慰霊祭などに呼ばれるのだ。
一年は授業終わってから、二年は実習地から集合。
まずは式典の挨拶。
神妙にできない私達。実習地に泊まりがけの子と久しぶりに会ったりすれば若いんやしきゃーきゃー言いたくなる。
全然、話なんか聞いてないわけである。
そして登壇。
この日の為にどんだけ練習したか、、。
一年の時に驚いたのは、私達の歌を聴いて泣いている参列者が沢山いたことだった。嬉しいとは違う、何か今まで味わった事の無い感情が襲ってきた。
精霊流しをして、お礼にお菓子の詰め合わせをもらう。
二年になると泣いている参列者は見ないようにした。
そして、終わると松山千春の歌をデッカい声で歌ってゲラゲラ笑いながら帰った。
気持ちがしんどくなるのを避けたかったんやと思う。
寮に帰ってからもお菓子食べながら、慰霊祭の話はしなかった。わざと実習中の失敗とかで笑い合ってた。
この経験は後に私達を真っ二つに分けたと思う。
卒業してからも何かしら活動をづつけていく者と一切、関わりを持たない者に。
もっと言えば、二年のお礼奉公が済んだら病院を辞めてしまった同級生は半分以上いた。
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