第15話 啓導の儀
カミラ姉さんに師事してから二年の月日が経った。俺が7歳でカミラ姉さんが20歳となり、俺の剣技も鋭さが格段に洗練されていた。
「シュッ、ハッ、セイッ、ハァッ、フンッ、タァッ」
「うん、うん、二年前に比べてかなり剣筋が良くなりましたね。ルーク」
「ハァッ……その割には全然余裕そうですけど?」
「私にもそこそこ才能はありますからね。何より、10年という年月の差がありますから」
俺は確実に二年前よりも腕を上げていた。それも比べるまでもないほどに。二年前はほぼ独学で学んでいたのに対し、この二年の間、カミラ姉さんから手ほどきしてもらっているのだから強くなるのも必然っちゃ必然ではあるが。
だが、そんな俺でもまだ一度もカミラ姉さんに一撃を与えられていない。ほんとこの人、人外だわ。どうやって一撃を加えるかのビジョンすら見えてこない。
と、ここで執事長のガラハッドが何かを伝えに来た。
「ルーク様、当主様が書斎にてお呼びでございま……ヒィ…」
「……今、ルークと訓練しているのが見えないのですか?死にたいようですね」
「も、申し訳ございません。カミラ様」
「まあまあ、カミラ姉さん落ち着いて。それで、父上がお呼びに?」
「……は、はい」
「わかった。訓練後だから、湯浴みをしてから伺うと伝えておいてくれ」
「し、承知致しました」
カミラ姉さんは邪魔されたからかガラハッドに睨みを利かせて殺気を放出する。ガラハッド程度なら失神してもおかしくないな、これ。俺でもチビりそうだし……
7歳といえばあれしかないよな?よし。汗を流してから行くとしよう。ずっとこの日を待ちわびてきたのだからな。
「ということで、カミラ姉さん申し訳ありませんが、また明日ご指導をお願いできたらと思います」
「……むぅ、まあ仕方ありませんね。本音としてはもっと続けたかったんですが、また明日、ということで」
◇
「父上、なんの用でしょうか」
俺はサラッと汗を流してから書斎に来ていた。
「うむ。お前ももう7歳だな。カミラとの訓練はどうだ?」
「…そうですね。確実に腕を上げた自信はありますね。まあ、未だにカミラ姉さんには一撃も当てられてませんけど…」
「そうか。まあいい。丁度7歳だからな。恒例に従い、啓導の儀を取り行おうと思う」
よし、よし。来たぞ、この日が。これでこれからは人目に
当然ながら、俺、ルークも天稟を与えられる。それも最強のギフトをな。嗚呼、今から楽しみだなあ。
「期待しているぞ、ルーク」
「ええ、必ずや、期待に応えてみせましょう」
ほうほう。ジークフリートはかなり俺にご執心のようだな。
◇数日後
この日、ゼフィルス家に若い神官がやってきた。今この部屋にいるのは俺だけだ。なぜ俺だけなのかはゼフィルス家の習わしによるものなのだが、想像以上にジークフリートが俺にご執心だったので少し心配だったけど、来なくて一安心だな。
「入れ」
俺が神官を促すと、扉を開けて女性の神官が姿を現す。結構凛々しい感じの美少女って感じだ。
「は、はじめまして。魔導聖院所属のイリーナ・クレストと申します。本日は神官として参りました」
「俺はルーク・フォン・ゼフィルスだ。今日はよろしく頼む」
イリーナは緊張した面持ちで自己紹介をするが、俺は敬語を使うことなく、素っ気なく名乗り返す。相手は魔導聖院、魔法士のエリート中のエリートだが、うちは公爵家だ。立場は比べるまでもない。
それにしても、ここでイリーナが出てくるか。イリーナは原作でも出てくる所謂ネームドキャラだ。
イリーナ・クレスト 17歳
出自は平民でありながら、驚異的な魔法の才能で歴代最年少で魔導聖院入りを果たした天才魔法士。
身長は165cmでハーフアップで結った赤紫色の髪、綺麗な青色の瞳を持ち、実にスタイルが良いが、それに反して幼い顔つきにより男心をくすぐられそうになる。
色々使えるし、何とか自陣に引き込みたいところだが……
「それでは早速ですが、魔力測定から測定させていただきます」
「ああ」
「これは魔導晶。この魔導晶に手を
「わかった」
俺は相槌を打って言われた通りに魔導晶に手を翳した。すると、急激に色が変わり、しばらくすると、すっかり真っ黒に染まってしまった。
(う、嘘でしょ?なに、この禍々しい魔力は……それ、に……そ、測定不能?)
「どうだ?」
「そ、測定不能、です……」
やはりな。予想通りだが、実際に再認識させられると無意識に顔に出そうになる。
「こんなことって……」
イリーナが唖然として引きつった顔でそう言う。
まあ、驚くのも無理はない。魔力値が測定不能など信じる方がおかしいレベルだ。だが、こんなことで驚いているようじゃこの先、生きていけないぞ?ククク。
「お、お次は適性検査を行います。適性検査では、主にルーク様の属性適性や天稟というギフトを調べるものです」
「ふむ、では始めろ」
「【鑑定】」
イリーナは俺の適性検査をするため、俺に鑑定魔法をかける。
「……?!、や、闇属性?ルーク様は闇属性に適性があります!」
「ふむ、闇属性が発現したのは凡そ何年ぶりだ?」
「は、はい。凡そ、50年振りかと……」
「なるほど、要は特別ということだな」
「は、はい(な、なんで、この子はこんなにもずっと冷静でいられるのよーー!)」
いくらなんでも人間離れした性能にイリーナは声を大にして叫びたい気持ち満々だった。
ここまでは想定通り。次がとうとう
「おい、次は
「か、かしこまりました」
「天より授かりし恩寵よ──この者の魂に刻まれた"
「えっと〜、ルーク様のギフトは【
「ふむ」
「ぇ……も、もしかして神の使徒様……なのですか?」
「あ?知るか、そんなもの。たとえ神でも俺を動かす権利などない」
「も、申し訳ございません。失礼しました。(確かジークフリート様は
「俺にとってはこんなもの基本スペックにすぎん」
神格級
それは
そして、使用者は世界法則の例外扱いとなる。
イリーナはこれをどう報告すればいいのかと思案しながら、とりあえず仕事は終わったので、帰り支度をしようとした次の瞬間、イリーナの鑑定に異変が起きた。
「で、ではこれで…………え?!」
「どうした?」
「今さっき、も、もう一つ天稟が贈与されました!」
「はぁ?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。もう一つだと?どういうことだ。原作では深淵魔核だけだったはず……まさか、俺の行動が大幅に変わったせいで世界そのものの干渉が変わったのか?
「……で、もう一つというのは?」
「【
俺は頭が機能する前に立ち上がった。けっ、血統支配?明らかに血に関するギフト……間違いない、俺の行動によって変わったんだ。俺がヴァルを封印から解いたことによって
だが、そうなると、原作知識が役に立たなくなるかもしれない。クソッ、考えることがまた増えやがって……
これはやはり当初の計画通り、厳重に口止めが必要だな。
「(こ、これってどうやって説明書を書けばいいのよーーー!)で、では本日はお疲れ様でした。ご当主様にはこちらからせ……」
「待て。イリーナ・クレスト、少しばかり俺と取引をしないか?」
俺は邪悪な笑みを浮かべて口を挟むのだった。
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複数国家壊滅~大陸(数千~一万km)
複数国家壊滅(千~数千km)
国単位壊滅~複数国家(数百~千km)
国単位壊滅(百~数百km)
国単位(数十~百km )
↑ここより上は天稟によって人を超えた力を持つことになる
一都市から大都市圏(数km~数十km)
周囲~一戦場(1km~数km)
数百m~1km
数十m~数百m
一人~数十m
最強災厄の転生者が世界を支配する タケチン @taketake070806
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