第25話

 先程、ドラゴンさんの背中に乗って、ドラゴンさんが五百年前に壊した大陸を見て来ました。雲の上から見ましたが、遥か彼方迄大陸が在ったであろう、岩礁地帯が広がって居ました。

 多くの生命の営みが在ったので有ろう、大陸が海の下に沈んでいたのです。

 このままでは、この大陸も、例外では在りません。

 それで、ドラゴンさんに提案して見ました。

「御山の頂上迄、登山道の整備を行い、庶民迄もが、御山に登って良いか聞いたところ、良いとの返事を頂きました。それで、登山道を作る準備が出来次第、作業に掛かりたいと思います。」

「この領地の者達だけでするんですか? かなり無理があると思うのですが?」

「其処なんですよね、出来ればこの領地の人員で完結したいと思って居ます。ぼくがそう思う理由はこうです。鼠君、モグラ君達も一緒に聞いてくれるかい。」

「そう思って、此処に控えて居ます。」

「ありがとう。では始めるよ。」


① 王都の各領地からの応援でこの作業を完了した場合、各領地から作業に参加した人数によって、後の利益配分が決められると思って居る。が、領主の力関係によっては配分が違って来る可能性があると思って居ます。

勿論人数を多く出した領地に配分が多くなるのは当然と思うが、国王様や王都が絡むと、どうだろうか?

何方にしても、国王様に報告してからになるから、国王様が何と言うかだけどね。


② 御山が高いので、宿泊施設が、数カ所~十数カ所必要になる。それとその運営を何処の領地が管轄するのか? その利益配分は?


③ 頂上付近に社を作り、ドラゴンさんをお祀りする。

「鼠君、ドラゴンさんの縮小版の木象を頼みたいんだが、心当たりあるかなぁ?」

「長老に聞いて置きます。」

「ありがとう。では返事を待って居る。」


④ 肝心の頂上迄の道の整備と今後の定期点検を動物達に、お願いしたいんだけど、              お願い出来ないだか? と思って居ます。

  それと言うのも、今朝御山の地下に入って行った時の道は素晴らしかった。あの道が、走り難い道だったら、どんなにクロが早く走っても間に合わなかった。と思って居ます。

「分かりました。では、これも長老に聞いて置きます。」

「ありがとう。」

 

⑤ 温泉が湧く洞窟付近は宿泊施設と、土産物屋の運営を考えている。

此処は温泉を利用した、保養施設、短期宿泊施設、それと貴族や金持ち相手のバカンスのための施設等の建築。勿論、動物達の為の施設も作り一大リゾート施設を作る予定。

観光客に関しては、王国内に限らず、他の王国の貴族や庶民もターゲットにしています。

そのためには、コクン王国と、リトラン王国側に馬車で移動が出来る様にトンネルを通さなくてならない。勿論、トンネル内も、移動に時間が掛かるので、宿泊施設や、休憩所が必要になると思って居ます。


これが軌道に乗れば、次は、御山を含めた、国境沿いの山々に、冬場のスキー場の運営等で、雇用を生み出し、今迄邪魔だった物を、お金を生む物に変えて行きたいと思って居ます。

此方の運営は、期間限定で各村々から働きに来て貰い、冬場の農閑期の領民の方々の収入源にしたいと思って居ます。

ただ、これだけの物を作るのにかなりの労力が必要となります。皆さんの力を貸して貰えないだろうか?


「「「分かりました。私達も出来るだけの事を致しましょう。」」」

「私達も長老に聞いて置きます。返事は少し待って居て下さい。」

「分かった、では頼んだよ。それと動物さん達の報酬は僕が準備した食事と、憩いの場を準備する予定にして居ます。不足を感じたら言って下さいね。」

 今日の所はこれ位でいいかな。各村から出せそうな人員が決まったらなるべく早 知らせて欲しい。無理な時は国王様にお願いするつもりだから。

「でも、それじゃぁ収益が?」

「そうだね、恐らく、6~7割を税で収める事が条件になるだろう。」 

「前回、国王様に専門家二人を派遣して貰ったのですが、収益の三分の一を税として収める事が条件だったからね。」


「それでも、今回はちゃんと進めないと、ドラゴンさんの気持ち次第で、又大陸が無くなるかも知れない。人命には代えられないからね。」

「分かりました。」

「それじゃぁ、今日は解散でいいでしょうか?」

「はい。」

「では、皆さん、返事を待って居ます」

横で聞いていたケイト様と、ケリー君、それに、コラン親子は目を輝かせながら、メモを取っていた。


         ♢ ♢


 昨日説明の数時間後、ケイト様、ケリー君、コランに集まって頂き、国王様への報告をどうすればいいか話し合った。明方まで掛かって話合ったが、結局、どの話も削る事が出来ず、皆さんに話した内容を、正直に全て書く事にした。


 そして報告書数枚を、漸く書き終えると、先程王都に向けて早馬を走らせた。

 その後、食事を終え、仮眠を取って居ると、夕方、動物達の長達が厩に訪ねてくれた。


 熊と猪と猿の長老は人間が怯えるだろうからと尋ねては頂けなかったが、彼等の返事は鼠の長老が預かって来てくれて居た、鳥達の長老は鷲だった。

結論から言うと、動物達は皆、僕が考えている一大リゾート施設を作る予定に力を貸して頂けるそうだ。


「ありがとう。皆さんが助けて頂けることが、本当に嬉しいし、心強い。」

「グレン、一応、動物達の得意分野で、作業配分もしてみたのじゃが、此れでどうじゃろう?」

 鼠の長老は、各動物が得意とする分野で活躍出来るように、役割分担を行い、無理のない計画が、なされていた。

「長老さん、この役割分担を見て思ったんですが、全作業を同時に進行させるつもりですか?」

「ああ、昨日グレンの、説明を聞いたやつから、この作業を急いどる。と聞いたから、昨夜の内に、長老達に緊急招集を掛け、長老会を開いたんじゃが、さっき話がまとまったんでみんなで一緒にきたんじゃ。が、遅かったかい。」

「いえ、一番早かったです。」


 僕は昨日、解散した後すぐに市場に向かい、食料品を大量に買い込んでいた。

 その食料品を出して、皆に食べて貰った。

 その後、今夜も遅くまで、長老達と話し込んでしまった。

 その時、以前、デイトス様から聞いていた、オレグラ王国とユズシル王国の睨み合いが続いて居る事や、それ以外でも、コクン王国やタドリー王国がややきな臭くなって居る事、リトラン王国とマサユラ王国の関係は良好なことやティナ王国は内政が破綻仕掛けて居る事等色々聞かせて頂いた。

 

それと、ドラゴンさんがこの大陸の国々の国王、貴族に対し自分を訪ねる様に通達を出した事を鳥達の長老が教えてくれた。期限は一年後の今日迄としていたらしい。

「それじゃぁ、僕がした昨日の一大リゾート計画はドラゴンさんも知って居るんですか?」

「当たり前じゃ。寧ろ知らん方がおかしいじゃろうて。それでグレンが急いでいると言っているのか? と思ったのじゃが。」 

「ありがとう。良く解ったよ。国王様の返事を聞いてからになると思うけど、皆さんは、直ぐにでも掛かれそうですか?」

「ああ、そのつもりじゃ。」

「では、最初にしないといけないのが、コクン王国とリトラン王国側からのトンネルの掘削作業と、トンネル内の宿泊施設の設置。それと、トンネルから御山迄と、御山から王都迄の街道の整備。その途中で、温泉街に通じる街道の設置。その後御山の頂上迄の道の整備と、社と宿泊施設に、温泉街の建設です。」

「グレン、御山の頂上迄の道の整備が一番後回しになるのは、納得出来ないんだが。」

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