第17話
辺境伯領のデイトス様ご一家も同様に農夫に化けた暗殺者達に、狙われたが、同じように鷲や、鳥、鼠達に襲われた。
さすがに、鷲たち三匹が空から、急降下して来た時には、青い顔で我先に逃げ出し、逃げた先では、待ち構えて居た蛇たちに襲撃されたらしく、汚い話だが、皆失禁し、震えていたそうだ。
その後、警備兵に捕らわれ、王宮の衛兵に引き渡された。
三日後、ケイト様御夫妻と僕は無事に辺境伯邸に帰還した。
その後数日辺境伯邸でお世話になりながら、僕の今後の事を考えていた。
僕が、この屋敷でお世話になる案件は終了していた。何時までも甘えて居る事は出来ない。それで、此処を出る事に決めたのである。
その夜、ケイト様御夫妻とデイトス様のご家族がお揃いになっている、夕食後にお時間を頂き、今迄大変良くして頂いたお礼と、身辺整理を行い二日後にお暇させて頂く事を伝えた。
皆様は大変驚かれ、引き留めて頂いたが、私の気持ちが変わらない事を知ると、快く旅立たせて頂ける事になった。
「私達は君に命を救われたし、本当に色々お世話になった。何か欲しい物は無いのかい? 我が家で出来る事なら、可能な限り叶えると約束しよう。」
「ありがとうございます。もしも、お願い出来るのであれば、温泉が湧き出た洞窟付近に私が住む小さな家を立てさせて頂けると、嬉しいです。」
「分かった。国王様に陳情するとしよう。デイトス頼んだよ。」
「はい父上。直ぐに陳情書を送って置きます。」
「それとグレン、君にはこの辺境伯邸から、今迄世話になった謝礼金として金貨五千枚をお渡ししよう。それと、陳情が叶った時は、建築の職人数名と、料理人を連れて行くといい。」
「ありがとうございます。とても助かります。」
「シルビア、家具や調度品の選定を頼んでもいいかい?」
「はい、明日より職人の選定に入りますね。」
「そうと決まったら、忙しくなるな。冬までの時間はあまりないぞ。」
「はい。」
「ジェシー、すまないが、グレンの身の回りの準備を頼んでいいかい?」
「はい、お任せ下さい。」
「では、今夜は解散しよう。明日から忙しくなりそうだ。」
「みんなおやすみ」
「「おやすみなさい」」
と、皆さんお部屋に帰って行った。
二日後早馬が王宮から届き、
「この辺境伯領の全ての領地。国境線までの全ての土地をグレンの領地とする。」
と、国王様から正式な、通達が届いた。
【え!何で、ぼくが領主になるんだ????意味が解らん?どういう事だ。】
つまり、ミスリル鉱石を採掘して山が消えた土地も温泉が湧く洞窟も含めた、全ての領地が????????
【益々分らん?僕はただの庶民なんですけど?僕に領主なんか務まるわけ無いんですけど。国王様は何をお考えなのでしょうか?????国王様は正気なのだろうか?】
此の領地には、多くの領民が住む村々が有り。活火山の山並み、日本で例えるなら、富士山が海側にそびえ立ちその横に南アルプス山脈が連なった山々が辺境伯領側に有り、そして、その山々が、隣国との国境線となっている。突然この広大な領地の領主?となってしまった。
【そんな事、僕に務まりませんよ。どうにかならないんだろうか?】
その上、恐れ多いことに、
「グレンを、ケント・ファステール公爵家の養子とし、グレン・ファステール辺境伯とする。」とも書いてあった。
ケント・ファステール公爵家と言うのは、デイトス様のご実家、王宮薬師の家系である、と、シルビア様から教えて頂いた。
領地が突然無くなった、ソラン辺境伯家には、
「我がドーラ・ギルドラへの厚い忠誠心に答え、ソラン辺境伯家に公爵位を授け、元ドラ―公爵と元バーム伯爵の領地全てを引き継ぐ事を命ずる。」
「尚、領主不在期間が長く、領内に乱れがある為、新領地への着任は一か月後迄とする。」
とあり、この領地替え期間の短さにも、一同は驚いた。
「尚、ケイト・ソラン元辺境伯は、二年間辺境伯家に留まり、グレン・ファステール辺境伯の後見人として、辺境伯教育を命ずる」
突然此の三報をもたらされたソラン辺境伯邸が大騒ぎになった事は言うまでも無かった。
まず、急がなくてはイケない事から整理する事になった。
① ソラン公爵家の領地替えと、新領主の事を領民に通達する事。
この通達は、即日各村々に、烏達と鼠達によって村長の元に届けられた。
② 側近・警備兵及び使用人の選定、
(現在仕えて貰っている方達におねがいする予定だが、諸事情で動けない者には此処に残って貰う事にした。)
上記についても、即日通達し、返事の期間を五日後迄とした。
③ 公爵家の王都でのお屋敷と使用人の屋敷の準備・お引越し。
(上記については、期限が無い為、ドラ―公爵邸を仮住居とする事にした。)
一度、ドラ―公爵邸の確認をするため、デイトス様御一家とリバーと僕は、その日、 王都に向かって出発した。念のため、いつもの鼠とクロに付いて来て貰った。
王都に入ると、まずデイトス様のご実家で有り、私の養父である、ケント・ファステール公爵家に挨拶するために向かった。
デイトス様が辺境伯邸を出立する前に手紙を送って頂いて居たので、皆さんお揃いで、僕達を出迎えてくれた。
まずデイトス様が御父上とお母上それにお二人のお兄様に無沙汰のご挨拶をすると、次にジェシー様が同様の挨拶をされた。その後僕を皆様に紹介して頂いたが、僕は、ガチガチで、所々噛みながら、しどろもどろの挨拶をしてしまった。
すると、御母上様のアンジェラ様が突然、僕の前に来ると、御父上のケント様に向かって
「貴方、此の子グレンが可愛い。」と言いながら、抱きしめてくれた。
僕は、最初突然の事で驚いたが、なんだか、日本に置いて来た母親の事を思い出し、涙が出てしまった。御母上様はそんな僕を見ながら、もっと強く抱きしめてくれた。
その日は一日、ファステール公爵家でお世話になり、翌日の朝食後、公爵家を後にした。
王都のドラ―公爵邸に着くと、直ぐに皆さんはお屋敷の中や使用人の屋敷など見て回られた。
僕は、鼠君にこの屋敷の鼠達に事情を聴いて貰った。すると一匹の鼠を連れて来た。
「僕は、グレンです。よろしく!」
その鼠は、チーズとリンゴを渡すと、食べてくれ、ドラ―公爵のまだ知られていない悪巧み、国王暗殺等の計画を聞かせてくれた。鼠達が、グレン此方に来て。と連れて行ってくれた。
其処は、実験室だったのだろうか、リバーの隠し金庫の中にあった瓶と同じ物を見つけた。
此れを持ち出されて居たら、大変なことになっていただろう。良かった。
「教えてくれてありがとう。ぼくは此れから、これらを安全な物に変えて置くし、此処に在る物は全て処分した方が良さそうだね。」
「グレン、そうしてくれると、助かるんだ。このままだと、何が起きてもおかしくないから、みんなで心配していたんだ。」
その後、彼等の案内で、隠し通路や、隠し部屋など教えて貰うと、デイトス様に全て伝えた。今有る、実験施設も、デイトス様に許可を頂き中身を癒し、全て処分する事にした。
その作業を、鼠は見ながら、「君の言う通り、彼は本当の癒し様なんだね。」と言っていた。
ソラン公爵様は、暫くこの屋敷を仮屋敷とする予定だが、ソラン辺境伯邸に作ったような、宝物庫を作って置いたほうが良いか?聞いて見た、すると、鼠達は、
「余程離れた所に、お屋敷を作らない限り、この敷地内なら、地下通路を伸ばすだけだから、簡単だよ。それに、他の場所にお屋敷を作るなら、其処に又作れば良いだけだよ。それに今なら、まだ人が生活して居ないので、宝物庫を作るのに都合が良い。」
と言われたので、お願いする事にした。
「それじゃぁグレン、王宮の鼠や、モグラ達に宝物庫の大きさを聞いて、次に来る時までに、作って置くよ。」
「ああ、頼んだよ。」と言うと、鼠は何処かに消えて行った。
その後僕は、奥様とケンタ様やリバーの元に向かい、この屋敷に残って居る不要な家具、調度品等、を全て収納して回った。その後使用人の屋敷も回りカーテン一枚に至るまで、全て収納した。厩に、倉庫等も不要な物は全て収納したが、掃除用品だけは残して置いた。
屋敷の中の物が、全て無くなってしまうと、石畳の割れや、レンガの破損した部分、屋敷の壁に這った蔦等が気になった。
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