第15話

 その時、ケイト様御夫妻が王宮より帰って来た。

「グレン、君の出自を国王様に全て話したんだね。」

「はい。申し訳ありません。」

「イヤ、構わない。国王様だけには内緒にして居てはならないだろうからね。」

「はい。」

「所で、今夜もう一度、国王様がグレンに昨夜と同じように王宮に訪ねて来てほしい。と言う伝言を預かったのだが。」

「何か、不都合な事でもあったのでしょうか?」

「イヤ、他国に不穏な空気が漂いらしたらしいのだ?」

「それは、戦争ですか? 」

「まだ、腹の探り合いらしいが、油断出来ないらしい。だが、この国は他国との戦争よりも、内乱や厄際により注意すべきなんだ。」

「そうなのですね。それはどういう事なのでしょう。」

「このギルドラ王国を含め、このヒュウーマン大陸には、八つの王国があるのだ。そうだな、例えるなら、此のヒュウーマン大陸は猫の様な形をしているんだ。丁度、頭の部分が我々の住む、ギルドラ王国で、背中の部分がコクン王国とタドリ―王国、お腹の部分はリトラン王国とユシズル王国でお尻から尻尾の部分がオレグラ王国。前足の部分がアサユラ王国、後ろ足部分にティナ王国があるんだ。そして、今一番気掛かりなのが、オレグラ王国とユシズル王国の睨み合いらしい。」

「そうですか、王国の事情は色々分かりましたが、国王様が僕を呼ばれたのは何故でしょうか?」


「内乱や、疫病の蔓延の備蓄分として、グレンの持っていた、癒しの種が昨日の二~三倍位欲しいそうなんだ。どうにかならないだろうか?」

「分かりました。王国内には既に、鼠や鳥により、かなりの癒し草が育っているので、王都の宝物庫を作ってくれた、鼠君やモグラ君達のご褒美は宝物庫で食べて貰う事にします。その方が簡単に種を拾えますので。では、今夜お伺いさせて頂きます。」

「そうか、そうしてくれると私も助かるよ。国王様には私から連絡して置こう。」

「お願い致します。」


 その後、ケイト様は僕を市場に連れて行ってくれ、大量の、パンや果物、チーズにお肉やソーセージ等を購入してくれた。購入して頂いた食材を全て収納すると、夜を待ち、王宮に出かけると、昨夜と同様に鼠が案内に待って居てくれた。

 一緒に国王様を訪ね、国王様と宝物庫に向かった。

 昨夜癒しの種を収めた、宝物庫の鍵を開けて頂き中を覗くと、多くの鼠やモグラ達が待って居てくれた。

「皆さん、こんなに素晴らしい宝物庫を作って頂きありがとうございました。心ばかりですが、皆さん食事を楽しんで下さいね。」

 と、空間収納からパンや果物、チーズにお肉やソーセージ、それと宿舎で頂いた沢山のおやつも出し並べて、みんなに仲良く食べて貰った。

 みんな全て綺麗に食べてくれた。

「足りなかったらごめんなさい。」と言うと、十分お腹一杯になったよ。とみんな口々に答えてくれた。そして名前もいつもの通り番号で付けさせて貰った。


 その後、鼠君が僕の耳元で、「この廊下の突き当りに、もしもの場合王宮の外の森に出られる扉を作っているから、王様に教えてあげて欲しい。」

 王様にそれを伝えると、凄く喜び、みんなに向かって頭を下げた。

「ありがとう。此の事は代々の国王に間違いなく言い伝える事になる。」とまた、頭を下げた。

 その後大量に落ちた癒しの種は、僕の持っている布袋に鼠君達と拾って詰めた。

 王様のご要望通り、昨夜の数倍の種が袋に詰まると、そのまま宝物庫に保管した。

 みんなはいつの間にか居なくなり、気付いたら、王様と僕と鼠だけになっていた。

そして昨夜同様それぞれの部屋に帰って行き、ぼくは又朝まで爆睡した。


 朝目覚めると国王様からケイト様にご褒美が届いていた。が、本来は僕に渡すようにと言われていたらしく、ケイト様より僕がいただいた。ご褒美は勲章と金貨2,000枚をいただいた。

「ありがとうございます。嬉しいです。」

 ホント正直嬉しい。元の世界でも、このようなご褒美を頂いた事は無かった。

 王都での用事が無事済んだので、明日此方を立つ事となり、今日一日は王都の町を見て回るお許しを頂いた。市場や商店街等を見て回り、気づいたら、美味しそうな物や、珍しい物を沢山買っていた。みんなのお土産これで足りるかな?


 色々見て回り、ふと気づくと市場や商店街の最後の店まで来ていた。

 そのまま引き返そう、振り返ると、夕暮れ時になっていたみたいで、多くの商店が店じまいを始めていた。

 その光景を眺めながら来た道を引き返していると、灯りも点いていないのに、店じまいをしている気配がない店の前を通っていた。

不思議に思い、お店の奥を覗いて見ると、五歳位の小さな男の子が泣きながら蹲って居る事に気が付いた。

「どうしたの?」

「お父さんが動かないの。ボクお父さんに起きてって言っているのに起きてくれないの。」

「そうなんだ、じゃぁお兄さんをお父さんの所まで、案内して貰えるかなぁ。ちょっと入っていい。」

「うん。いいよ。」

「じゃぁ、入らせて貰うね。」

 彼に案内され、父親の傍まで行くと、父親は胸を押さえたまま倒れていた。

 細いがまだ息をしている。僕は胸を押さえている父親の手を僕の両手で包むと、彼の手の下にある、胸から淡い光が差し、やがてその光が全身に広がり消えて行った。

 その後父親が目を開けると、

「お父さん。」男の子は父親に縋り付き泣きじゃくっていた。

「所で、君は誰だい?」と、知らない者が家の中に居たので、少し不審に思ったらしく、僕に声を掛けて来た。

「すいません、グレンと言います。このお店の前を通った時、中から息子さんの泣く声が聞こえたものですから、事情を伺い、少し入らせて頂きました。」

「お父さん‼ このお兄ちゃんが、起きないお父さんの手を触ったら、お父さんの身体が光ったんだ。そうしたらお父さんが起きたんだよ。」

「え! それじゃぁ、さっきの痛みは夢なんかじゃぁなかったんだ。私はあのまま死んでいたかもしれないんですね。」

「恐らくですが、かなり危ない状態だったと思います。」

「そうでしたか、ありがとうございました。何かお礼が出来たらいいんですが、恥ずかしい話、此奴の母親が元気なら、面倒を頼めるんだけど、私一人で此奴の面倒と店の切盛りまではなかなか難しく、商売もままならない状態でして。」

「そんな事は気にしなくても構わないんですが、失礼な事をお伺いします。奥様はどうされたのですか?」

「恥ずかしい話、産後に無理をさせてしまったのが悪く、二年前から寝たきりになってしまって居るんです。」

「大変だったですね。所で奥様はどちらにいらっしゃるんでしょうか?」

「此の奥に居ます。薬代を払うのがやっとで、ゆっくり治療も受けさせてやれないんです。あいつにも、いつもすまないと思って居るんですが、中々思う様に行かなくて。」

「そうですね。では僕が、奥様にお会いしても宜しいでしょうか?」

「構いませんが、どうされるのですか?」

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