10.5 同日夕方頃
返却のレンタカーの洗車も終わり、遠藤と有馬は事務所で少し休憩をとっていた。すると突然ポツポツと天井を叩く音が聞こえた。
「うわ、スコールだ」
突然の雨は沖縄では珍しいことではない。それに10分程度で止むので遠藤もそこまで驚かなくなっていた。むしろ洗車が終わったタイミングで降り始めてくれたので雨に濡れずに済んだ。
「こう急に降られると色々と面倒ですよね」
「割り切るしかないよ。それより次のお客さん何時だっけ?」
「えっと・・・ああ今日はもう来ませんね」
「そっか」
すると平安名が事務所に入ってきた。
「おおお疲れ。いいとこで終わって良かったな」
「はい。ていうかスコールってやっぱ面倒ですか?」
「そう言われても俺らにとってはこれが普通だし、むしろ無いと不安になるな」
「そんなもんですよね」
「それより二人とも休みいつだっけ」
遠藤はスケジュールを確認した。
「明後日ですね」
「行くとこ決まってないなら竹富島とかは?丁度今日休みのメンツが行ってるみたいだし」
「ああ、実はもう行くとこの目星付けてるんですよね」
「おおそうか。まあ島ん中でも色々楽しめるから好きなとこ行ってよ」
「はい、ありがとうございます」
遠藤がそう返すと平安名は店長室へ戻っていった。
「どこも店長って大変そうですよね」
「そうだな有馬。でもなんかここの店長、他にも本部のレンタカー部門の統括とかもやってるらしいよ」
「へえ、色々やっててこんがらがったりしないんですかね」
「色々やれないとそこまで任せてもらえないよ」
そう言いながらさんぴん茶を飲んでいると星名が事務所に入ってきた。
「二人ともお疲れ。体調とか大丈夫そう?」
「今の所かなんとか。ていうか店にいるよりずっと良い気分です」
星名はその言葉を聞いてなんとなく彼の置かれた状況を察したようだ。
「確か伏古だよね?あそこトップセールスの店だからみんな厳しいでしょ?」
「いやもうなまら厳しいですね。特に津田さんなんていつもピリピリしてるっていうか、安西店長も同じく利益とかで結構詰めてきますよ」
「私も営業の頃商談であそこ行ったからなんとなく分かるよ。なんか元々あそこが本店だったらしいしね」
「へえ。やっぱ状況変わっても店の雰囲気って変わらないもんですか?」
「うん。ある意味お店ってそんなもんだよ」
遠藤は納得したような様子で頷いた。
「やっぱ試用期間終わってから残業とか厳しいでしょ?」
「いえ、むしろ用事無いならさっさといなくなれって言われます。なので思いの外プライベートは充実してますよ」
「そっかぁ。まあ新人だし今はそこまで仕事無いしね。まあ残業すれば偉いっていう時代ももう終わりだけど」
「それでも多いとこは多いですよ。何なんでしょうね」
彼女の言葉に遠藤がそう返した。彼も残業の多さについては少しウンザリしている様子だ。
「仕事が終わらないって言うのもそうだけど、一番は嫉妬じゃないかな?」
「嫉妬?」
すると事務所に知念が入ってきた。
「ごめん星名さん、車動かすの手伝ってもらえる?」
「あぁ分かりました」
そう言うと星名は足早に事務所を後にした。そのあとも遠藤は彼女の言い残した「嫉妬」という言葉が引っかかっていた。
「何に嫉妬するんだよ」
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