ニート、《ハズレ》を当てる/《トイレットペーパーの芯》がSNSでバズってて頭を抱える
朝起きたら、また目の前にガチャ画面が浮かんでいた。
「……夢じゃ、なかったんだな」
透明なウィンドウが、相変わらず俺の視界の中心に貼りついている。
昨日の“トイレットペーパーの芯事件”は、寝ぼけた俺の幻覚じゃなかったらしい。
《デイリーガチャ・無料!》
今日もぬるいフォントが俺に選択肢のない選択を迫ってくる。
「……いや、今日は回さないからな!」
無視して布団にもぐり、目を閉じる。
が、画面は消えない。瞼の裏にも表示される勢いだ。
しかもだんだん、音が鳴り始めた。
ポップなBGMが頭に響く。テンションだけは無駄に高い。
「……うっざ……!」
30分ほど粘ったが、BGMに精神が削られて限界が来た。
負けた。今日も世界は俺に優しくない。
「わかったよ……回しゃいいんだろ……!」
俺は投げやりに“ガチャ”ボタンをタップした。
ピロリロリーン♪
歯車が回り、カプセルが転がる。今日も変わらないしょぼエフェクト。
《ハズレ》
表示された文字に、俺の脳が一瞬停止した。
「……は?」
続けて、布団の上に紙切れが一枚落ちてくる。
拾ってみると、白い紙にデカデカと「ハズレ」と書かれていた。
「ふざけてんのかこのガチャァァァ……」
床に叩きつけようとしたが、昨日の芯のことを思い出して、手が止まる。
何かあるかもしれない。紙に足が生えたり、喋ったり、爆発したり――いや、さすがにないか……?
5分ほど紙を睨んでいたが、何も起こらなかった。
「……今日は本当にただのハズレかよ」
緊張が抜け、脱力。
いやいや、これただの時間の無駄じゃねえか。
そのまま、布団でゲーム実況を見ていたら、自由奔放な姉が部屋にやってきた。
「ねえねえ、このツイートやばくない?」
「は? なにそれ……」
「めっちゃバズってるんだけど。芯がさ、二足歩行で歩いてる動画なのよ!」
スマホを渡され、見せられた動画には――
昨日、俺が投げたあの芯が、住宅街をスタスタと歩いている姿が。
子どもに追いかけられたり、犬に吠えられたり、最後は交通ルールを守って横断歩道を渡っていた。
再生数、三百万超え。
俺はその場で頭を抱えた。
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