1-2
学校の
彼はいつものように、青々と
授業がない時やサボる時には、
均整の取れた体つきに長い手足、百八十センチの八頭身。
(絵よりも実物のほうが綺麗だ……)
「何を見ている」
ルーファスは目を閉じたまま言った。
「あ、起きてたんですね。実は、殿下に聞いて欲しい話がありまして」
「……何だ」
ルーファスが
つり上がった切れ長の瞳は、
この世界には様々な色の瞳の人間がいるが、これほどに
手切れをするだけ。簡単なことだ。
そう考えていたはずなのに、いざルーファスを前にすると言葉がうまく出ない。
子どもの頃、
ジェレミーの中で彼は単なる悪役という記号以上の存在。
ルーファスがいなかったら、今のジェレミーはいない。
原作に
(……前世の記憶や知識がある今なら、原作の結末を回避できるかもしれない)
そんな考えが不意に
かつて、ルーファスに救われた。今度はジェレミーが救う番だ。
このまま
そのためにまずすべきは、悪役ムーブを
「おい、何を
ルーファスが
ジェレミーが顔を上げ、ルーファスの瞳をじっと見つめると、
「クリスへの接し方を変えませんか? このまま
「クリスに
「もし本当にそのつもりで接しているのでしたら、残念ながらクリスには全く伝わっていません。それとも殿下はこのままのやり方で、クリスの心が手に入ると本気で考えているんですか?」
「従者の分際で、主人に意見するのか?」
「従者だから意見するんです。このままクリスを手に入れられなくてもいいんですか!?」
こうして真っ向から意見を言えるのは、前世の意識のお
ルーファスは
「……考えがあるなら聞いてやる」
「お茶を飲みましょう」
「馬鹿にしてるのか?」
「それが一番の近道なんです。下手な小細工をやめて、
「ラインハルトはどうする。クリスを
「ラインハルト先輩にも同席してもらいます」
「
「だと思います。でもラインハルト先輩が仮に何を言っても、クリスは殿下からの誘いを受けてくれますよ。優しいですから。ラインハルト先輩が邪魔したくても、クリスは絶対にそれを許しません」
「……クリスは、ラインハルトの言いなりじゃないのか?」
「逆です。逆らえないのは、ラインハルト先輩です。クリスに
「あてになるかどうか分からないが、
「それじゃあ、練習をしましょう。僕をクリスだと思ってください」
「お前がクリスのように愛くるしいわけでもないのに、か?」
「……それは誰より僕が一番分かってます。あくまで練習ですので、そういう想定でお願いします」
「仕方がない」
ジェレミーたちは温室内にある
「――ルーファス先輩、お誘いいただきありがとうございます!」
「よく来たな。今日はロイヤルガーデンより取り寄せた茶葉で作ったミルクティーを飲ませてやろう。子爵程度ではとても飲めないだろうから、しっかり味わえ――」
「ひけらかすことは言わないでください。下品です!」
「本当のことを言っているだけだ。そもそも王家の領地でなければ採れない貴重な茶葉だ」
「目的が
「優しく? クリスはあの粗野なラインハルトと一緒にいるんだぞ。クリスはそういう男が好きなんじゃ……」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~!」
「その
「ぜんぜん分かってませんねっ。いいですか? 大事なのはギャップなんです。他人に対して敵意
他人には見せない表情を見せてくれるからこそ、相手にとって自分が特別なのだと自覚することができるのだ。尊大な男がまんま尊大に振る
ルーファスは
「――今日はお前とお茶ができて嬉しい」
ルーファスが
(イケメンすぎて、眩しい……!)
「これでいいのか?」
ルーファスはすぐに笑顔を引っ込めた。
「
「簡単だな」
ルーファスは
(残念ながらクリスの心はラインハルト先輩のものなんです。どれだけ殿下が努力しても
「ひとまず提案できるのは、これくらいです」
「一応、試すだけ試してやる」
「ありがとうございます」
「それにしても、今日はやけに
「少しでも殿下のお役に立ちたくて……」
確かにこれまでのジェレミーは自分の意見を言うことなどなかった。
ルーファスと別れると、ジェレミーは原作内容を思い返す。
原作通りに進めば、ルーファスがクリスに告白するのは秋の
狩猟祭でラインハルトを傷つけられたクリスは
最終的に
狩猟祭まで半年もある。それまでにルーファスの悪役ムーブの矯正と
悪堕ちした理由の一つが、ルーファスにとってクリスしかまともに接してくれる人がいなかったせいで、強く
原作知識を使ってルーファスに功績を積ませ、周囲から一目置かれる存在にすることができれば、クリスへの依存も減り、告白を断られた際に受けるダメージを
(やれるだけのことをやろう!)
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