第17話 護衛任務と女神アリサ
護衛の任務が始まった。
護衛は、もちろん守るという事で、
人、物、馬車をすべて守るという任務となる。
人と物を守ればいいという訳では無い。
馬車の馬を殺されたり、馬車を壊され動けなくなってしまっては、
クエスト失敗になる。
この後、近くの村や町が無ければどうなる?
修理できないので、依頼物も運べない。
状況によっては、身動きが出来ず食料も尽き、死ぬ場合もありえる。
最悪の状態にもなりえる。
魔獣や盗賊から、全てを守る為に全力を尽くす事になる。
敵が現れるまでは、何も仕事が無い。
仲間と話をしたり、雇い主と話をしたり
長い移動時間を、楽しみながら過ごすのが、護衛を上手く達成させるための
コツともいえる。
雇い主のラビンさんと、仕事の話や世間話をしながら和やかに進んできた。
護衛任務3日目、何事もなく順調に進んでいる。
今まで昼は出来るだけ移動をし、食事は、馬車の中でとる。
夜は福太郎に夜警をしてもらい、馬車の近くにテントをはり就寝。
それを繰り返してきた。
今回、注意すべき岩場で、やはり盗賊が出た。
岩陰から突然、輩が3人出てきた。
「お前たちの馬車と荷物をもらい受ける」
「さっさと降りろ」
対処しなければ、この先通れない。
馬と雇い主の護衛は、マリーにお願いして、
俺は盗賊の1人にとびかかりながら切りつける。
一人あっさりと倒す。
「ヒッこいつ戦闘なれしてるぞ」
そんな声も聞こえるが、会話に合わせる必要も無し。
マリーの攻撃魔法のライトネイルで2人目がダメージを受けて弱っている。
遠方の攻撃は、大いに有用。
俺は、相手に突進し2人目を切り倒す。
3人目は・・・・遠くへ走って逃げている様子が分かる。
これ以上追っても捕まらなそうだから、追跡はあきらめた。
「ありがとう、あなたたちを雇って良かった」
「まだ現場に到着した訳ではありません、警戒しながら進みましょう」
強く握手されながら、感謝された。
その後は無事何事もなく、目的地の商業王国スウドラにたどり着いた。
夜遅くの到着となった。
ラビンさんと俺たちは、2日ほど別行動となる。
宿は、もうすでにラビンさんが手配をしてくれていた。
まずはゆっくり寝たい。
心身一番を休めるには、あったかなお風呂、ふわふわのベットが必要。
俺は、ぐっすりと1度も目を覚める事なく、朝を迎える事が出来た。
翌朝、俺とマリーはスウドラを観光する事にした。
商業王国だけあって、お店が沢山ある。
活気もあり、楽しめそうだ。
喫茶店でも見つけて入ろうと決めて、道をあるいていると
思いがけない人と出会った。
「ショウ君じゃない!、あとスサーナが何でいるの?」
そう言う人物は、冒険者の装いをしている女神アリサだった。
「アリサさんおひさ・・・・・」
あ・・・違う、アリサではなく、アローっていう偽名を使っていたっけ・・・・
「ア、アローさん久しぶりです」
「元気そうでよかった」
「で、何しているの、スサーナ」
「俺は、ショウを守っている」
「じじぃに頼まれたから、してるまでの事」
「ちゃんと守っているの?面倒かけてない?」
「はい、スサーナには、大変良くして頂いてます」
「そう、ならよかった」
「時間ある?あれば色々お話しましょう」
アローさんの誘いならば、喜んで付き合う。
彼女は女神アリサで、俺をレベル5まで鍛えてくれ、
この世界のイロハを教えてくれた恩人でもある。
マリーは、誰ですかぁ?と俺の後ろで人見知りを発動し、怪しんでいる。
本当の事を知ったらどうなるんだろう・・・・
後で紹介すると話しておいた。
その後、皆一緒にお茶をする事に決まった。
丁度よい、静かで個室の喫茶店があるという事で、アローの案内で店に入っていく。
席につく途中でも、スサーナとアローは口喧嘩を始めている。
「お前は、昔から俺に勝てないから、いつも口で負かそうとする」
「はぁぁぁん?あんたの攻撃力が高すぎて、私の回復が追い付かないのよ」
「神様になっても、その勝ち負けしか判断できない、バカ脳どうにかならないの?」
小声でおれは、アリサさんにお願いした。
「アローさん声が大きい」
「スサーナの声は、俺とアローさん以外には聞こえないですから・・・」
「ごめんなさい、スサーナといると、つい口喧嘩してしまうの・・・」
店員さんは、アローさんの事をいぶかしげにジッと見ていた。
店員さんから見たら、アローが一人、見えない誰かと会話しているように見える。
神さまとか・・・・不穏なワードも出てくるし・・・・
事実、正しいのだが・・・・
はたから見たら、危ない人に100%見える。
俺の横にマリー、正面にアローさんが座り、俺とアローさんがコーヒー、
マリーは紅茶を頼み、お茶を飲んでいる。
まずは自己紹介だが・・・・アローさんに正体を明かしてよいものか・・・
席を立ち、アローさんとヒソヒソ話をして確認する。
「あの、今パーティーを組んでいる子なんですが、女神というのは
バラしても良いんですかね?」
「スサーナの事は、バレてるよね?」
「はい、バレて知っています」
「なら、隠してもしょうがないわね」
「私から話しましょう」
それを聞いて、一つ心配事が減った。
あまりマリーには、隠し事はしたくない。
大切な仲間だから・・・・
俺は自分の席に戻った。
「こちら俺とパーティーを組んでいる僧侶のマリーです」
「こんにちわ」とマリーは、コクリとお辞儀した。
アローさんは、自分で紹介をはじめた。
「ヒーラーということは、アリサ教の教徒さんになるわね!」
「私は女神アリサです、今は人の身体で活動していて、アローを名乗っています」
横でマリーの様子を確認したら、顔を強張らせ目をまんまるにして固まっていた。
「こんな可愛らしい教徒さんがいるなんて、うれしいわ」
「ショウが一人前になるまで、色々と指導しました」
「その縁があり、今あなたの前にいます」
となりから俺への視線を感じた。
マリーを見たら、目をまんまるくして無表情でジッとみていた。
「なんだよ・・・」
「ショウって何者なんですかぁ?」
「神様2人と親しいなんて普通、ありえないじゃないですか?」
あぁ、確かに異常だ。
これ・・・・いいタイミングだと思って、今まで隠していた事を話す事にした。
「俺、実は異世界人で、元はこの世界の住人ではないんだ。」
「一番偉い神様に、間違いで殺されてしまって・・・・
代わりに、この異世界に転生した」
「そして、その神様の計らいで、翻訳というスキルをもらい、
この世界の神様のサポートを受けられる事になった」
「はぁぁ・・・今日は色々あり過ぎて、頭の処理が追い付かずに、
爆発しそうですぅ」
「マリー、色々ゴメン・・・」
マリーは、手で頭をおさえて、少しヒーーっとなっていた。
頭をフル回転させているようだ。
情報処理が落ち着いたのか、頭を押さえながら聞いてきた。
「異世界人で、神様がいて・・・・」
「ということは・・・ショウは神様ではない?」
「あぁ、神様ではない!普通の人間!」
「はぁ・・・良かったぁ、安心しましたぁ・・・・」
「私の周りが神様だけだったら、もう私生きてられないですぅ」
「そ、それは良かったよ」
どういう意味?という質問は今は止めといた。
意味が分からないが、マリーにとってはそれが重要なんだろう。
「マリー、ちょっと隣に座って」
アローが手招きをして、横に座らせる。
「マリーがあまりに可愛くて、いい子だから祝福を授けてあげましょう!」
アローは優しくマリーを抱擁する。
「えっ・・・・」
マリーもギュッとする。
お互い10秒ほど抱擁していた。
「はい、「女神アリサの加護」の授与しておきました」
「これからは、物理攻撃ダメージ半減、魔法攻撃ダメージ無効化されるから」
「あなたの冒険では、ほとんど敵はいなくなるわ」
感激のあまり、マリーの目には涙があふれだしていた。
「ううぅぅ、わーーーん」
「アリサ様ありがとうございます」
「うん、ここではアローね、アロー」
マリーの頭を撫でながら、アローがあやしている。
水を差すように、スサーナが話しかける。
「おい、アリサ、ほいそれとそんな凄い加護を与えていいのか?」
「マリーはもらう価値のある人物なの!」
「おい、スサーナ、おまえもショウを過保護しすぎだろ?」
「俺は、必要以上には助けん、成長の妨げになるからな!」
「私が成長の妨げをしているとでも言いたいの?」
「あ゛ぁん!」×2
「アローさん、スサーナ、喧嘩はこの辺で」
「生前もお二人は、こんな感じだったのですか?」
「そう!スサーナとはいつも口喧嘩!」
「お互い折れないから、終わらないの!」
「でも、会って相手の悪口を言わない方が、気持ちが悪いわね」
俺が思うに・・・・それって、たぶん仲が良いのだと思った。
「これからショウはどうするの?」
「護衛のクエストが完了したら、
魔王王国スルフへ行って、魔法使いを仲間にする予定です」
「そうね、あそこは魔法使いだらけだから、見つけやすいわね」
「ただ魔法を使えると、特別な存在っていう見栄を張ってしまう子が多いから
常識のある仲間を選んだ方がいいわね」
「あとで必ず、トラブルを起こすから・・・・」
そうか、注意しておこう。
色々と話をし聞く事が出来、有意義な時間を過ごせた。
「また、会ったらお話しましょう」と、アローさんと別れた。
次は・・・メインストリートの商店街で、買い物をしよう。
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