異世界は「翻訳」と「守護神」で安心。穏やかな生活を望んでいますが、波乱万丈で大変困っています。
多助
プロローグ
私はバサッバサッと翼をはためかせ、急ぎ飛びながら天上界の神殿へと向かう。
今日は突然、最高神のじじぃに呼び出された。
こんな時は大抵、自分にとって良くない事がほとんど。
呼び出されたから行くけれど・・・・・
じじぃになんて、出来れば顔も見たくはない。
なんで、なんで、私なの?
私、忙しいの、これパワハラですよね。
神殿に到着し翼を消し、タッタッタッと急ぎ足で中に入ると
全身黄金色に光輝くじじぃが、立って待ってるのが分かる。
最高神の前に到着し、サッとひざまづきながら問い合わせた。
「女神アリサ到着いたしました」
「最高神、何用でしょうか?」
「立ち上がっておくれ」
そう言われ、スッと立ち上がって話を聞く。
「いつも、お願いしてすまないが・・・」
「新しい転生者がいるので、一人前に生活できるようになるまで
指導をしてくれないか」
思わず、下を向いた。
怒りを抑える為に、深呼吸を5回ほどする。
目頭がピクピクと痙攣しているし・・・・
目つきが悪くなっている。
負の感情や表情を他者に見せることは女神として恥。
まして最高神へなど、ありえない。
女神というもの、感情のコントロールは出来て当たり前。
ほらーーー思った通りだ・・・・
いつも雑用を押し付けられるので、さすがに今回は納得がいかない。
だって、ここに来る途中に他の神殿前を通ったけど、
昼寝している暇そうな男の神様がいたり、
おどり歌い、遊んでいる女神だったり、結構いるんですもの。
わたしじゃなくても、他にいるでしょうに。
きっと、じじぃのミスのしりぬぐいで、
今回指導をお願いされているのは分かっているんです。
やってられない、今回は、お断り!
気持ちが落ち着いた所で、顔を上げてとびっきりの笑顔で答えます。
「嫌です」
「約100年ごとに、ほぼ毎回、わたしばかりじゃないですか!」
「ただでさえ、教会でのケガ人再生補助だったり、生活環境整備だったり・・・
教皇へ本日の啓示だったり、日々忙しいのに、身が持たないです」
「今回で12回目ですよ」
「他の異世界への転生者は、こんな指導なんてしていないじゃないですか!」
「この異世界だけですよ!」
最高神は少し慌てたようすで、両手を上下に大きく動かしながら話を続ける。
「すまん、わたしがミスをしてしまったので、特別扱いしたいのじゃ」
「それにアリサよ、考えても見よ」
「同じ異世界を管理している3神じゃが、おぬし以外の2神
トート と スサーノ」
「あ奴らに指導が出来ると思うかね・・・・」
「出来ないじゃろ」
「この異世界を適正に指導できるのは主しかおらぬ」
「トートは、真面目だけど根暗で・・・・指導といいつつ、
ぶ厚い本を5冊渡しただけで姿を消してしまった」
「転生者が困ってしまって、食事もとれず死にかけてしまったので、
しょうがないからアリサに代わりにお願いしたのを忘れたか?」
「どういう事なのか問いただしたら、一言、自らが学ぶ事を教えたのです、
これも指導・・・・・」
「と言っておった」
「あ奴に、指導者には向かん」
「スサーノによる厳しい指導で人生を絶望し、
引きこもらせてしまったあの子を忘れたか」
「さすがに可哀そうになって、記憶を消して別の世界へ転生させた事件を」
「たしかに・・・・あまりにもスパルタ過ぎて、
転生者が参ってしまった事件があったわ」
「傍目に見てたけど、ほんとう彼可哀そうだったわ」
「初日に、ただひたすらこん棒を振る作業を1日させてたわね・・・・」
「2日目は、たしかロングソードだったかしら・・・・」
「1日目は頑張っていたけど、2日目には倒れて気絶しても、
水ぶっかけて起こしていたわね・・・・」
「ポーションや魔法で回復もさせず、食事はさせてたようだけど、
腕が上がらず犬のように口から食べてたの」
「あれば、さすがに神様ではなくてまさに鬼」
「根性をつけ、強くなって、活躍したい!
という願望を叶えようとしていたみたいだけど、
あれでは普通身体壊すわ」
(謹慎処分としてスサーノは、
人間という肉体に変身できない罰を与えられていたわね、
神さまになっても、自身が強くなることのみしか興味が無い。
か弱い人間に興味をもち、理解する為に肉体を没収されたのよね・・・・
もっと人間に寄り添って観察して、適切な助言しなさいと最高神より指示され、
魂だけの存在になった。
あれから200年くらい経つわね、謹慎処分の解除はいつまでかしら・・・
いっそ解除しなくていいわね、しずかだし)
結局、私しかいないのね・・・・
はぁと、ため息を出す、うなだれる。
顔を上げる力も出ない。
「あーー分かりました、分かりました」
「私しかいないです。やります、やります」
「もちろん、君にはこの世界を充分に管理してくれているから」
「もうそろそろ、位を上げても良いと思っていて」
「今の仕事から、女神を管理する仕事をしてもらおうかと思っておる」
「現場から離れて、事務的仕事になるということだ」
「そうしたら、今まで以上に自由な時間が増える」
「今すぐという訳ではないが、近い将来に必ずだ」
「君には期待しかしていない」
そういわれたら、目に生気がじょじょに満ちて来る。
満タンになるやいなや、
猫背が、一瞬でピシッと良い姿勢になる。
俄然やる気がでてくる。
きりッと、最高神の顔を見て答える。
「最高神分かりました」
「適任は私しかいません、全力で今回の転生者を一人前になれるよう
手助けいたします」
「早速ですが、転生者の資料をいただけますでしょうか」
「これじゃ」
ぶ厚い資料の紙束を最高神からもらって、
その場でパラパラと資料をめくり把握していく。
この資料には、地球での生活や、本人の性格、最高神と話して決まった内容を含め、
全てが完璧に書いている。
「名前はショウ、22歳ね」
「茶髪、細身、身長170cm・・・まぁまぁイケメンね」
「スキルは翻訳、読み書きや語学を教える必要無し・・・」
「希望は冒険者として、楽しく生きて行きたい・・・・」
「転生日と時間は」
ポケットに入っている、小さな懐中時計をチラっと見る。
「このあと約2時間後ね」
「まずは、実際に会ってから、彼に見合った指導をしていきます」
「指導期間は、早くて5日間、遅くても2週間でよろしいでしょうか?」
「充分だ、アリサ頼んだよ」
そうして私は急いで、異世界へと戻った。
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