第8話 ギルドにて

今日は、午後3時ごろギルドに到着。


採集クエストと道中討伐した魔物の報告をして、魔石をゴールドに変換してもらう


手続きをする。



受付嬢に話し、赤魔草入りのかごと魔石を渡すと、


ソワソワとしだし慌てた様子だった。


「その場でちょっと待ってください!」と言われて、奥に駆け出して


その場から居なくなってしまった。


俺たちはその場で、待ちぼうけをくらった。



「俺たち何かやばい事したかな?」


「なんですかね・・・きっと魔熊かもしれないですぅ」


「けど、討伐しただけだし、倒してはいけない魔物じゃなかったよね?


 渡した赤魔草、あれ違う草っていう事はないよね?」


「間違えようが無いですぅ、学校で習いましたし、あれは赤魔草でしたよ」


「待つしかないね・・・」



10分ほど経った。


奥からギルド長が受付嬢と一緒に男が、こちらにドカドカと向かってきて、


大声で話しかけてくる。


「まったく、何してくれた」


ギルド長だ。



会話をする時の距離が近く、ギロっとした目で睨みながら威嚇しつつ聞いてくる。


正直、苦手だ。


「お前たち、本当に魔熊まくまを倒したのか?」


「魔石を盗んだんじゃないよな?」


にらみをきかせながら、ギルド長に問い詰められる。


顔が恐いもので、顔を合わせたくないが、委縮しつつ負けじと、


顔を見据えて対応する。


「俺が一人で倒しました」


「はい、わたしもいました」


これは事実だ、俺(スサーナ)が倒した。



「おい、ちょっと鑑定するからこっち来いや」


そう言われて、鑑定室で、俺とマリーは鑑定を受ける事となった。



ギルドの受付近辺では、ギルド長と俺たちのやりとりを聞いて、


ザワザワしているが分かった。


怒られるのは、嫌だ。


何も悪い事はしていないのに・・・



鑑定室の中は、いつもと違い、居心地が悪かった。


倒したのはスサーナだが、事実を話すと、あとあと面倒だから話さない事にした。


俺をスサーナ神が守護していて、俺の身体を乗っ取って倒したなんて言ったら、


俺は確実に目立つ存在となって、居心地が悪い。



「翻訳」のスキルも知られてしまう、おそれもある。


なるべく目立たずに、楽しく平和に生きて行きたい。



鑑定室でまず、長官から魔熊の件の事を聞かされた。


「実はおととい、カムロ山で魔熊が1匹、冬眠からさめて一般人の入山者を襲撃。


今日までに、合計5人ケガをし教会に運ばれた」


「被害が拡大しそうだから討伐してくれと、王様から依頼があった」


「それで、今日これから正式な討伐クエストを出すはずが、


お前たちが討伐してしまった」



頭を抱えながら、少し困ったように話してくる。


「魔熊はレベルが35」


「討伐クエストの受注はこのレベルだと、シルバー以上が妥当となる」


「討伐適性人数は3~5」


「推奨冒険者レベルは30以上」


「で魔熊を倒した証拠の魔石があるが、これは本物だ」


「何で、ひよっこのお前ら2人で倒せる?」


「何か隠して無いか?」



あぁ、色々と隠している。


だが、知られる訳にはいかない。


俺の目指す人生設計が壊れてしまう。



俺は手汗、冷や汗を額にかきながら、頑張って説明してみる。


正直、おれも何を言っているかは分からない感じだが、


スサーナの攻撃や動きを思い出しながら、ひとまず一生懸命


伝えてみる。



「俺も倒せると思わなかったけど」


「火事場のくそ力っていうのですか?」


「魔熊が突進してきたので、逃げたら死ぬと思って」


「逆に前に走り出したら、鼻づらが目の前にあったので」


「思いっきり下から切ろうと思ったら、剣の峰で当ててしまったんです」


「相手のアゴに当たっていて」


「そうしたら、相手痛がってのけ反って、首ががら空きで」


「隙だらけだったので、急いで剣技の溜めをして・・・・」


「首めがけて、剣技の斬破ざんはを撃ったら倒れたんです」



「たしかに、魔熊の弱点は首だ・・・・」


「通常なら、咆哮ほうこうを受けて冒険者は戦意喪失せんいそうしつ、食い殺されるが、


 えなかったか・・・・」


「まぁ運が良すぎて出来過ぎだが、倒せない訳でもない」



ギルド長は渋い顔をしながら、まぁ自分に納得したようで、


次に鑑定するぞと、俺たちを急かした。




レベル 10


職業 冒険者


HP  70


力   25


防   10


速   18


MP   5


スキル  無


剣技  斬破



マリー


レベル  9


職業  僧侶


HP  67


力   27


防    8


速   20


MP  37


スキル ヒール(回復) ロイア(毒回復) ザイロ(麻痺回復)


    ライトネイル(神聖攻撃魔法)


剣技  無



「ショウ、お前、本当に倒したな」


「レベルが爆上がりしてるぞ」



スサーナが倒した訳で、俺が倒した訳ではないが、経験値は俺に入るらしい。


急に5レベル上がっていた。


マリーは1レベル上がっていた。



おかげで、魔熊討伐は俺がしたという事で、完全に納得してもらえたようだ。


「結果が出ていれば、間違いないな」


「倒した実績と、そのレベルならチームのレベルも


アイアンからブロンドで良いだろう」


「チーム名もそろそろ、あってもいいだろうな」


「考えとけよ」


「お前らには期待している、頑張れよ!」


愉快そうに、ガッハッハと笑いながら、去って行った。



そうだ帰る道中、魔犬を前よりも簡単に倒せたのは、


レベルが上がったからだったか・・・・


俺が倒した訳ではないから、実感が無かった。


5レベルも上がれば、それは強くもなっている。



受付へ戻ると、受付嬢から600ゴールドという大量のお金と、


新しいブロンドのメンバーカードをもらった。



通常の薬草採集クエスト達成で50ゴールド、


道中の魔熊を含めた魔物退治で130ゴールドの180ゴールドのはず。



今回魔熊の討伐クエストを受注はしていないが


達成扱いにしてくれたのだ。



「スサーナ今回の報酬の取り分だけど、どうすれば良い」


「俺は300ゴールドもらう」


「残りをマリーと分ければいい」


「今回の報酬分で、新しい質の良い武器購入に使え」


「分かった、ありがとう」



今回の戦闘で、刀の刃が少し欠けてしまっているのを確認していた。


スサーナの鋭い斬撃ざんげきに耐えられなかったのだろう。


本当にスサーナは、細かな所まで見ている、


観察眼にすぐれており、ぶっきらぼうだが、良い奴だ。



「おい、聞こえているぞ、ショウ」


「そうだ、武器が貧弱だ何とかしろ」


「俺が身体を借りた時、本気を出せないだろ」


「明日には武器を買っておけ」


「分かった、分かった」



報酬をもらった時に、ギルド内には数人の冒険者がいたが、


ヒソヒソと俺たちについて、あれこれ言っているのが分かった。


少し奇異きいな目で、こちらを見て来るので、正直あんまり良い気がしない。


まだ、他の冒険者たちとの交流はしていないし・・・・


ルーキーが活躍して目立ってしまうのは好ましくないかもしれない・・・・


これから交流も考えて行かなくちゃな・・・・


この時間は、みなクエストに励んている場合が多いので、


いつもより冒険者は少なめだった、まだ良かったのかもしれない。



「あの魔熊を倒したんだってよ」


「あいつらが?まだアイアンだったろ」


「2人でか?むりだろ」


「けど、レベルが上がっていたそうだから」


「倒したってことだろう?」


「あとで勧誘するか・・・強いなら欲しいよな」



あー・・・似たような光景あったような・・・


スサーナ教会でもこんなだったなぁ・・・


居心地が何となく悪いのと、今日は疲れたので


早めに宿に戻って、ゆっくりと休む事にした。



明日はマリーと一緒に、俺の武器を買いに行く予定を立てておいた。


神さまに指示を出されているから、買っておかねばならない。


そうそう、チーム名を考えて、案を出そうという宿題をお互いにした。


急ぎではないので、ゆっくり決めたいと思っている。

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