第7話 採集クエスト➁ 魔熊との決闘
1時間、赤魔草の採集を俺たちは行った。
「いたたたたた・・・・・腰が痛い、腕重い」
「一時間だったし、一度休憩しよう」
「疲れましたーー」
「ヒーリングをかけますので、その後お茶しましょう!」
お互い
採集対決は、今のところ引き分けとなっている。
ただ・・・・体勢を低くしかがんだ姿勢で長時間採集したので
結構、体中が痛い。
マリーも張り切って頑張ったせいで、疲れ顔でもある。
「ヒーリング、ヒーリング」
マリーに回復をしてもらった。
元気も出れば、痛みも無くなる。
とても便利な魔法だ。
「薬草採集を初クエストしているけど・・・」
「けっこうツラいもんだね」
「私もこんなに大変とは、思わなかったです」
「次やるなら、討伐クエストが良いと思わない?」
「そう思いますぅ」
仰向けで寝転がりながら、30分ほど休憩をした。
「あと1時間あれば終わる、さて頑張ろう!」
「頑張りましょう!おーーー」
休憩後、自分たちを
30分ほど採集をした後、福太郎が俺たちの方へ慌てて戻ってきた。
「熊がちかづいてるぞ、気を付けろ、気を付けろ!!」
福太郎の向く方角に、何やら獣が近づいてくる。
結構なスピードで迫っており、
あと数分で、こちらに到着するだろう。
間違いなく、熊だ。
冬眠明けの熊?なのか?
それなら、冬眠中飲み食いをしないはずで、弱弱しいはず・・・
ただ見えてきた熊は、体格が良く力強さを感じる。
赤魔草の採集どころではない、対処しなければ、俺たち死ぬんじゃないか?
ここら一面は開けており、赤魔草しかなく隠れられる場所も無い。
熊からみたら、丸見えだ。
俺たちは、身構えながら武器をとり、対抗できる準備だけはしている。
今回は、今までの討伐対象の魔物、魔獣ではない。
嫌な強者の圧迫感を感じる。
魔熊は確かレベル30ぐらいだったはす・・・・
俺のレベルは5・・・
正直、上手くマリーへの指示も出来ない、自分より格上相手に
どう対処していいかも分からないのである。
魔熊について、スサーナに教えてもらっても対応しきれないのが分かる。
ただ焦り、時間を浪費する俺がいる。
困った時は神様に頼むしかない、今の俺では対応しきれない。
「スサーナ、どうすれば良い」
「魔熊か・・・お前らじゃ倒せないだろうな」
「レベルは35、逃げられる状況でも無し」
「俺に身体を貸せ、5分以内に倒す」
「分かった、頼むスサーナ」
そういうと、俺の身体をスサーナが乗っ取った。
鋭い眼光で、魔熊を睨む。
「いざ参る」
「マリー、俺よりだいぶ後ろに離れていろ、戦闘中何もするな」
「5分以内で倒す、その後、俺を回復しろ」
「分かりました、スサーナ様」
俺の髪が白髪となり、口調や雰囲気が変わっているはずだ。
マリーも理解したはず。
マリーは、駆け足で俺の後方へ10mほど離れ、戦闘体制を維持している。
スサーナは、魔熊の前に自らゆっくり堂々と向かい、
不敵にニヤリと笑い戦闘を促す。
目の前にいる、戦闘直前の魔獣は二足で立ちあがり、大きさ約4mにもなっている。
「ヴォオオオーー」
その巨体は低い唸り声の咆哮する。
咆哮は生きている者すべてに、恐怖を抱かせる力に満ちていた。
俺がもし対峙していたのであれば、身体を委縮してしまい動けず、
その隙に攻撃されて、死んでいただろう。
だが、スサーナは剣を構えつつ、冷静に魔熊のすべてを見ていた。
咆哮など、まったく影響を受けていないのである。
即座、魔熊は左手にある大きな爪で、轟音を響かせて振りおろしてくる。
スサーナは攻撃している方向へと、走りつつ俊敏に動き攻撃を回避する。
流動的な動きで、ものの見事綺麗にからぶらせ、
同時に鋭い速さで剣を振り、相手の腕を切る。
魔熊は痛みで、
「ゴゥァーーー、グァ、ガァーーー」
怒り、屈辱、憎しみ。
目の前から、対象物が消えたような錯覚を覚えたのだろう。
混乱しているように、首を左右振り、少し暴れている。
その後スッっと、冷静さを取り戻したよう一瞬静まる。
ゆっくり振り向き、スサーナを見つけしだい突進してくる。
今度は巨大な牙で、激しく噛み殺しにきている。
スサーナは、数回の噛みつき攻撃を、軽いステップで後退し紙一重で避けながら、
アゴめがけ、下から刀の峰を思いっきりぶつける。
「ガン」
「グァァーーー」
轟音とともに衝撃の反動で、刀は勢いよく下方向へと跳ね返る。
魔熊はその衝撃がよほど強かったのか、顔を歪ませながら上方へのけ反り、
隙だらけとなる。
一方スサーナは、次への攻撃態勢を同時に最速で作っていた。
跳ね返った刃先を、身体の後方でピタリと止め、
低くしゃがんだ状態で相手を見据えている。
その状態は最大限の力を溜めて、次の瞬間吐き出せる体制。
「
必殺の剣技をお見舞いする。
剣による
「グォ」
「ズサーーー」
「ドォン」
それを受けた魔熊は倒れて、地響きが起きた。
死んだ証となる、こぶし大の黄色で大きい魔石へと
戦闘時間、約4分。
スサーナは無駄の無い動きと、正確な攻撃、
圧倒的な力により、勝利した。
その場で、スサーナは大声でマリーへ叫んだ。
「ショウと入れ替わる、頼んだ・・・・」
「ズサッ」
おれは仰向けに倒れた・・・・立っていられなかったのだ。
「痛てーーー!!」
体中鋭い激しい痛みを感じ、声が出た。
今までにない、感じた事の無い痛み。
限界を超えて筋肉を使った為、筋肉が切れていたり、
骨が折れていたりしているようである。
すぐさまマリーが近寄って、ヒーリングを唱える。
すぐさま痛みも無くなり、回復していく。
凄いものを見た、そして体感した。
これが武神である本当のスサーナの戦い方なのだ。
でも・・・・この戦いですら、本気では無いのは分かる。
攻撃を一切受けず、回避のみで対応し、たったの3振りで勝利。
始終余裕があり、落ち着いて行動していたのだ。
命が助かった。
「スサーナ、ありがとうございます」
「たまには、戦いたくなっただけだ」
「強敵と戦う時は、また身体を貸してもらうからな」
「助かります」
魔熊との戦闘が終わり、少し落ち着いた所で、
マリーに相談してみた。
「赤魔草って、籠いっぱい採集しないとクエストは達成できないんだっけ?」
「たしか、量によって報酬が変わるだけで、少なくても達成できるはずです」
「それなら、今日は疲れたから、クエスト完了してもどろうか?」
「そうですね、私も魔力少ないので、ムリできないから帰還したいです」
「魔熊討伐も報告したいし、帰ろう」
「はい、帰りましょう」
俺たちは、このあと素直に帰還した。
道中、めずらしく、福太郎から話しかけられた。
「お前、凄いな、少し見直した」
今回は、俺に正面を向けて話している。
スサーナについて説明するのがめんどうだから、
「まぁな、俺も本気を出せば、あんなもんさ」
と返しておいた。
おや、福太郎との関係も良くるかもしれない?
帰り道、魔犬が3匹でたが、難なく倒した。
魔犬の戦い方は、心得ている。
もうレベルが低い魔物は、
落ち着いて対処できるようになってしまった。
以前の魔犬より、動きが遅く感じる、ダメージも多く与えられている
気がするのだ。
俺が戦って勝った訳ではないし、まさかレベルは上がって無いはずだよな。
無事、ルードラ王国に戻ってきた。
これからギルトで報告する予定だ。
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