第5話 マリーとチームを組む

ルードラ王国に戻り、俺たちは冒険者ギルドに行った。


マリーの冒険者登録と、俺と一緒のチーム登録する為である。



鑑定については、基本本人だけらしいが、


これから一緒に活動するから確認したいと言った所、同行を許された。


マリーはヒーラーという職業にはすでになっており、


おれよりもレベルも3つほど上、ステータスも高かった。



レベル  8


職業  ヒーラー


HP  65


力   20


防    8


速   12


MP  35


スキル ヒーリング(回復) ロイア(毒回復) ザイロ(麻痺回復)


    ライトネイル(神聖攻撃魔法)




何より回復魔法を複数、攻撃魔法も1つ持っていた。


魔力であるMPもそこそこあれば、見た目以上に力もある。


通常攻撃は、メイスで殴るのだが、俺より敵にダメージを与えられるはず。



一瞬、おぅ、俺より強い・・・俺の立場が無くなるんじゃないか?まずいかも・・・


いや、待てよ・・・・俺より強くて何も問題無いじゃないか、逆にとても有難い。


という事実にすぐ気づいた。



討伐クエストでは俺も頑張るが、マリーも頼りになるという事だ。


大助かりである。



俺と一緒のチームとして登録もした。


ギルドに登録後、2人で何かクエストを実行しようかと掲示板を見ていると、


マリーから突然お願いがあった。


「ショウ、今住んでいるシーファ村でやり残した事があって、


今から1度戻っても良いですかぁ?」


「5日後、夕方6時ごろ戻ってきます」


「戻ってきてから、クエストを開始したいですが、大丈夫ですかぁ?」


マリーは王国の近くのシーファ村に自分の家がある。


戻ってきてから、活動可能日を決めれば良いよな。



「分かった、行ってきな」


「5日後、迷わないように王国の入り口で待ってる」


「そうしたら、クエストを一緒に選んで、実施しよう」


「はい、必ず戻るので、まっていてください」


「楽しみに待っているよ」


そうして、マリーと別れた。



マリーは極度の方向音痴、シーファ村までは一本道だから迷いようが無いが、


王国内では、間違いなく迷子になる。


入口で待っていれば安心だ。



俺は4日間、ルードラ王国内の散策さんさくをしたり、


近くの村へ、荷物を運ぶクエストもした。


スライム駆除くじょのクエストがあったので実施し、達成したりと


時間を使いながら待った。




5日後、ルードラ王国の入り口で待っていると、マリーは戻ってきた。


「ショウ、お待たせしましたぁ」


「ルードラで本格的に活動する為に、村にある自分の家を売ってきたのですぅ」


「スサーナ様、お借りした600万円お返しいたします、ありがとうございました」


お金は、ひとまず俺に渡された。



スサーナから伝えろと言われたので、俺はスサーナの言葉を


そっくりそのまま伝える。


「あぁ、たしかに返してもらった」


「それで・・・今後どうする?


 借金を返してもらえば、ショウとのチームを離れるのも自由」


「私はショウと一緒に活動したいですぅ」


「分かった、よろしく頼む、以上だ」



「マリー、これからよろしく」


「私もよろしくです」



早速、マリーともに初めてのクエストを実行する為、ギルドに訪れた。


一番多いのは、討伐クエストになる。


チームを組んで初めてのクエストとなるので、


確実に達成できる物を選びたい。


2人で行う良いクエストを探していると、魔犬討伐が目に入った。



ランクの条件無し


討伐クエスト


ルードラ王国から南、明星みょうじょうの街道にて3匹の魔犬出没の報告あり。


推奨すいしょうランクは、アイアン。


メンバー 1、2名


依頼先 ルードラ商工会



俺は、魔犬の討伐はした事がある。


魔犬のレベルは3。


1匹だったが、さほど苦労せず倒す事が出来た。


俺とマリー2人なら、3匹くらい余裕で倒せるはずだ。



「マリー、この魔犬討伐クエストをやらないか?」


「魔犬は討伐経験があるし、3匹なら確実に倒せると思うけど」


「そうですね、私は無いけど・・・ショウにまかせます」


「なら決まりで」



そうして、クエストを実行する事となった。


明星の街道は、ルードラ王国から徒歩2時間の所にあり、


ダーロ森に接している。


その森から、魔犬が現れて悪さをしているようである。


商人が良く、商品を運ぶ為に使う道でもあるので、困ってギルドに依頼したようだ。



俺たちは、明星の街道の入り口に着いた。


入口には魔犬らしき姿は見えない。


街道の距離は1キロ、警戒しつつ歩きながら探してみる事にした。



10分ほど道なりに歩いていた時に、そいつは現れた。


「こっちへ来い」


「噛み殺してやる」


1匹の魔犬が森側から現れて、俺たちににらみながら鋭い牙を見せ、


威嚇いかくしてくる。


俺には翻訳のスキルで、相手の話している内容が分かる。



1匹なら、まずは俺1人で充分倒せる。


相手は威嚇しつつも、こちらに向かってこない。


逆にこちらに背を向け、小走りに逃げ始めた。


「マリーは待機で、俺が倒してくる」



魔犬に逃げられては、クエスト失敗となる。


逃げる魔犬を追いかける。


思いもよらず、急に森から別の魔犬が出てきて、剣を持つ右手首を噛みつかれた。


俺は追っていた魔犬への注意がそれる。


その刹那、逃げていた魔犬がひらり返って、左手を噛みつかれる。


身動きが制限されてしまった。


痛いがそれどころではない、この現状を何とかしなくちゃいけない。



次に森から勢い良く、俺の首元めがけて魔犬が飛んできた。


まずい!反応できない!


ああ、俺はここで死ぬんだ・・・・・



「ライトネイル!」


俺の首に牙が届く寸前、マリーが放った攻撃魔法によって、


魔犬が弾き飛ばされた。


マリーが、後ろから追いかけてきていたのだ。


待機ではなく、臨機応変に対応してくれて助かった。



俺は「はっ」と我に戻り、痛みがある中、


右手首を噛みついている魔犬を地面に投げつけ、剣で倒す。


左手首を噛んでいた魔犬は、叩きつけられた魔犬を見て口を離し、


逃げ出していた。



「ライトネイル!」


「がぁ」


逃げた魔犬に、マリーの魔法がヒットし、その場で倒れた。



3匹の魔犬は倒された証拠となる、魔石になっている。


危なかったが、クエストは達成する事が出来た・・・



「ショウ大丈夫ですか?ヒーリング」


マリーによって、受けた傷もダメージも消えた。



「マリー助かった、ありがとう」


「ショウが、おとりになってくれたおかげで


 敵を上手く狙えました」



「今回は、上手く戦えなかった、次は失態しないように


 立ち回るよ・・・・」



帰りの道中、スサーナから、からかわれのは、いうまでもない。


「ハッハッハッハッハー、ゆかいゆかい」


「ショウ・・・犬っころ3匹に、まんまとやられたな」


「あの戦い方は、正直無いな!」


あぁ、神に煽られるなんて・・・・・なんて日だ。



「はぁ・・・俺は弱い・・・」


「いや、弱い訳ではない」


「相手を知らなさすぎた」


「どういう事?」



「魔犬は基本、群れで戦う」


「先ほどのように良く、1匹がおとりとなって注意を引く、


 注意がおとりに向いている所を狙って、他の魔犬が攻撃し行動を制限させ、


 隙を作る」


「そして最後に、とどめを刺しに来る」


「今回は3匹だったのが救い、5匹だったら、マリーがいても死んでいただろう」



「相手の行動が分かっていれば、勝つための対策はいくらでもできる」


「例えば、おとりは追わず、魔犬が戦い方を変えるよう、待つのも良い」


「魔犬は、おとり作戦が無理だったら、数で一斉に戦おうとする」


「お主の職業なら、閃光玉や爆薬玉で同時にひるませる、


 ダメージを与えて弱らせた後に戦うのが有効だろう」


「なるほど・・・ためになった」



「相手の特徴、弱点、行動パターン、事が分かれば、格上でも倒せる」


「おれは、魔物、魔獣すべての知っている」



「ショウよ、今後戦う相手について、どんな奴なのか俺に必ず聞け!」


「そうすれば、死なずに済み、相手に勝つ事も出来よう」


「そのために、俺が守護しているんだ」


「上手に使え」


「分かった・・・・必ず相手の事を教えてもらうよ」


もう2度と、こんなだらしのない戦いはしない事を誓った。



初チームでの魔犬討伐から、3週間ほど経った。


あれから5回ほどクエストを受注し、達成している。


主に王国近くに出没する魔獣などの討伐クエストである。


ゴブリンや魔蜂まばちを退治し報酬を得て、ムリなく良いペースで活動している。


魔物や魔獣について、スサーナに事前に聞く事で、倒す為の作戦を立て


計画通り、上手に倒す事が出来ている。



自分よりレベルが低い魔獣を倒しても、


経験値が少なくレベルは上がらないものである。


事実まだ、レベルは上がっていない。


今は、コツコツとやっていくしかない。

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