第2話 神さまに守護られる
スサーナ教会にて
このルードラ王国では、戦いの神であるスサーナ神を信仰している信者が多い。
元人間で、魔王を
スサーナの職業でもあった、上級職の2刀剣士を目指す冒険者も多いらしい。
2刀剣士って、強そうではある・・・と思っている。
両手に剣を持ち、攻撃2回出来る。
俺はまだ、目指す気が湧かないんだよね・・・・今のところ。
そこまで強くなくて良い。
教会の中には、わんさか人がいた。
遠くに見えるのは、
そこへ、皆吸い寄せられるように向かっているので、
その流れに身を任せて進んでいく。
像の前で、皆こぞってお祈りをする。
参拝をするためだけに来る人も大勢いるが、剣技を習得したい方も、
まず参拝をしてからというのがルールになっている。
俺は剣技を覚えるために、この教会に来たのである。
剣技は、1日の使用回数の制限があり、溜めという時間は必要になるが、
通常よりダメージを与えられたり、攻撃範囲が広がったりと技によって様々らしい。
ここに来る途中、歩きながら「剣技本」を読んで確認してきた。
今のところ覚えられる「
「斬破は・・・・溜め5秒、攻撃力3倍、1日の使用回数1回
ほぅ中々暴力的だなぁ」
とワクワクしながら来た。
ようやく自分が参拝する番になった。
前の人を見よう見まねで、銀色のツボに1ゴールドコインを投げ入れて
目をつむって拝む。
「この異世界での生活で、幸せに楽しく生きられますように・・・・」
「前世のように、すぐあっさり死なずに済み、長生きできますように・・・・」
「できれば、可愛い彼女が出来ますように・・・・」
「あと出来れば楽して、お金持ちになりたいです。」
「メンバーが早く見つかりますように」
「願い事って1日1個だったかなぁ?まぁいいや」
「おい、そこのお前、ショウだよな」
「ハイ?」
誰かに声をかけられたみたいだ。
声の主は・・・・目を開けて周りを見渡しても分からない。
「いつまでそこに突っ立っている、邪魔だから左にどけろ、
後ろがつかえてるではないか、まったく」
「あっごめんなさい」
見るとたしかに、俺の後ろに大行列が生まれていた。
そう言われたので焦りながら、人がいない場所に離れてみた。
「俺はスサーナという神だ」
「最高神に頼まれて、助けてやれと言われている」
また話しかけられたが、近くに誰もいないのだ。
頭の中に直接ことばが響いて聞こえているのが、理解できた。
「スサーナ様?」
「おうそうだ」
「そのスキルのせいだな、お前の声が
「俺の声も届いているようだな」
「ここまで
俺は
言葉の会話では無く、
ちょっと・・・・初めての経験なので、恐いんですけど。
翻訳のスキルが、こんな応用まで出来るとは思わなかった。
それより、何を助けてくれるのだろう?
「お前を助ける為に、守護してやる」
「はい!?」
「いつでも、おれからアドバイスを受けられるという事だ」
「拒否はできるのですか?」
「アホか、拒否できるわけないだろ!」
「おれが守護するんだから、感謝しとけバカヤロー!」
「ありがとうございます・・・・」
「(結構この神様、
「おい、聞こえてるぞ、まあいい」
「守護する代わりに、1週間に1回、5分だけ身体を貸してもらう」
「なんで身体を貸すのですか・・・」
「守護する見返りに、何かしてもらわなければならない」
「俺は今、肉体が無いから」
「お前の身体を借りて、飯を食うか、戦うぐらいしか無い」
「今は
「ちなみに身体を貸すと、どどどうなりますか?」
「意識はあり、見ている物を共有できるが、おまえは会話も行動できない、
勝手に動かされている状態になる」
「
「そして、戻った後は
「HPは幾分かはあるが、ほぼ
「俺の魂が強すぎて、肉体が追い付かないからな」
「もし5分を超えるようなら、死ぬだろう」
「週1回なら負担は、ほぼ無いはずだ」
「死なないように返すから安心しておけ」
「死んだら守護できないからな!」
「ハッハッハッハッハ」
スサーナ様は、
「いやいや、笑えないですよ・・・・」
「でも、ほんとうに神様のスサーナ様ですか?」
「証拠を示して下さい」
「なら・・・剣技の斬破を今教える」
「えっ、ちょっとま・・・・・」
心の準備も無いまま、俺の身体全体が一瞬、金色にパァっと大きく光り放つ。
自分が電球にでもなったような感じである。
時間にして5秒。
それは、外にも漏れ出れだし周りを照らすようでもあった。
「これで、斬破を使う事が出来る」
「鑑定してもらえば、習得出来ているのが分かるだろう」
「それと、レベルが上がればそれに見合った剣技をまた教える」
「ありがとうございます」
「あとは、俺が身体を借りる際にお金を使うから・・・」
「司祭に言ってお金を渡す」
「ちょっと待っていろ」
おれは、ハッとしたが、手遅れだった。
はたから見たら、勝手に剣技を覚えたのだ。
その光景を10人ほど見ていたらしい。
ジッとこちらを見ており、今も様子をうかがっている。
なんで注目の的になってるの?俺、目立ちたくないのに・・・・・
非情に居心地が悪い、出来るならここから逃げ出したいが、
待っていろと言われているから、待たねばならない。
そうこう5分ほど待っていると、遠くから、
がたいの良い黒く恰好の良いダボダボの服装をした
司祭らしき人が、ハァハァ言いながらこちらに向かってくる。
そして大声で話しかけてきた。
「スサーナ様より
言われました!」
(おぃ、声が大きい!さらに注目されるじゃねぇか・・・・バカヤロ!)
俺と目が合い、俺の肩をガシッと両掴みして、高揚しつつ語りかけて来る。
「あなた、ショウ様ですよね?」
「はい、ショウです」
「私は司祭のローレンです。あぁぁ、握手してください。」
「はい?」
握手を求めてきたので握手しておいた。
大声が止まらない・・・・・
「こんな啓示は初めてです!!」
「今も、目の前のこの人に渡せと言われましたーー」
大きく手を上げ、周りにアピールしている。
「おーーー!」と周りにいる信者から大歓声が上がる。
おいおい、何を
司祭は、とても大喜びで、興奮気味に俺にお金を渡してくる。
「1000ゴールドです」
「1000ゴールド!!」
思わず声が裏返ってしまった。
5ゴールドで、1日宿を借りられるので、とんでもないお金になる。
これだけあれば、武器や道具、ほぼ何でも買えそうである。
気付けば今、俺と司祭の周りをぐるっと、人だかりが出来ている。
騒々しさが増している。
お金をもらっている最中、拍手や歓声が沸き起こっている。
「パチパチパチ」
「パチパチパチ」
「おめでとうございます」
「スサーナ様のご加護、すばらいい」
「おーショウ様!」
「ショウ様!」
「ショウ様!」
俺は、何度も言っているが目立ちたくない。
ひぃぃ、俺の名前がコールされている・・・
恥ずかしい、
顔が熱なってきて赤面しているのが分かり、立ち尽くしながら顔を両手で隠す。
教会には用もなくなり、その場で司祭と周りの人たちへ、
大きく数回お辞儀をして、人混みをかき分けて逃げるように、
教会を出る事にした。
教会から出る途中、司祭から、
「ショウ様、またいらっしゃってください、おまちしております!」
と大声が後ろから聞こえてきた。
いやぁ、恥ずかしくて2度と来られないですよ!
俺はこの後、冒険者ギルドに向かう。
メンバー捜しとクエストを行い、さっそく働くのだ。
その道中、スサーナから声をかけられた。
「ショウ、これはあくまでも俺が使うお金だから勝手に使うんじゃないぞ」
「使ったら、殺すぞ」
「分かりました」
「(言葉が野蛮だ)」
「すまん、久しぶりに明瞭に会話が出来たものだから、
興奮して言葉が過ぎた」
「きをつける」
「(素直ですね)」
「俺は、素直だ」
「心の声が全部届いてしまう・・・スサーナ様ごめんなさい」
「いや、かまわない」
「その方が、俺もラクに接しられる」
「つねに守護しているが、ずっと喋っている訳ではないから安心しろ」
「喋りすぎて、迷惑に思われがちになるのは、自身も良く理解している」
「俺は、お前が緊急時や必要だと思った時には、話しかける」
「基本は黙っている」
「ショウが必要であれば、いつでも話しかければ良い」
「俺は必ず答える」
「言葉はガサツかもしれないが、
何より強い」
「おれはとても役に立つ、あくまでサポートだ」
「それと様はいらん、スサーナで良い」
「俺に対して敬語も不要」
「これも、最高神からの贈り物でもある、助けてもらおう」
「分かりました、スサーナよろしく」
「おう」
なんと神様に間近で、守護られる事になった。
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