第1話 冒険者ギルドにて

俺は、ルードラ王国の冒険者ギルドの前まできた。



今日はとびきり運が悪い・・・・


先ほどギルドの入り口で、これから俺の冒険が始まるんだ!


新しい事を始めるときのドキドキ、ワクワクという感傷に浸っていたら、


後ろから激しく体当たりされて、地面に叩きつけられた。


思わず、「いってーー」と声も出た。



倒された後、見上げた先には、強面髭こわもてひげづらで40歳ぐらい、ガタイも良くとても強そう


な奴がいた。


そいつは俺の事を、ゴミでも見るように「フン」と一瞥いちべつして、冒険者ギルドに入って


いった。



ケガは無かったが、おかげで服が土まみれ、手で払っても落ちきらない。


たしかに俺は上の空の状態、入り口を少しふさいでいたように思うが、


充分に俺を避けて入れるほどの余裕はあったはずだ・・・・


あえて、アイツは俺にぶつかってきたのだ。



悔しかったのは・・・


相手に反論できず、謝罪を要求できなかった事。


怒りはあったが、相手を一瞬みて俺より格上の冒険者だと推測でき、ひるんでしまっ


たのだ。




今の俺はレベル5と低い。


相手のレベルは知らないが、俺よりは必ず強いはず・・・・


戦いになったら、俺が100%負ける。


下手すれば、死ぬ事だってありえる。



「はぁ・・・・」


あぁやるせない・・・深いため息を吐いた。


一番大切な最初のイベントのはずなのに、運が悪い・・・先行きが怪しいぞ。


いかんいかん、いつまでもくだらない奴の事を考えて、


俺の大切な時間を奪われるわけにはいかない、もったいない。



俺は両手で、自分のほほを「パンパン」と強めにたたいて、気合を入れなおした。


「過ぎた事は忘れよう」


「悪い事の後には、良い事がくるさ」


「気持ちを切り替えでいこう」



扉を開けてギルドに入ると、ワイワイガヤガヤと活気がある。


会話をしている人もいれば、クエスト掲示板に見入っているパーティーもいる。


活気がある所に仕事はあるものだ。


冒険者として働く本拠地として、この雰囲気悪くはない。




俺は、キョロキョロしながら目的の場所を探してみる。


今日の俺の目的は、ギルドで会員として登録する事。


願わくば・・・仲間が見つかり、クエスト出来れば、なお良し。



人ごみの奥に受付場所があり受付嬢が5人並んで立っているのが見て分かる。


例えるなら、銀行の受付である。



上の表示案内を見ると、左がギルト登録、変更はこちらへと読めるので、


人をよけつつ受付まで進んでいく、2人並んでいるその後ろにならぶ。


受付には、身なりの綺麗な若く美人なお姉さんが、1人で対応している。



ちなみに真ん中が仕事発注と受注、右側が達成報告と報酬になっていた。


こちらの受付は2人体制、まぁこちらの方を良く使うからなのだろう。



実は・・・俺は「翻訳」ほんやくのスキルのおかげで、


通常読めない現地語であろうと、完璧明瞭かんぺきめいりょうに読める。


すべてにおいて日本語表示になっているのだ。


「翻訳」スキルは、とても便利だ。


自動的に訳してくれる。



このスキルは、最高神に頼んでもらった物だ。


俺は異世界人で、地球では最高神の手違いで死んでしまった。


享年きょうねん21歳。



この異世界で復活という訳だ。


異世界も、日本語が通じると普通思うでしょう?


なんと、日本語が通じないと言われた。



その瞬間、うそだろーーーと思ったが、


神さまにそう言われてしまったのだから、受け入れるしかなかった。


日本語と似てるけど、学ぶ必要があり普通6カ月ほどかかるって言う。



何か1つ、スキルか武器をプレゼントするというので、


「翻訳」スキルをもらったという訳だ。



特別な武器や魔法をもらう人が多いと言われたが、俺は「翻訳」のスキルが


一番欲しい。



英語ですら、学生時代学んだはずなのに、まともに話せない。


これから新たに語学を学ぶなんて、苦痛でしかない。



「翻訳」は言葉と文字を翻訳してくれるスキルになる。


①現地語(動物や魔物の言葉)などを日本語に変換してくれる →俺が理解できる。


➁日本語を現地語に変換してくれる →相手に理解してもらえる。


ちなみにスキルはお願いして、オート作動、MP消費は0という優れたスキルにして


もらった。



それと・・・・・俺が話す時に、口の動きと発音が一致しない事にも気づき、


自然な口の動きとして相手に見えるように、スキル調整してもらった。


違和感があれば、変な人だと思わてしまう。


腹話術の人形のようになってしまっては、きっと生きづらくなる。




さて、俺の番になった。


これから「翻訳」スキルによって、受付をしていくのだ。


上手く行きますように・・・・・




「こんにちわ、ギルドカードはお持ちですか?」


「持っていないです」


「初めてのギルド会員の登録ですか?」


「はい、どうすればいいですか?」




言葉は現地語で本当は分からないはずなのに、


しっかりと日本語になってる。


相手は変な顔をしていないし、違和感を感じていないようだ。


俺の言葉も伝わっているようで安心した。




「名前と出身地をご記入下さい


その後、レベル、スキルの鑑定して、職業登録になります。」


名前はショウ 住所はリーム村で登録する。


ここは、女神アリサの所有する家がある。


女神といっても、人化して活動している時に使う家だと言っていた。


この世界を管理する上で、そういう事も必要らしい。



女神アリサの初期指導でレベル5になるまで、俺が住んでいた場所でもある。


出身地が無いと不便だからと女神アリサに、この出身地を使うよう言われている。



最高神の計らいで、実は女神に初期指導してもらった。


とても美人だったが、指導内容は超スパスタだった。


あめむちで上手く転がされて、気づけば2週間で一人前に仕上げてもらった。


大変だったが、今は良かったと思う。


ありがとう、最高神とアリサ様である。




次に俺は2階の鑑定室に行った。


男性職員の「鑑定」の魔法によって、


俺の現在のデータが分かり、紙に書き写される。




レベル 5


職業  無


HP 55


力  13


防   7


速  10


MP  3


スキル 無


剣技  無


魔法  無



「ギルト登録可能な、レベル5ですね


 このステータスでしたら、冒険者、戦士、アーチャーなどが


 職業選択可能ですが、どうされますか?」



「冒険者で登録します」


しめしめ、「翻訳」スキルは表示されない。


何か嫌な予感が凄くしたので、最高神にシークレットにしてもらったのだ。


こんな便利で、活用範囲が広いスキル持ちだと分かったら、


面倒事に巻き込まれるは目に見えている。



例えば・・・監禁されて、今の世界では誰も読めない禁忌きんきの魔導書を、


ムリやり読まされ呪いにかかる。


もしかして、凶悪きょうあくで話の通じない魔物と無理やり会話をさせられて、


苦痛により精神が壊れる。



あり得ない話ではないと、本気で思っている。


異世界の情勢や常識なんて、分かっていないし知らない。


用心は出来るだけ、しておいた方が良い。


俺の身が危ないし、俺は危険な事にあえて進みたくない。


楽しく平和に暮らしていきたいのだ。



各種職業内容は、予習済み。


女神アリサの個別指導で、職業本を渡されて熟読した。


その時に何でも平均的に扱える、冒険者になるのを決めていた。


剣や弓も使えれば、魔法も可能。


ただし、器用貧乏であり、特化したものが無い。



戦闘では他の職業には少し劣るが、


どの職業より数多く、道具を持ち運びできるので、


サポート役として活躍する事が多い。



登録が終わったようだ。


その場で職員からギルドメンバーカードをもらった。


これでギルドの一員となり、仕事を受注し達成できれば報酬をもらえるようになる。



最後に、職員からアドバイスをもらった。


「レベル5であれば、剣技を覚えられるので、教会で習得するのをオススメします」


「これから、クエストメンバーの募集に応募されますよね?」


「でしたら、スキルか剣技を覚えていた方が選ばれ易いはずです」



あ、そういえば、女神アリサも言ってたな・・・・


剣技を取得しておいてねと。



「そうなんですね、分かりました、ありがとうございます」


「剣技を取得してきます」


俺は正式に冒険者となった。


これから剣技を取得できる、スサーナ教会へ向かう事にした。









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