地球外の顔を持たないノッペラボウ嫁
赤澤月光
第1話
地球外の顔を持たない花嫁
遥か銀河の彼方に住む「カオナキ族」は、進化の過程で目鼻口を捨て、テレパシーと光の波で心を伝える生命体となった。彼らは感情を学ぶため、各惑星を観察していた。
ルゥナは地球の観察任務のため、姿を人型に調整して地球に降り立つ。だが感情に興味を持ちすぎてしまい、ひとりの青年・悠真の暮らす村へと近づく。
ある夜、山で迷っていたルゥナは悠真に出会い、助けられる。顔がない彼女を見ても驚かない悠真。「顔があっても、嘘をつく人はいる。君は透明で、安心する」と語る。
ルゥナはその言葉に初めて「温かい振動」を感じ、自分でも理解できない感情に揺れるようになる。
ルゥナは毎夜、悠真の家の近くに現れる。会話はできないが、悠真は彼女に絵を描いたり、風鈴を贈ったりするようになる。感情が交わされるごとに、ルゥナの体が少しずつ地球の生物らしく変化し始める――だが顔だけは、相変わらずつるりとしたまま。
カオナキ族の母星から、「地球人とこれ以上関わるな」と通信が届く。地球人の感情は毒にもなると警告されるが、ルゥナは「私はこの感情を知りたい」と応答し、地球に残ることを選ぶ。
悠真が突然の病で倒れる。ルゥナは人間の医療も言語もわからず、光の身体で必死に看病する。命の危機の中、悠真は彼女の手を取り、「君がいてくれてよかった」と微笑む。
その言葉に反応するように、ルゥナの身体が静かに変化し、髪が流れ、頬に淡く赤みが差し、だが――顔は依然、何もない。
数年後、村には「顔のない奥さん」と暮らす青年がいるという噂がある。ふたりは言葉を超えて通じ合い、庭には子どものような宇宙植物が育っている。
悠真は言う。「誰よりもやさしくて、誰よりも美しい。顔がないことが、彼女の一番の魅力なんだ」と。
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