幽霊日記

@relair

第1話

――こちらは東京時間午後7時の特別ニュースです。

本日夕方、日本外務省は、政府が東アジア連盟との間で、能力者に関する越境研究協力計画について初期的な協議を行っていることを正式に確認しました。提案は東アジア連盟中央研究院からなされており、能力者の遺伝子監視や共生メカニズム、地域能力者データベースの相互連携など複数の技術的側面を含んでいます。

外務省の担当者によれば、現在関連事項は非公開の協議段階にあり、具体的な枠組みはまだ形成されていませんが、「国民の安全を保障することを前提とした国際協力」には前向きな姿勢を示しています。

関係筋によると、今回の協力が実現すれば、日本が東アジア能力共同体の中核メカニズムに参加する初めてのケースとなり、国際的にも大きな注目を集めることになるでしょう。

一方、複数の市民団体や人権監視組織の代表が本日、能力者のデータ取り扱いや個人の権利に関して、政府に対して透明性と独立した判断を求める請願書を提出しました。

内閣官房の情報によると、首相府はこの協力案の長期的影響を評価するための特別チームを設置したとのことです。最新情報は引き続きお伝えしてまいります。

また、アメリカホワイトハウスは本日未明、アメリカ大統領が2週間後に訪日することを正式に発表しました。同行者には現世界最強能力者のティアゴ・シルバ・デ・レオン氏も含まれています。

関係筋の話によれば、今回の訪問では能力者に関する国際的な法的枠組みや安全保障協定、さらにアジア太平洋地域での戦略的配備について非公開の会談が行われる予定です。

しかし、一部の専門家は今回の訪問が、日本と東アジア連盟との間の技術協力の進展に対するアメリカ側の圧力の一環である可能性を指摘しています。具体的な日米間の議題については、現時点で明らかにされていません。

加えて、日本政府は本日、能力者同士の合法的な結婚および出産に対して、家族手当や育児特典、教育資源の優遇を拡大する新たな社会政策案を提出しました。

この政策は、高能力遺伝子の継続を促進し、いわゆる「選別的繁殖」政策を加速させるための試験的措置と見なされています。

東京大学社会倫理研究所の専門家はこれについて、「これは能力者に対する優遇であると同時に、社会的選抜の一形態でもある」とコメントしています。

――続報は本局の特別報道でお伝えいたします。

テレビのニュース報道はまだ続いていた。カフェの中にいる客たちは、皆テレビ画面に釘付けになっていた。ただ一人、隅の席に座る帽子をかぶった男だけは別だった。

男は重大なニュースには目もくれず、ひたすら腕時計を見つめていた。約束の時間まで、もう数分しか残っていない。それなのに、待ち人はまだ現れる気配がなかった。彼は焦りを感じ、気を紛らわせようとコーヒーに手を伸ばしたが、カップの中身はすでに飲み干されていた。

彼は大きくため息をつき、ウェイターを呼んでコーヒーをおかわりしようとした。メニューを手に、どれを頼もうか迷っていたその時――

金髪碧眼の白人女性がカフェの扉を開け、まっすぐ彼の座っている席へと向かってきた。

男は直感した。待っていた相手がついに来たのだ。

彼は慌ててウェイターを適当にあしらい、これから始まる密談の準備を整えた。

しかし、女性は彼の席に座ることなく、すれ違いざまに一枚のメモを彼の前に置くと、そのまま別のテーブルに腰を下ろした。まるで彼とは無関係であるかのように。

男は少しほっとした。やり取りはネットを通じてだったので、最初は詐欺かもしれないと疑っていた。しかし、彼女の動き、そして外国人であるという事実が、その疑いを吹き飛ばした。

――彼女はプロだ。

男はそっとそのメモをポケットにしまい、静かにカフェを後にした。

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