26話金粉に宿る、永遠の戦い



あたりは、かすかな風の音さえも吸い込まれたような静寂に包まれていた。

光はなく、希望のかけらすらも見えないような、そんな闇の中――


それでも、僕はひとりじゃなかった。


足元に、やさしいぬくもり。

ふくらはぎにそっと触れる、小さな白い手。

その主は、しろちゃん。

そしてその隣には、静かに立つひとりの青年の姿があった。


「……君の痛みも、心の迷いも、ちゃんと届いてるよ」


月明かりの代わりのように、その人の周囲には金の粒がふわふわと舞っていた。

まるで星の光を集めたようなその粒は、僕の傷をそっと撫でてくれる。


「チト……ちゃん……?」


そう呟いた僕に、彼はやわらかく微笑んで、こう言った。


「ううん。今の僕は――“ユウヤ”だよ。

君の未来を守るために生まれた、光の戦士ユウヤ。」


その瞬間、胸の奥にあったなにかが、そっと溶けていくのを感じた。

誰にも言えなかった不安、痛み、心の叫び――

全部、彼は受け止めてくれていた。


ユウヤの背中から、淡く揺れる光がゆらめき、しろちゃんのしっぽがその粒を追いかけるように舞う。

僕は思わず手を伸ばし、その光をつかもうとした。


でも、ユウヤは首を横に振って、優しく言った。


「この光は、君の中にある。

君が誰かを信じたとき、君が誰かに寄り添いたいと願ったとき――

それが、僕たちの“力”になるんだ。」


僕は、ただ頷いた。

何も言えなかったけど、それで十分だった。


ふたりと一匹のあたたかさが、暗闇をやさしく溶かしていく――

そう、これは終わりじゃない。始まりの光なんだ。


そして僕たちは、また一歩、未来へ進み始めた。

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