22話女神の羽と聖なる爪



夜空は深く、静寂に包まれていた。

その中で、ひときわ輝く光が、闇を裂くように広がっていく。


「……チトちゃん、準備はいい?」

智が見上げた空に、虹の羽がゆっくりと広がる。


風に乗って舞い降りるその姿は、まるで空から降り立つ女神だった。

彼女の背には、七色の光を放つ蝶の羽。

羽ばたくたび、空気中にきらきらと金粉が舞い、世界を浄化していくように見えた。


その肩に、ひときわ凛とした眼差しのしろちゃんが乗っていた。

彼女の白い毛並みは月光を受けて輝き、まるで空の守り猫。


「チト、いけるか?」

千年が後方から叫ぶ。


チトちゃんは小さくうなずき、静かに口元を開いた。


──「いま、風に乗せて……正義を放つ」


彼女の口元から、銀色の細かな針が一斉に舞い散る。

敵の放った黒いエネルギーを、その針は音もなく突き抜けて貫き、

まるで花が咲くように、敵の動きを凍らせた。


その隙を逃さず――


「にゃあっ!!」


しろちゃんが叫んだ瞬間、

チトちゃんの羽ばたきが強くなる。


虹色の羽が大きく広がり、金粉の嵐が敵を包みこむと、

まるで時が止まったように、すべての攻撃が空中で凍りついた。


しろちゃんがその金粉の渦を滑るように走り、

鋭く伸びた聖なる爪で、敵のコアを一閃。


「これで……終わりにしよう」

チトちゃんの声が、夜に優しく響いた。


爆発音もなく、ただ一筋の光が闇を裂いて、

すべては静かに終わった。


智は、空に舞うチトちゃんとしろちゃんの姿を見上げながら、

ぽつりと、つぶやいた。


「……あれが、僕たちの守り神なんだ」

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