第7話 夜空に、君の願いを
海辺にいた午後から、少し時間が経ったころ。
ふたりで見上げた空は、やわらかい茜色に染まっていた。
「……夕焼けって、どうしてこんなに切ないんだろうね」
君がぽつりとつぶやいた。
私は、うなずく代わりに、君の手をそっと握る。
「きっと、今日が終わってしまうのが、寂しいから」
「でも……」
君が言葉を探しながら、続けた。
「また明日、君とこうして歩けたら、それでいいって思えるよ」
その言葉が、胸に深く染みた。
誰かと“また明日”を願えるって、どれほど幸せなことなんだろう。
夜が静かに降りてくる。
星が少しずつ、ひとつ、ふたつと輝き出す。
私たちは並んで歩きながら、足を止めた。
「あ、流れ星……!」
君が指をさす。
夜空をすっと横切る光が、確かにそこにあった。
「願い事、言った?」
「ううん、でも……」
君は私を見て、小さく笑った。
「もう叶ってる気がする。――こうして君と一緒にいられるから」
私は言葉もなく、そっと寄り添った。
夜の風がやさしく吹いて、ふたりの間をそっと結んだ。
願いごとなんて、何もいらない。
君のぬくもりと、君の声がここにあるなら、それだけでいい。
――夜空に流れた、ひとつの光。
それはたぶん、私たちの想いが空にのぼった
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