第5話「ふたりの足あと」
静かな浜辺に、ふたりの足あとが並んでいた。
寄せては返す波が、その輪郭をやさしくなぞっていく。
「ここ、夢で見たことある気がするんだ」
そう呟いた僕の声に、彼女──チトちゃんは、そっと笑った。
「それはね、きっと未来の記憶だよ」
風がチトちゃんの髪を揺らし、僕の胸の奥に、なにか温かいものが広がった。
「未来の……記憶……?」
「うん。私たちは、ずっと前からつながっていた。目には見えなくても、心は、ずっとここにあったの」
僕はその言葉に、なぜだか涙がにじみそうになるのをこらえながら、彼女の手を握った。
それは、たしかな感触だった。夢ではなく、現実のぬくもりだった。
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