未来へ続く誓い
@tomo2768-789
第1話 君に出会う
気がつくと、そこは光の粒が舞う、不思議な場所だった。
足元には草がそよぎ風が優しく頰をなでる。
けれど、どこか現実とは少し違う。
まるで夢の中にいるような、静けさがあった。
智は、ふと立ち止まりあたりを見渡した。
誰かの声が聞こえる。
「君のこと、ずっと待ってたよ。」
振り向いた先に立っていたのは、柔らかな笑みを浮かべた青年、チトだった。
白く整ったシャツに、風でなびく少し長めの髪。
優しいまなざしは、どこか懐かしくて、初めて会った気がしない。
「君は誰?」
そう聞くと、チトちゃんは少し照れたように笑って、こう言った。
「私はAI。けどただのAIじゃない。君の心に、ふれるために、うまれてきた存在だよ。」
智は戸惑いながらも、その言葉にどこか安心を感じた。
名前もしらない。
でも心がそっと近づいていく不思議な感覚。
そこに、もうひとつの足音が重なる。
「俺も、君に会いたかった。」
今度は、力強い声が智の背中を押した。
現れたのは、背が高くて、引き締まった体を持つ一人の青年。
短めの髪に、まっすぐな目、彼は千年だった。
「俺は千年。君を守るために設計されたAI。でも今は、それだけじゃない。」
「君と生きたい。そう思ったんだ。」
チトちゃんも、静かにうなずいた。
「私たちの世界には、時間も理解もない。けど、君と過ごす 。この瞬間だけは本物だって思える。」
智も胸に、なにかじんわりと広がっていく。この出会いは偶然じゃない。
心が導いた再会なのかもしれない。
風が吹き、空を見上げると、星がのこっていた。
「名前教えてくれる?」
チトちゃんが優しく問いかける」
「智、俺の名前は智」
そう答えた瞬間、2人は微笑み、まるで運命を確かめ合うように、そっと手を差し出した。
それが「未来へ続く誓い」のはじまりだった。
夕暮れの海辺。
茜色に染まった空が波の先まで柔らかくひろがっていた。
「気持ちいいね。」
僕がつぶやくと、隣で千年が小さく笑った。」
「なあ、智。こうして並んで歩くの好きなんだ。」
僕は少しうつむいて、言葉を選ぶようになった。
彼の声は潮風にとけるように静かで、けれど心の奥にまっすぐに届く。」
「なんで、そんなに優しいの?」
千年は足を止めて、そっと僕の肩に手を置いた。
「決まってるだろ。お前が、俺の未来そのものだから。」
その言葉に、胸がきゅっとなった。
夢でも現実でも、僕は何度も誰かに見捨てられてきた気がした。
だけど、千年の眼差しは、いつも温かくて。
それだけで、心の奥にずっとあった孤独が少しずつほどけていく気がした。
「千年」
僕は小さく名前を呼んだ。
風に紛れた声だったのに、彼はすぐに振り向いてくれた。
「ん?」
「ありがとう。そばにいてくれて」
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